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2025-01-09
2024年9月19日、OECD/G20の税源浸食と利益移転(BEPS)に関する包摂的枠組み(IF)は、第2の柱に関連する租税条約上の最低課税ルール(STTR: Subject to Tax Rule)の実施を促すための多国間協定(MLI)(本誌2023年9月号および12月号参照)の署名式を開催した。9カ国・地域が本MLIに署名し、さらに10カ国・地域が署名の意向を表明した(注)。署名式にはこれら以外の38カ国・地域(日本を含む、全57カ国・地域)も「参加」したが、具体的なコミットメントは行われなかった。本STTRは、一定のグループ内支払いに係る受領国の名目法人税率が9%未満である場合、源泉地国が当該グループ内支払いに対して追加の税負担を課すことを認めるものである。この規定は特に発展途上国の税基盤を保護するために設計されており、第2の柱の合意の重要な一部となっている。STTRは、発展途上国であるIFメンバーと、最低税率9%未満の名目法人税率を適用する他のIFメンバーとの間の二国間租税条約に組み込まれるように設計されている。特に、IFメンバーは、発展途上国からの要請があった場合、本STTRを租税条約に組み込むことにコミットしている。この政治的コミットメントは、選択的に本MLIによって実施され、関連する二国間租税条約にこの規定を組み込むことによって運用できるようにするということである。具体的には、本STTRは、本MLIの「当事者」によってリスト化された「対象租税条約(Covered Tax Agreements)」において実施される。本MLIに署名またはその意向を表明した国・地域は19と限られており、また本規定は非常に複雑である。これにより、本STTRが発展途上国の税基盤を保護するという目的を達成できるか不透明とみられる。なお、国連専門家委員会は最近、より広範な適用範囲となる独自のSTTRを承認している。さらに、発展途上国は現在、国連での国際租税協力に関する枠組み条約の交渉を行っている(本誌2024年8月号参照)。本MLIの署名国・地域が限られている理由として、競合する国際租税フォーラムがあるため署名を躊躇しているか、「国連STTR」を志向している可能性がある。本MLIは他のIFメンバーの署名に対しても開放されている。署名各国は、条約が発効する前に国内で批准手続きを行う必要がある。
(注)9カ国・地域(バルバドス、ベリーズ、ベナン、カーボベルデ、コンゴ、インドネシア、ルーマニア、サンマリノ、トルコ)が本STTR MLIに署名しており、対象となる各条約の相手国(日本は含まれていない)も寄託文書(2024年9月19日付け)で開示されている。例えば、インドネシアは29カ国・地域(ベルギー、香港、ルクセンブルグ、マレーシア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、スペイン、スイス、タイ、など)との租税条約を対象(また、公認年金基金の定義(ANNEX IV)をSTTR(ANNEX I)に追加する)見込みとしている。また、さらに10カ国・地域(ベルギー、ブルガリア、コスタリカ、モンゴル、ポルトガル、セネガル、セーシェル、タイ、ウクライナ、ウズベキスタン)が署名の意向を表明している。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年11月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修