近年、さまざまな分野においてデジタル化が加速しており、ビットコイン等で用いられているブロックチェーン技術の活用も広がっています。
ブロックチェーン技術を活用したデジタルアセットの中には、ビットコイン等のいわゆる仮想通貨(法令上の用語は「暗号資産」※1)の他、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)と呼ばれるものがあります。NFTはデジタルデータではあるものの、複製や改ざんが事実上不可能であり、かつ、他のデジタルデータと区別される固有の特徴を有するものです。従来のデジタルデータは技術的には複製が容易であったため唯一性(オリジナルであること)の確保が非常に困難でしたが、NFT自体は唯一性の確保が可能です。この点に、芸術作品の原作が「1点もの」であることのような資産的価値が見出されており、デジタルアート、画像、音楽データ、動画といったデジタルコンテンツの他、ゲームやメタバースにおけるアイテム等に関連するNFTが実用化・模索されています※2。
NFTのような新しい技術に関しては、法的な検討・整理が必要不可欠です。法的論点は多岐にわたりますが、本稿では、法的な検討を行う前提を整理した上で(1)、NFTに関連する法規制(2)と私法的な法律関係(3)の概要について説明します。
NFTとは、①ブロックチェーン上に記録される、②固有の値・属性を持たせることによって代替性をなくしたデジタルデータで、図表1に記載しているような特徴があります。
NFT(Non-Fungible Token)はその名前のとおり、「トークン」です。トークンについては、法令上の定義はなく、また、一般的にはさまざまな意味で用いられており、それが指し示すものと交換可能な権利証(商品引換券等)や、暗号資産や電子マネー等のデジタルなものを指し示す用語として用いられる場合もあります。
本稿においては、NFT自体(トークン)は、あくまでブロックチェーン上の記録に過ぎないものとして議論します。なぜならば、①(ブロックチェーンに記録されるデータ容量を削減するため)通常、NFTに紐づけようとするデジタルコンテンツ自体はブロックチェーン上に記録されず※3、また、②(ブロックチェーン上の記録の移転とデジタルコンテンツに係る権利の移転を当然に結びつける法的根拠がないため)NFTを移転したとしても、別段の合意がない限り、その背後にあるデジタルコンテンツに係る権利(利用権等)が必然的に移転するわけではないからです。そのため、①NFTの複製は事実上困難であるとしても、その背後にあるデジタルコンテンツ自体は複製が可能であり、また、②NFTを保有していたとしても、何らの権利も有していない場合もあり得ることから※4、NFT自体(トークン)とその背後にあるデジタルコンテンツ・権利との区別をすることが法的検討を行う上では重要と考えられます。
NFTに関連する法規制にはさまざまなものがあります。ここでは、その概要について説明します(後記図表2も参照)。
法規制の対象となると、NFTの発行等に関して金融商品取引法上の登録等が必要となり、事業遂行の支障となり得ます。
1(2)記載のとおり、NFTはブロックチェーン上の記録に過ぎず、NFTであること自体で法規制の適用の有無は決まらないため、その背後にある権利の内容や取引様態等を具体的に検討する必要があります。
集団投資スキーム持分とは、いわゆるファンド持分のことで、以下の要素を満たす権利のことです※5。
<集団投資スキーム持分とは> ①権利を有する者(以下「出資者」)が金銭等を出資または拠出すること ②出資または拠出された金銭等を充てて事業(以下「出資対象事業」)が行われること ③出資者が出資対象事業から生ずる収益の配当または当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であること |
メタバース上の仮想不動産に係るNFT保有者に当該仮想不動産上の事業活動から得られる収益が分配される場合、集団投資スキーム持分に該当する可能性がありますが、このように出資対象事業から生じる収益がNFT保有者に対して分配されるものでなければ、上記③の要件を欠き、(NFTの背後にある権利は)集団投資スキーム持分に該当しません。
なお、集団投資スキーム持分は、原則としては「第二項有価証券」ですが、「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る)に表示されている場合※6」(かつ一定の適用除外に該当しない場合)には、「第一項有価証券」としての規制対象となります※7。
暗号資産とは、概要、以下の要件を満たすもののことです※8。
<暗号資産とは> 1号暗号資産:(i)物品・役務提供の対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者との間で購入・売却を行うことができ、(ii)電子的方法により記録された財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもので、(iii)本邦通貨および外国通貨並びに通貨建資産に該当しないもの 2号暗号資産:不特定の者を相手方として1号暗号資産と相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの |
1号暗号資産に関しては、NFTはいわば「1点もの」であり、基本的に不特定の者に対する対価として利用できないため、これに該当しないと考えられます。一方、NFTは1号暗号資産(ビットコインやイーサリアム等)によって取引される場合もあることから2号暗号資産の該当性が問題となり得ますが、金融庁の公表資料※9に基づけば、(実態に即して個別具体的に判断されるべきではあるものの)1号暗号資産と相互に交換できる場合であっても1号暗号資産と同等の決済手段等の経済的機能を有していないものは、暗号資産には該当しないこととなります。この考え方に従えば、(1号暗号資産と同様の理由で)2号暗号資産にも該当しないと考えられます※10。
なお、暗号資産の売買、暗号資産同士の交換、これらの媒介等および他人のために暗号資産を管理すること(いわゆるカストディ業務)を業として行う場合、暗号資産交換業に該当し、暗号資産交換業者としての登録が必要です※11。
為替取引については、その内容に関する定義等は法令上設けられていませんが、最高裁決定上、次の内容を指すものと解されています※12。
<為替取引とは> 顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行すること |
NFT保有者に対して資金の払戻しを可能とすること等により隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みが構築される場合でなければ、NFTを用いた取引は為替取引に該当しません。
なお、為替取引を業として営む場合は、その額に応じて、銀行業の免許または資金移動業者の登録・認可が必要です※13。
前払式支払手段とは、概要、以下の要件を満たすもののことです※14。
<前払式支払手段とは> ①金額または数量等が記載または記録され、 ②金額または数量等に対応する対価を得て発行される証票等または番号、記号、その他の符号であって、 ③発行者または発行者の指定する者(加盟店)に対する対価の弁済等に使用できるもの |
NFTが発行者または加盟店等の特定の者に対する支払手段としての経済的機能を有していなければ、前払式支払手段に該当しません※16。
なお、前払式支払手段の発行には、一定の場合、届出(自家型前払式支払手段)または登録(第三型前払式支払手段)が必要です※17。
海外においては、スポーツ選手のプレー動画等に関するNFTがランダムに封入されたパッケージを販売し(いわゆる「ガチャ」方式で販売し)、かつ、発行者自身が当該NFTの二次流通市場を開設することにより、一次流通市場における販売利益に加えて二次流通市場における手数料を収受するというビジネスモデルが存在しています。
一方、日本においては、NFTの「ガチャ」方式での販売について賭博罪への該当可能性が指摘されており※18、このような議論が日本におけるビジネスを委縮させているとの見方もされています。
「賭博」の意義は、以下のとおり解されています※19。
賭博の意義 ① 偶然の勝敗により、 ② 財産上の利益の、 ③ 得喪を争うこと |
「ガチャ」方式での販売については、特に一次流通市場における販売価格が二次流通市場における流通価格よりも低くなることがある場合、「③得喪を争うこと」の条件を満たすか否かが主な論点となります※20。
この点については、さまざまな考え方があり、結論を出すことが必ずしも容易ではない状況となっています※21。
仕組み次第では、賭博に該当しないと整理できる可能性もあるとは思われますが、この点は、刑法の解釈に関わる問題であり、「ガチャ」方式での販売を実施する際には専門家による慎重な検討が必要不可欠です。また、ビジネス全体の発展を考えるのであれば、関係省庁に対する事前照会制度の拡充や賭博に該当しないビジネスモデルを示したガイドラインの公表等が望まれます※22。
NFTを景品表示法上の「景品類」※23として提供する場合、提供様態に応じて提供できる「景品類」の最高額や総額に規制がかかりますが※24、NFTに特有の問題ではありません。
NFTには、その背後に権利が存在する場合がありますが、1(2)記載のとおり、NFTの移転によって係る権利が必然的に移転するわけではありません。そのため、(1)NFTの背後にある権利がどのようなものであるか、(2)マーケットプレイス等でNFTが取引される場合、NFTの移転に合わせてかかる権利を適切に移転するために、(特に二次流通に関して)どのような法律構成を採用するのがよいかを検討する必要があります。
NFTに紐づけられているデジタルコンテンツ等には、著作権(デジタルアート、音楽、ゲームのアイテム等)や肖像権・パブリシティ権(画像、動画等)等、さまざまな権利が考えられます。NFT保有者にデジタルコンテンツ等の利用を認める場合、著作権者(デジタルアートの原作者等)から著作権を譲渡する場合もあり得るものの、著作権の譲渡まで行う例は多くはないと考えられるため、本稿では、NFT保有者に与えられる権利は、ライセンス契約・利用許諾契約に基づく利用権であると整理して検討します。
このように整理した場合、NFTの二次流通に関しては、契約に基づき生じる債権(または契約上の地位)の移転等が問題となります。これは、NFTに紐づけられているデジタルコンテンツ等に関係する権利が肖像権やパブリシティ権である場合も同様と考えられます。
NFTの移転に合わせてその背後にある権利(債権・契約上の地位)を移転するためには、例えば以下の2つの構成が考えられます。
まず、NFTの譲渡人が有する債権(または契約上の地位)を、NFTの移転に合わせて譲受人に譲渡する構成(両当事者で債権譲渡契約等を締結する構成)が考えられます。この構成の主な留意点は以下のとおりです。
次に、著作権者等の原権利者(または原権利者から、第三者に対するライセンスを付与する権限を受けたプラットフォームの運営者等)が、NFTが移転するたびにNFT取得者に順次利用権を付与し、NFTを手放した者に対する利用権を停止する構成(NFTの譲渡人とのライセンス契約を終了させ、NFTの譲受人との間で新規にライセンス契約を締結する構成)が考えられます。この構成の主な留意点は以下のとおりです。
物理的な実体を有する芸術作品の場合、二次流通市場においてその価格が高騰したとしても、通常、原作者は高騰分の利益還元を受けることはできません。一方、NFTであれば、デジタルデータであり、追跡可能性があることから、二次流通市場における利益を芸術作品の原作者等の原権利者に還元する仕組みを設計することも可能です。
もっとも、現状のブロックチェーンの規格ではこのような利益還元の仕組みが組み込まれているわけではないため、二次流通市場のプラットフォーム上等で設計する必要があります。また、プラットフォームをまたいで移転される場合にも利益還元を実現するのであれば、プラットフォーム間の連携や利益還元の仕組みが含まれるブロックチェーンの規格の登場を待つ必要があります。
技術的には、あるデジタルコンテンツ等に関して複数のNFTを組成することが可能です。しかし、複数のNFT化がされる場合、NFT保有者からすると、「世界で唯一のNFT」だと思って取得したものが、そうではなくなってしまうこととなります※28。
この問題に対処するためには、NFTを組成するプラットフォーム上の利用規約で複数のNFT化を禁止し、損害賠償規定を設けておくことが考えられます。もっとも、NFTが組成されたプラットフォーム外でNFTを取得した者に対しては、当該利用規約が当然には及ばないため、複数のNFT化の懸念を払拭し、取引を促進するためには、プラットフォーム間の連携等が望まれます。
技術的には、他人のデジタルコンテンツ等に関してNFTを組成することも可能です。このようなNFTに関しては、NFT保有者はその背後にあると思っていた権利(利用権等)を正当に取得できないこととなります。この問題については、プラットフォームの運営者によるチェックに期待する他、前記②同様、利用規約による対応が考えられ、この点でもプラットフォーム間の連携等が望まれます。
NFTは、デジタルデータに唯一性を持たせることができる点で新しい価値を創出するものであり、そのユースケースは今後も広がっていくと考えられます。他の分野と同様、ビジネスの発展には当然ながら法的な検討・整理が必要ですが、特にNFTをはじめとするブロックチェーン技術を活用したデジタルアセットについては、プラットフォームをまたいだ移転・利用が可能であり、それゆえに価値が高まる側面もあることから、業界参加者が協力する形でエコシステムを構築することも、非常に重要であろうと考えられます。
※1 資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」といいます)2条5項。
※2 なお、(本文記載のようなデジタルデータではなく)物理的な実体を有するモノに関連するNFTも実用化されているが、紙面の都合上、このようなNFTは本稿の対象外とする。
※3 この場合、デジタルコンテンツ(デジタルアート等)自体は、IPSF等のブロックチェーン外部のファイルシステム等に記録され、ブロックチェーン上には、このように外部に記録されたデジタルコンテンツと紐づけるための情報(トークンURI)が記録される。
※4 NFT保有者であることがブロックチェーン上に記録されていること自体に権利性を認める余地は、別途あり得る。
※5 金融商品取引法2条2項5号、松尾直彦『金融商品取引法〔第6版〕』(商事法務、2021年)71ページ以下。
※6 この点に関して、金融商品取引法等ガイドラインの2–2–2には、以下の記載がある。「契約上又は実態上、発行者等が管理する権利者や権利数を電子的に記録した帳簿(当該帳簿と連動した帳簿を含む。以下…「電子帳簿」という。)の書換え(財産的価値の移転)と権利の移転が一連として行われる場合には、基本的に、電子記録移転権利に該当することに留意する。例えば、あるアドレスから他のアドレスに移転されたトークン数量が記録されているブロックチェーンを利用する場合には、この記録されたトークン数量が財産的価値に該当する。ただし、電子帳簿の書換え(財産的価値の移転)と権利の移転が一連として行われる場合であっても、その電子帳簿が発行者等の内部で事務的に作成されているものにすぎず、取引の当事者又は媒介者が当該電子帳簿を参照することができないなど売主の権利保有状況を知り得る状態にない場合には、基本的に、電子記録移転権利に該当しないことに留意する。」〔注:下線太字は筆者〕
※7 金融商品取引法2条3項。
※8 資金決済法2条5項。
※9 事務ガイドライン(16暗号資産交換業者関係)I–1–1③、事務ガイドライン改正に係るパブリックコメント回答(2019年9月3日)。
※10 なお、どのような場合に「1号暗号資産と同等の決済手段等の経済的機能を有する」のかは必ずしも明確ではないが、類似するNFTが多数存在する場合であっても直ちに2号暗号資産に該当するわけではないと整理できるとも考えられる。例えば、典型的な1号暗号資産であるビットコインは、1単位当たりの価格がいくらであったとしても、任意に細分化して取引することができるため決済手段として用いることができる(例えば、1BTCが500万円であったとしても1/500BTCの送付により1万円の商品を購入することができる)。一方、NFTについて、システム上このような細分化した取引ができないのであれば、(1単位当たり1円の類似のNFTが1兆個ある等の事例を除き)任意の価額の商品を購入することには少なからぬ支障が生じる(例えば、1単位当たり5万円の類似のNFTがどれほど存在しようとも、細分化して取引できないのであれば、かかるNFT自体を用いて1万円の商品を購入することはできない)。
※11 資金決済法2条7項、63条の2。
※12 最決平成13年3月12日(刑集55巻2号97頁)。
※13 銀行法2条2項2号、4条1項、資金決済法2条2項、37条、40条の2第1項。
※14資金決済法3条1項。
※15 資金決済法20条。
※16 ただし、NFTをその発行者等の提供するグッズ等と交換することができる場合、当該NFTは、前払式支払手段に該当し得る。もっとも、これはグッズ等と引き換えにNFTを失う場合のことであり、このような事例はあまり想定されないと考えられる。
※17 資金決済法4条、5条、7条。
※18 例えば、NFTではない一般のガチャについて、平成28年9月20日付け消費者委員会「スマホゲームに関する消費者問題についての意見」(https://www.cao.go.jp/consumer/content/20171020_20160920_iken.pdf)11ページでは、「電子くじ〔注:いわゆるガチャのこと〕で得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が取得したアイテムの換金を目的としてゲームを利用する場合は、アイテムは『財産上の利益』に該当する可能性があり、ひいては賭博罪が成立する可能性が高くなると考えられる」としている。
※19 刑法185条。ただし、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は賭博罪の成立が否定され(同条ただし書き)、価格の僅少性があるもの(タバコ等)や費消の即時性があるもの(食事等)は、「一時の娯楽に供する物」に該当し得る。NFT取引については、取引価格等にはよるものの、基本的にこれに該当しないと考えられる。
※20 賭博の意義のうち、「①偶然の勝敗」については、購入者が購入するパッケージおよびそれに封入されたNFTの内容が偶然の要素により決定されるため該当し、「②財物または財産上の利益」については、NFTが対価を支払って取得する対象であることから該当すると考えられる。
※21 例えば、①購入者が(一次流通市場の)販売価格に応じたNFTを獲得していると評価できる事情があれば、「得喪を争うこと」は否定され得るとの考え方、②販売価格と二次流通市場において形成される価格とは直接に結びつかず、発行者と購入者との関係は販売者である発行者の提示する価格による通常の売買と同様であるため「得喪を争うこと」は否定される(また購入者同士の関係では「得喪を争うこと」は問題とならない)との考え方、③NFTの価値は販売価格と離れて客観的に算定することが困難であるため、NFTの経済的な価額が明確に算定可能である例外的場合や発行者が販売価格よりも低い価格での買取りに応じている場合を除き、損失を被っている当事者が存在しないため「得喪を争うこと」は否定されるとの考え方、④NFTの換金に発行者が関与している場合、「得喪を争うこと」は肯定されるとの考え方、⑤販売価格より低い価値のNFTしか取得できない可能性がある場合には「得喪を争うこと」が肯定される一方、NFTの利用によりゲームに参加できるため各NFTに価値の差がないといえる場合等、購入者に利益の喪失が生じない仕組みを確保している場合には「得喪を争うこと」が否定されるとの考え方、⑥(仕組みによっては)販売価格よりも高い価値のNFTを取得した購入者はその差額を得る一方で、低い価値のNFTを取得した購入者はその差額を失うため、「得喪を争うこと」が肯定されるとの考え方等がある。これらの考え方では、(i)NFTの価値をどう考えるか(販売価格とは別に算定可能か否か)という点や、(ii)「得喪を争うこと」を発行者と購入者との関係で考えるのか、購入者同士の関係で考えるのかという点等に相違がある。
※22 ただし、賭博に該当しないビジネスモデルを構築したとしても、射幸性を有する場合には、別途消費者保護の観点には留意する必要があり得る。
※23 「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引…に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」(景品表示法2条3項)。
※24 景品表示法4条、懸賞制限告示、総付制限告示。
※25 2021年に改正された産業競争力強化法上の債権譲渡の第三者対抗要件の特例(認定新事業活動実施者が提供する電子システム上の債権譲渡通知等により第三者対抗要件具備を認めるもの)を利用することも考えられるが、現在、認定新事業活動実施者は認定されていない(https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/saikenjoto.html〔2022年4月25日閲覧〕)。
※26 契約上の地位の移転については、NFTの移転を契約上の地位の移転の効力発生要件である他方の契約当事者の承諾(民法539条の2)の条件とすることが考えられる。
※27 このような条件が付いていれば、事実上、NFTを取得することなく当該債権等を譲り受ける者は事実上現れないと考えられる。もっとも、NFTの譲渡人の破産やNFTの譲渡人の債権者による当該債権の差押えがされた場合には、第三者対抗要件の具備がないと、NFTの譲受人は破産管財人や差押債権者に対し権利主張ができないという事態が生じる。
※28 ただし、NFTには非代替性があり、複数のNFT化がなされたとしても「世界で唯一のNFT」だったものが「世界で最初のNFT」になるのみであるため(その意味では唯一性があるため)、その価値が減少しない場合も有り得ると思われる。
PwC弁護士法人
弁護士 柴田 英典