
Worldwide Tax Summary 2025年2月号
本稿では、海外税制(オーストラリア、ベトナム、オーストリア、ハンガリー、EU、アフリカ、OECD)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年2月号 寄稿)
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2024-05-13
2024年2月19日、OECD/G20包摂的枠組み(IF)は、第1の柱・利益Bに関する報告書を公表した。これは、特定の基本的な卸売マーケティング・販売活動に係る移転価格について、簡素化・合理化されたアプローチとして、2つのオプションを各国・地域に導入するものである。本報告書は、OECDが、2022年12月および2023年7月に利益Bに関して行った公開協議(本誌2023年2月号および9月号参照)に続くものである。本報告書の内容は、OECD移転価格ガイドライン(TPG)(2022年版)の第4章(移転価格に関する紛争の回避および解決のための税務執行上のアプロ-チ)の附属書(Annex)として組み込まれることになる。IFは、利益Bに関する追加ガイダンスを策定中で、2024年3月31日までに作業終了見込みとしている(その時点でTPGに追加される予定である)。利益Bを採用する国・地域のリストは、OECDのウェブサイトで公開される。
各国・地域は、2025年1月1日以後に開始する事業年度について、当該国・地域内で対象となる基本的販売活動を行う販売業者の対象取引に関して、本簡素化・合理化アプローチの適用を選択できる。本報告書では、対象となる販売業者の特徴を規定しており、たとえば、特定の経済的に重要なリスクを負うことや、ユニークで価値のある無形資産を保有することはできない。さらに、コモディティーやデジタル商品の販売など、特定の活動を行う場合は、適用対象外となる可能性がある。本ガイダンスの範囲は依然として有形商品の販売に限定されており、サービス(デジタルサービスを含む)は含まれていない。本簡素化・合理化アプローチでは、対象となる販売業者の売上利益率の決定に係る3ステップのプロセスを示している。また、文書化、移行に係る論点および税の安定性に係る検討事項についてのガイダンスを示している。本報告書には、以下が含まれる。(注1)
(注1)本報告書の附属書として、ベンチマーク検索基準(Appendix A)、および8つの事例(Appendix B)がある。
(注2)インドは本コミットメントに同意していない。また、ニュージーランドは利益Bを採用しない(既存の簡素化措置や移転価格ルールで対応する)旨を公表しており、オーストラリアにも同様の動きがみられる。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年2月16日、ローレンス・ウォン副首相兼財務大臣は、国会で2024年予算声明を公表した。事業関連の主な措置として、以下が含まれる(ほかに、中小企業向けの支援措置などもある)。
第2の柱のトップアップ税 - 2023年予算で第2の柱・トップアップ税導入の意向を表明したことを受け、第2の柱の所得合算ルール(IIR)と国内トップアップ税(DTT)を、2025年1月1日以後に開始する会計年度から対象事業者に対して導入する旨を公表した(軽課税利得ルール(UTPR)は、各国・地域の導入状況を踏まえ、追って検討)。
還付可能投資税額控除 - 第2の柱トップアップ課税への対応として、新たな還付可能投資税額控除(RIC)制度を提案している。RICは、還付可能な現金給付型の税額控除で、当該税額控除の適用要件を満たしてから4年以内に、法人税額からの控除または現金での還付が利用できるものである。RICは、経済開発庁(EDB)および企業庁により、個別に承認される。RICの額は、適格期間中に適格活動にかかった支出の最大50%まで(申請された適格活動の内容により異なる)となる。RIC適格となる活動の例として、新たな生産能力への投資(製造工場の新設、低炭素エネルギー生産など)、デジタルサービス・専門サービス・サプライチェーンマネジメントに係る活動範囲の拡大/設置、本社活動/センター・オブ・エクセレンス(CoE)の拡大/設置、コモディティー商社活動の開始/拡大、研究開発(R&D)・イノベーション活動の実施、脱炭素化を目的とした解決策の実施、が含まれる。また、プロジェクトの種類にもよるが、適格支出として、資本的支出(建物、土木、構造工事、工場、機械、ソフトウェアなど)、人件費、研修費、専門家報酬、無形資産費用、シンガポールでの業務委託費、資材・消耗品、運賃・物流費、が含まれる可能性がある。なお、本制度と既存制度との重複適用はできない(たとえば、RICの適用を受ける部分について、資本控除を重ねて受けることはできない)とみられるため、留意が必要である。本制度の詳細は、2024年第3四半期までに、EDBと企業庁から公表見込みである。
海運企業に対する代替的な純トン数税制 - 2024賦課年度(YA)より、海運分野インセンティブ(MSI: Maritime Sector Incentive)制度に関して、適格海運企業の適格所得に対して、その船舶の純トン数を参照して課税する代替的な課税ベースが利用できるようになる。本代替課税の適用を受けないMSI 事業体には、現行税制が引き続き適用される。課税ベースの詳細などは現時点で不明だが、本税制は、従業員数や現地での事業支出などの経済的コミットメントに対する要件が比較的軽い、他国で多く適用されているトン数税制を参照すると見込まれる。関係当局は、2024年第3四半期までにその詳細を公表見込みである(なお、2024賦課年度の申告期限は、2024年11月30日)。
資産・財産管理に係る税制優遇措置の強化 - 2024年予算において、資産・財産管理(マネジメント)業界に影響を与える3つの重要な改正(sections 13D・13O・13U制度を2029年12月31日まで5年間延長、section 13O制度の強化、sections 13D・13O・13U制度の経済要件に係る改正)を提案しており、詳細は2024年第3四半期までに金融管理局(MAS)から公表見込みである。全体として、2024年予算では、sections 13D・13O・13U制度の延長に加え、シンガポールで登録されたリミテッド・パートナーシップ・ファンドもsection 13O制度の対象とする(現在は、シンガポール法人(非公開有限会社または可変資本会社)に限られる)など、関連業界に前向きな改正を提案している。
以下の税制優遇措置に関して、2024年2月17日より、追加的な法人軽減税率が導入される。
出典:PwC Singapore
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年1月29日、行政府は、税収増を目的とした新たな「納税義務の履行」に係る税制改革法案を議会に提出した。本法案では、脱税や租税回避に対処し、税務行政を近代化するための措置を講じるとしており、所得税法、付加価値税(VAT)法、租税法典(Tax Code)などの改正も提案している。本法案には、以下が含まれる(このほか、移転価格税制などの重要な改正もある)。
一般的租税回避防止規定(GAAR) - 本法案では、現在のGAARに含まれている「濫用」と「仮装(simulation)」の定義を修正し、「濫用」の主な特徴は、「不適切な」方法で税恩典を得ること、すなわち、取引の法的形式が、取引締結時に納税者が求めた経済的効果と一致していない場合であることを強調している。加えて、本法案では、ルール適用に係る現行制度を廃止し、租税回避防止委員会(Anti-Avoidance Committee)とGAAR諮問委員会(GAAR Advisory Panel)を設置する。本改正により、本規定の適用範囲が拡大する可能性がある。
税務当局の査定権限 - 一般原則として、税法では、税務当局が「通常の(normal)市場価値」と著しく異なる価値で行われた取引に異議を唱えることを認めている。本法案では、「通常の市場価値」を、業種、セクター、機能、資産、リスク等の関連する特性を考慮し、第三者が比較可能な(comparable)取引や状況において合意したであろう価値、と定義している。本法案によれば、納税者は、取引が公正な市場価値で行われたことを証明するために、a)割引キャッシュフロー法、b)マルチプル法(類似の特性を持つ一定の参考比率値に基づく推定価値)、c)修正簿価法、d)その他の評価方法、に従わなければならない。税務当局は、納税者の評価額に異議を唱える場合、これらの方法のいずれかを用いる必要があり、(適用可能な場合)外国当局からの情報を求めることもあろう。
事業再編成 - 事業再編成に適用される税制適格制度が改正され、国内組織再編成と国際組織再編成に区別される。国内組織再編成(合併、スピンオフ、チリ国内での現物出資等)は、正当な事業上の理由があれば、税制適格となる。この場合、移転資産の課税ベースは移転先事業体に引き継がれる必要があり、現物出資の場合、現物出資事業体は、現金を受領できない。国際的組織再編成は、それがチリ国内に影響を及ぼす(例えば、チリ国内に所在する資産、株式または出資持分(quota rights)に関連する)場合であって、以下の要件を満たす場合、税制適格となる。
間接譲渡規定 - 間接譲渡規定に関しては、「タックスヘイブン・テスト」を適用しており、チリ税務上タックスヘイブンとみなされる国・地域に所在または設立され、チリの資産を間接的に保有する事業体の持分の譲渡から生じるキャピタルゲインは、非居住者に係る源泉税率35%の課税対象となる(本テストは、間接譲渡されるチリの事業体の価値に関係なく適用される)。現行法では、(i)税務上の居住者が、譲渡される外国事業体の持分の5%以上を直接保有しておらず、また5%以上の利得に対する権利を有していない場合、および(ii)タックスヘイブンに居住する者が、譲渡される外国事業体の持分の50%以上を直接・間接に保有しておらず、また50%以上の利得に対する権利を有していない場合、タックスヘイブン・テストは適用されない。本法案では、上述のテストの(i)における5%要件を改正し、この保有要件が間接的なベースでもテストできることを明確にしている(現在の表現では、直接保有に限定されている)。
付加価値税(VAT)法関連の改正案として、国外に所在する一定の資産の譲渡に係るVAT課税、事業再編や一定の株式譲渡等に係るVATの租税回避防止規定、がある。
また、税恩赦(Tax Amnesty)として、本法案では、以下の2つの制度を提案している。
本法案に加え、政府は、主に所得税法のその他の改正に焦点を当てた追加の税制改革法案を議会に提出する見込みで、これには第2の柱の規定の採用も含まれる可能性がある。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年2月12日、財務省は、大規模多国籍企業に対し、国別(CbC)ベースで特定の税務情報を公開することを義務付ける政府提案を実現するための最新の法律案と、税へのアプローチに関する声明を公表した(2024年3月5日まで、本法案および説明資料についてコメント募集)。この最新の法律案は、国内外の利害関係者からのフィードバック(政府の前回法案(2023年4月6日)について、本誌2023年6月号参照)に対応したものであり、報告対象閾値や、細分化された報告へのアプローチ、開始時期の12か月先送り(2024年7月1日以後に開始する所得年度からの適用とする)など、欧州連合(EU)の公開CbC制度とより整合するよう本措置を見直すものとなっている。本法案では、12月決算グループの場合、2025年12月31日に終了する年度がオーストラリアでの最初の公開CbC報告の対象年度となり、2026年12月31日が報告期限となろう。このスケジュールは、EUの公開CbC報告指令(EU指令2021/2101)にほぼ沿っている。今回の修正法案による主な変更点は以下の通りである。
グループの「税へのアプローチ」、および当期未払法人税額が税引前当期純利益に当該国・地域の法人所得税率を適用した額と異なる理由の説明(オーストラリアおよび特定国・地域のみ)、が開示項目に含まれていることには留意が必要である。なお、財務情報は、監査済みの連結財務諸表から入手しなければならない。CbC報告親事業体は、公表情報における重要な誤りに気付いた場合、28日以内に、訂正情報を記載した文書を税務当局に提出しなければならない(その後、税務当局が速やかに訂正情報を公的ウェブサイトに掲載)。
本新規定への違反について、主に2つの罰則がある。まず、税法上の要件に従わない場合として、1回目は最高20単位(現在6,260豪ドル。政府は1単位330豪ドルへの引き上げを提案中)、2回目は40単位(12,520豪ドル)、3回目は最高50単位(15,650豪ドル)が課される(3回目は、責任者の起訴(最高12か月の禁固刑)もある)。次に、期限内に情報(上述の重要な誤りの訂正情報を含む)を開示しない場合の新罰則規定として、28日以内の遅延で500単位、最高2,500単位(28日以内の遅延で156,500豪ドル、112日以上の遅延で最大782,500豪ドル)の罰則がある。罰則の単位は、CPIに連動して3年ごとに見直される。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年2月20日、EU理事会は、非協力的な国・地域のリストを承認した。Annex I(ブラックリスト)には12か国・地域(米領サモア、アンギラ、アンティグア・バーブーダ、フィジー、グアム、パラオ、パナマ、ロシア、サモア、トリニダード・トバゴ、米領ヴァージン諸島、バヌアツ)が含まれている。Annex II(グレーリスト)には10か国・地域(アルメニア、コスタリカ、マレーシア、ベトナム、ベリーズ、キュラソー、セイシェル、英領ヴァージン諸島、エスワティニ、トルコ)が含まれている。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。
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