プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の公布等

ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2022年3月)

SDGsやESGに関する取り組みが世界的に広がっています。PwC弁護士法人は、企業および社会が抱えるESGに関する重要な課題を解決し、その持続的な成長・発展を支えるサステナビリティ経営の実現をサポートする法律事務所です。当法人は、さまざまなESG/サステナビリティに関する課題に対して、PwC Japanグループや世界100カ国に約3,700名の弁護士を擁するグローバルネットワークと密接に連携しながら、特に法的な観点から戦略的な助言を提供するとともに、その実行や事後対応をサポートします。

近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。

今回は、以下の3つのトピックを紹介します。

1.プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の公布及びプラスチック使用製品廃棄物分別収集の手引き

2.米・豪・デンマーク・ノルウェー「輸出管理・人権イニシアチブ」に関する共同声明

3.米国政府によるミャンマー関連ビジネスに関する勧告

 

1.プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の公布及びプラスチック使用製品廃棄物分別収集の手引き

1.プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の内容

2021年6月11日に公布された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年法律第60号)(以下「本法」といいます。)1の規定に基づき、2022年1月19日、本法に係る施行令等が公布されました。

施行令等の主な内容は、以下のとおりです。本法の対象となる物品等のライフサイクルの各段階に沿って、説明します。

図1 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の内容

なお、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の施行期日を定める政令」(政令第24号)により、本法の施行期日は2022年4月1日とされており、以下の施行令等も同日より施行されます。

(1) 設計・製造等関連

製造事業者等向け設計指針の策定

本法では、主務大臣が、プラスチック使用製品製造事業者等(以下「製造事業者等」といいます。)が講ずべき措置に関する指針を策定することとされています(本法7条1項)。

プラスチック使用製品設計指針は、製造事業者等が講ずべき措置に関する指針を定めています。

認定制度の導入

本法では、製造事業者等のプラスチック使用製品の設計が当該指針に適合していることを認定する制度が設けられます(本法8条1項及び4項)。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に基づく設計認定及び指定調査機関に関する命令は、プラスチック使用製品の設計について主務大臣の認定を受けるための必要な申請手続及び設計調査を行う指定調査機関への指定の申請に係る手続等の細則を定めています。

(2) 販売・提供関連

・提供事業者向けの基準の策定

主務大臣は、「特定プラスチック使用製品」を提供する事業者であって、特定プラスチック製品の使用の合理化を行うことが特に必要な業種として政令で定めるものに属する事業を行う「特定プラスチック使用製品提供事業者」が、プラスチック使用製品廃棄物の使用の合理化による排出抑制のために取り組むべき措置の判断基準(以下「使用合理化判断基準」といいます。)を定めるものとされています(本法28条1項)。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令(以下「本施行令」といいます。)は、上記の製品及び事業者(業種)を以下のとおり定めています(本施行令5条)。

図2 プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令

また、特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令が定める使用合理化判断基準は、以下のとおりです。

「特定プラスチック使用製品提供事業者」は、次に掲げる取組その他の特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取組を行うことにより、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するものとされています(2条)。

  • 商品の販売又は役務の提供に際しては、以下の措置等を講ずることにより、消費者によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を促進すること
    • 消費者にその提供する特定プラスチック使用製品を有償で提供すること
    • 消費者が商品を購入し又は役務の提供を受ける際にその提供する特定プラスチック使用製品を使用しないように誘引するための手段として景品等を提供すること
    • その提供する特定プラスチック使用製品の使用について消費者の意思を確認すること
    • その提供する特定プラスチック使用製品について繰返し使用を促すこと
  • 以下の措置等を講ずることにより、自らの特定プラスチック使用製品の過剰な使用を抑制すること
    • 薄肉化、軽量化その他の特定プラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類について工夫された特定プラスチック使用製品を提供すること
    • 適切な寸法の特定プラスチック使用製品を提供すること
    • 繰返し使用が可能な製品を提供すること

消費者によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を促進するための情報提供(3条)、特定プラスチック使用製品提供事業者における体制整備等(4条)、安全性等への配慮(5条)及び実施状況等の把握及び公表(6条)等についても定められています。

・指導・勧告等

主務大臣は、「特定プラスチック使用製品提供事業者」であって、その事業において提供する「特定プラスチック使用製品」の量が政令で定める要件に該当する「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」の排出抑制が著しく不十分である場合には、勧告、公表及び命令を出すことができます(本法30条1項、3項及び4項)。

この点について、本施行令は、「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」の要件として、当該年度の前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上であることを定めています(6条)。

(3) 排出・回収・リサイクル関連

1 市区町村の分別収集及び再商品化の促進

・プラスチック資源の一括回収

プラスチック資源の分別収集を促進するため、市区町村は、分別収集物の再商品化を、容器包装リサイクル法321条1項に規定する指定法人に委託することができるものとし(本法32条)、同法のルートを活用した再商品化が可能となります。
分別収集物の基準並びに分別収集物の再商品化並びに使用済プラスチック使用製品及びプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化に必要な行為の委託の基準に関する省令(以下「分別収集物基準省令」といいます。)では、分別収集物の基準、指定法人が分別収集物の再商品化を委託する場合の基準、認定自主回収・再資源化事業者がプラスチック使用製品の再資源化を委託する場合の基準及び認定再資源化事業者がプラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化を委託する場合の基準が定められています。

2 製造・販売事業者等による自主回収及び再資源化の促進

・自主回収・再資源化事業計画等

自主回収・再資源化事業を行おうとする製造・販売事業者等(全部又は一部を他人に委託する場合を含みます。)が自主回収・再資源化事業計画を作成し、主務大臣の認定を受けた場合、当該事業者は、廃棄物処理法に基づく許可を受けずに、上記の計画に従って行う再資源化に必要な一定の行為を行うことができます(本法39条1項及び41条1項)。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則では、再商品化計画、自主回収・再資源化事業計画及び再資源化事業計画の認定等に係る各種手続などの細則が定められています。

3 産業廃棄物排出事業者の排出抑制及び再資源化の促進

・排出事業者向けの基準の策定

排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準となるべき事項等を定める命令では、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出事業者が、排出の抑制及び再資源化等を促進するために取り組むべき措置について、判断の基準となるべき事項等(本法44条1項参照、以下「排出事業者判断基準」といいます。)が定められています。

・排出事業者判断基準の適用対象

排出事業者判断基準の適用対象については、「中小企業基本法(昭和38年法律第154号)2条5項に規定する小規模企業者その他の政令で定める者」が除かれています(本法44条1項)。

この点について、本施行令は、①常時使用する従業員の数が20人以下の個人及び法人その他の団体であって、商業及びサービス業以外の業種に属する事業を主たる事業として行うもの、及び②常時使用する従業員の数が5人以下の個人及び法人その他の団体であって、商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として行うものを挙げています(15条)。

・指導・勧告等

主務大臣は、排出事業者であって、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が政令で定める要件に該当する「多量排出事業者」の排出抑制等が著しく不十分である場合には、勧告、公表及び命令を出すことができます(本法46条1項、4項及び5項)。

この点について、本施行令は、「多量排出事業者」の要件として、当該年度の前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上であることを定めています(16条)。

2. 「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き」の公表

本法に基づき、市区町村が、プラスチック製容器包装のみならず、それ以外のプラスチック使用製品廃棄物の再商品化を指定法人に委託する場合、分別収集物基準省令における分別収集物の基準に従って、市区町村ごとの分別の基準を定めることとなります。当該基準を定める際の参考として、分別収集物の基準を補完・解説する手引きが作成されています。

2.米・豪・デンマーク・ノルウェー「輸出管理・人権イニシアチブ」に関する共同声明

米国、オーストラリア、デンマーク及びノルウェーの4カ国は、民主主義サミットにおいて、2021年12月10日、「輸出管理・人権イニシアチブ(Export Controls and Human Rights Initiative)」(以下「本イニシアチブ」といいます。)に関する共同声明3を発表しました。

本イニシアチブは、専制国家において高度な監視技術が政敵やジャーナリストの通信のハッキングや情報の検閲に利用されている現状を踏まえ、かかる技術の悪用を抑止することを目的とします。4カ国は、共同声明において、深刻な人権侵害を可能ならしめるために使用されるソフトウェアその他の技術の拡散を防止するための輸出管理策の利用に関する自主的な非拘束の行動規範文書を策定することを約束しています。本イニシアチブについては、カナダ・フランス・オランダ・英国も支援を表明しています。

また、本イニシアチブを受けて同日に米国政府が公表したファクトシート(以下「本ファクトシート」といいます。)4によると、本イニシアチブは以下の措置を講じるとしています。

  • 輸出許可において人権的な基準を適用するための自主的な行動規範文書を策定する
  • パートナーと協働するための政策調整を行う
  • 政策立案者、技術専門家、輸出管理・人権の実務家を結集し、重要な新興技術が民主主義社会のために用いられるよう確保する
  • パートナーとの協働を通じて、国内の法的枠組みを強化し、脅威とリスクに関する情報を共有し、ベストプラクティスを共有・構築・実践し、かつ他国の対応能力を向上させるための最善の方法を探る
  • 他国政府・産業界・学界との協議・相談を進める

加えて、本ファクトシートでは、米国バイデン政権が、同盟国やパートナーとともに行っている、主要な新興技術分野における民主的価値の強化に向けた以下の取り組みについて述べられています。

  • クアッド(Quad)(日本・米国・オーストラリア・インドの4カ国)による技術に関する原則の策定・発表5
  • 機密性の高いデュアルユース技術や、人権の脅威となる技術の悪用に対処するためのワーキンググループの設置を含む、EUとの間の輸出管理協力に関する共通の原則の策定
  • 重要な新興技術に関する日本・韓国との二国間パートナーシップの開始

さらに、本ファクトシートは、人権侵害のための技術の悪用について米国が既に行っている以下の取り組みを紹介しています。

  • 新疆ウイグル自治区等における人権侵害を可能ならしめる中国企業を米国商務省の企業リストに追加することによる米国の技術へのアクセスの禁止
  • ミャンマー軍に支配された企業・省庁の企業リストへの追加
  • 悪意のあるサイバー活動に使用される可能性のある特定の項目(ハッキングツール等)に関する暫定的な輸出管理規則の公表
  • 技術の不正使用を理由とする4社の企業リストへの追加(違法な監視に使用するスパイウェアを開発し外国政府に提供したイスラエルのNSOグループ及びCandiru、米国の安全保障・外交政策に反する情報システムへの不正アクセスのためのサイバーツールを不正に使用したロシアのPositive TechnologiesとシンガポールのComputer Security Initiative Consultancy PTE)

3.米国政府によるミャンマー関連ビジネスに関する勧告

米国政府は、2022年1月26日、ミャンマー関連ビジネスに関して注意喚起を行う勧告(以下「本勧告」といいます。)を公表しました6 。本勧告は、個人、事業者、金融機関、投資家等に、ミャンマー関連のビジネス、特に人権侵害への関与が認められる同国軍事政権が関連するビジネスにまつわるリスクを警告しており、特に次の4つの企業・分野が最も懸念されるものとして指摘されています。

  • 国有企業(State-owned enterprises)
  • 宝石・貴金属(Gems and precious metals)
  • 不動産・建設業(Real-estate and construction projects)
  • 兵器・軍事設備及び関連活動(Arms, military equipment, and related activity)

本勧告は、ミャンマー関連のビジネスについて、新たな規制や制裁を科すものではなく、レピュテーション、違法な金融及び既存の法規制違反のリスクを指摘するものです。既にミャンマー国軍の幹部、国軍系の企業などは、米国の経済制裁プログラム(以下「OFAC規制」といいます。)における制裁対象者(Specially Designated Nationals(SDN))や輸出管理規制(Export Administration Regulations(EAR))におけるエンティティー・リストの対象とされており、これらの人物・企業等とのビジネス・取引等を行った場合、OFAC規制その他の経済制裁規制、輸出管理規制に違反する可能性が高く、米国政府が改めてその可能性を広く警告したものと考えられます。加えて、ミャンマーのマネーローンダリングリスクの高さや同国製品に強制労働・児童労働の疑いがあることも本勧告において指摘されています。

ミャンマー関連のビジネスを行う際には、OFAC規制を含む経済制裁規制、輸出管理規制等の観点から問題がないか、慎重に検討することが必要となります。この点、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」といいます。)の適用を受ける金融機関をはじめとする特定事業者(犯収法2条2項)においては、アンチマネーローンダリング対応の一環としてOFAC規制その他の経済制裁規制への対応も行われていると考えられます7 。一方、特定事業者に該当しない事業会社において、ミャンマーを含む諸外国とのビジネスを行う際には、経済制裁規制遵守の必要性について改めて確認することが予期せぬ法規制違反を回避するためにも必要となります。

参考:OFAC規制の概要

OFAC規制は、米国財務省外国資産管理室(Office of Foreign Asset Control:OFAC)による経済制裁プログラムですが、複数の類型の制裁プログラムが制定・執行されています。

  • 国・地域ごとの包括的な制裁プログラム
  • テロ対策・麻薬不法取引対策等の目的別の制裁プログラム

大きく、米国との接点(U.S. Nexus)の有無に関わらず外国企業等にも適用のある制裁(二次的制裁)と米国との接点を前提に適用される制裁(一次的制裁)の二類型の制裁が予定されていますが、米国との接点は広く認められる傾向にあり、日本企業であっても域外適用を受ける可能性に留意する必要があります。

金融機関に対する高額な制裁事例が著名ですが、非米国法人かつ事業会社に対する制裁事例も増加しており、OFACは、海運、トラック運送及び航空業界についてハイリスク業界と指摘しています。

図3 一次的制裁と二次的制裁の概要

1 本法の概要については、ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2021年7月発行)をご参照下さい。

2 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)。

3 https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/12/10/joint-statement-on-the-export-controls-and-human-rights-initiative/

4 https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/12/10/fact-sheet-export-controls-and-human-rights-initiative-launched-at-the-summit-for-democracy/

5 https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/09/24/quad-principles-on-technology-design-development-governance-and-use/#:~:text=The%20Quad%20countries%20(Australia%2C%20India,respect%20for%20universal%20human%20rights

6 https://www.state.gov/risks-and-considerations-for-businesses-and-individuals-with-exposure-to-entities-responsible-for-undermining-democratic-processes-facilitating-corruption-and-committing-human-rights-abuses-in-burma/

7 金融庁「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/2021_amlcft_guidelines.pdf )II-2リスクの特定・評価・低減 (3)リスクの低減 (iii)取引モニタリング・フィルタリング【対応が求められる事項】②にて、「国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること」が求められています。

主要メンバー

北村 導人

北村 導人

パートナー, PwC弁護士法人

山田 裕貴

山田 裕貴

パートナー, PwC弁護士法人

日比 慎

日比 慎

ディレクター, PwC弁護士法人

小林 裕輔

小林 裕輔

ディレクター, PwC弁護士法人

蓮輪 真紀子

蓮輪 真紀子

PwC弁護士法人