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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの市場投入によって感染再拡大のピークアウトが期待される中、民主党ジョー・バイデン氏が第46代米国大統領として就任しました。バイデン大統領はすでに、COVID-19による経済打撃に対して政府による景気刺激策で立ち向かうために、また気候変動や移民問題、社会の平等に関する民主党の目標を推進するために、幅広い重点施策を打ち出しています。問題は、第117議会においてバイデン大統領がどれだけの支援を得られるのか、という点です。現在下院は、民主党が多数派とはいえその差はわずかです。また上院の議席数は、ジョージア州上院決選投票で民主党が2議席とも確保した結果、カマラ・ハリス副大統領の決定票を含めてようやく51-50の過半数を確保できるという状況です。
現在、上院で議事妨害を阻止するためには60議席が必要であることを考えると、バイデン大統領がさまざまな法案を通じて達成できる改革には制限があるでしょう。オバマ政権時、バイデン大統領は副大統領として2009年金融危機後の景気回復プランの議会交渉を主導しました。その際に同大統領が取った行動に、これからを予測する上でのヒントがいくつか隠されています。長年の経験を誇るバイデン大統領は、自身の法案をできるだけ多く議会に通すために、特定の領域において、重点項目が重なる可能性が高い主要な共和党・民主党議員の超党派支持を模索する可能性があります。同大統領の増税案に向けた行動については、共和党の支持は期待できないと考えられます。
2020年12月に可決された2.4兆ドル規模の政府資金調達案は、対象となる個人への2回目の現金給付や追加の免税措置を含むCOVID-19経済救済策を中心とするものでした。バイデン大統領を含む多くの議員はこれまで、追加COVID-19救済対策が必要であると主張してきました。新政権は2021年初頭に、ワクチン普及費や中小企業支援費の増額など、超党派の合意を得られる可能性がある提案も盛り込む形でCOVID-19法案を推進すると予想されます。また、バイデン政権は、主要インフラのサイバーセキュリティ強化、クリーンエネルギーへの移行、欧州・アジア同盟国との貿易および安全保障の強化など、両党員にアピールする超党派の合意獲得に早期から注力するでしょう。
次回議会および新大統領は、未曾有の債務を抱えながら力強い景気回復を達成しようという、米国史上極めて困難な財政環境と向き合うことになります。2020会計年度(2020年9月末まで)の米国予算の赤字は、3.1兆ドルまで膨れ上がりました。こうした逆風の中誕生した新政権は、2021年度アジェンダを可能な限り達成すべく努力することになります。しかし、その成否は、COVID-19感染拡大を抑制するワクチン接種の展開に大きく左右されるでしょう。新たな立法年の開始にあたり、注目が集まる事項として以下が挙げられます:
政治的分断の状況にはあるものの、立法・規制上の変化に関する見通しと要因、こうした大きな変動がビジネスにもたらす影響について、PwCの見解を以下にまとめました。
バイデン大統領の税制案に向けた取り組みは、ジョージア州上院決選投票の結果を受けて、実現の可能性が大幅に高まります。上院決選投票で民主党が両議席を獲得したことにより、2021年、民主党は「予算調整措置」を用いて、民主党員の賛成のみでバイデン税制案の一部を進めることができます。一方、増税案の対象範囲についてはいずれも、民主党の下院議員ほぼ全員一致の支持および同党上院議員全50名の支持を得る必要性がある、という制約により、限られたものになるでしょう。バイデン大統領は、主な税制改革案として、法人税率を28%に引き上げると共に、年収40万ドル以上の個人に対して、2017年税制改革法により適用された所得税・不動産税減税を廃止する、としています。
企業は、2020年末に可決された政府財政支援法案の一環として実施されるCOVID-19救済措置および優遇税制延長条項によって、自社がどのようなメリットを得られるか再確認する必要があります。また、同法が実施され、事業運営および従業員の今後に関わる追加救済措置が検討される2021年、企業のステークホルダーは引き続き、政策立案者との交渉を図っていく必要があるでしょう。
米国の国内税制案およびその他法案目標に関して、引き続きシナリオプランニングとモデル化を行うべきでしょう。バイデン大統領は、雇用拡大を促進し、経済格差に対する懸念を解消していくために、さまざまな法人事業税・個人所得税の引き上げを掲げています。これには、インフラ投資の増加や、クリーンエネルギーおよび国内生産に対する税制上の優遇措置が含まれます。
税制については州レベルの動向を監視することも重要です。多くの州が「均衡予算要求」(BBR)を定めており、感染拡大による歳入減を補うべく増税する可能性があります。企業はまた、バイデン大統領による規制措置や大統領令、支出法案を通じた税制改革に乗り出す可能性に備える必要があるでしょう。
変化する国際情勢に備える:グローバル企業は、デジタル課税への対応について現実的な合意形成に向け努力する中で、バイデン大統領および同大統領が任命する財務長官のリーダーシップを期待することでしょう。デジタルサービス税(DST)を導入または提案したフランスその他の国々に対して、トランプ前大統領は関税措置で対抗しましたが、バイデン大統領が同様の強硬姿勢を取るかどうかは不明です。企業は、バイデン新政権および議会の政策立案者と、DST案が企業と米国の財政にどのような影響をもたらすか協議する際には、影響の範囲をモデル化し、企業へのリスクを最小限に抑えるためのタックスプランニングに取り組む必要があります。
詳細については、PwC米国の2021年1月6日付リリース「Tax Insights:ジョージア州上院決選投票結果により、バイデン氏の税制案の見通し高まる」をご参照ください。
2020年12月21日、連邦議会は、総額2.4兆ドル規模の2021会計年度政府資金調達法案を可決しました。12月27日にトランプ前大統領が署名した同法案には、中小企業救済プログラムであるPaycheck Protection Program(PPP)追加融資、対象となる個人への2回目の現金給付、失業支援、追加税控除策を含む、約9,000億ドル規模のCOVID-19救済予算が含まれます。また、同法案には、大規模な優遇税制延長(tax extender)策が含まれています。これにより、12月31日に失効予定の一部項目を除き、優遇税制が少なくとも12カ月間延長されると共に、一部の条項は無期限または5年間延長されます。
バイデン大統領および議会リーダーらは、COVID-19追加救済法案の2021年施行を要求してきました。民主党議員からは、個人向け追加現金給付および州・地方政府支援について賛同を得られると見込まれます。一方、共和党議員からは、感染防止に関して事業主の免責を求める声が上がる可能性があります。そこで、一部のアナリストは追加景気刺激策について、例えば両党の目標に適うようCOVID-19救済策とインフラ整備案の両方を組み込むなど、経済活動の活発化を図った超党派取引(bipartisan deal)という形になるのではないかと見ています。
海外への雇用流出に歯止めをかけて国内回帰を実現させることに、党派を超えて関心が高まっています。バイデン大統領はグローバリストであり、多国間の活動を活発化していく意向を示しています。しかし、国内経済の回復に重点を置くことはすなわち、貿易政策が急速に変化する可能性は低い、ということを意味します。米国は、特に貿易・政治面で緊張状態にある国からサプライチェーンを取り戻すために、関税や輸出入制限、および米国市場へのアクセスに関する交渉を今後も続けていくでしょう。ビジネスリーダーたちは、特に中国との経済競争激化に関連して、米国の貿易優先課題に影響を及ぼす根本的な変化を感じてきました。9月にPwCが実施した調査では、ビジネスリーダーの多くが、選挙結果に関わらず今後も米中間の貿易制限は強化される、という意見に同意しています。
短期的には、サプライチェーン関連で見過ごされがちなのが、世界貿易機関(WTO)の役割に関する課題です。現在WTOは、新事務局長の選出プロセスが完了しておらず、上訴機関であるWTO上級委員会は依然として機能停止状態にあります。上級委員会の問題が解決されるまで、WTOプロセスによる貿易紛争解決という道はほぼ閉ざされており、国際的な貿易紛争に対して関税や報復措置による解決策が採られる可能性が高まります。いずれにせよ、中国との貿易問題については、引き続き両国間での交渉が続いていくことになるでしょう。
国内生産や米国の競争力を強化するためのインセンティブを検証する:バイデン大統領の景気回復プランには、他国市場で低コスト・効率性を追求するのではなく、国内の「メインストリート」(実体経済を担う中小規模の)企業や国内サプライヤーへの投資を奨励することを企図した税制優遇措置・罰則が盛り込まれています。また、米国の競争力の再構築に向けて、研究開発投資を中心とした貿易政策を採る可能性が高いでしょう。同時に、バイデン政権は中国との関係に対して、よりきめ細やかなアプローチを採っていくものと思われます。中国への態度が甘いと見られた場合、バイデン政権に政治的リスクが生じる可能性があるためです。中国への関税措置を取り下げるのではなく、米国通商代表部による免税プロセス拡大という方法に出るかもしれません。
グローバル展開のリスクを軽減しながら、多様化する方法を模索する:米国で事業を行う企業のオペレーション部門のリーダーにとって、生産地を一カ所に集約するモデルは魅力的でなくなりつつあります。企業は、顧客重視の姿勢や貿易政策への賢明な対応と、グローバル規模の拠点集約で期待されるスケールメリットとのバランスを図っていくことになるかもしれません。例えば、PwCの分析では、中国からある一定の条件を満たす他国に生産を移管した企業は、事業費の削減とカスタマーエクスペリエンスの向上を実現できる可能性があることが分かっています。しかし、中国国内および地域市場におけるビジネス機会があまりに大きいことから、関税に関する課題だけで全ての企業が中国から撤退するわけではありません。
クロスボーダーM&A戦略を再構築する:クロスボーダーM&Aの活動に対する当局の監督や、非米国オーナーから米国の資産を分離するための事業売却・スピンオフの要求は今後も続いていくと思われます。また企業は、知的財産、国家安全保障およびサイバー脅威に関する、さらなる監視に適応する必要があります。あるいは、他の選択肢としては、セキュリティ上のリスクがより小さいと思われるセクターでの相対的に小規模なディール、トランザクションなどが考えられます。
バイデン大統領は、COVID-19感染拡大による経済封鎖から回復途上にある経済において、何百万人もの雇用を創出すると約束しました。3月から4月に2,220万人が失業した後、9月時点でそれらの雇用の半分以上が回復していますが、なお1,070万人が雇用を失ったままです。この数値は、感染拡大前の雇用の7%に相当し、2008-2009年の世界金融危機で最も悪かった月を上回っています。
バイデン大統領は、雇用の国内回帰に対する税額控除など、「メイド・イン・アメリカ」指向の政策を推し進めていくでしょう。バイデン大統領はまた、雇用や生産の海外移管に対する控除を認めないことと、海外に生産移管した場合に公的投資と税制控除の返還を要求する「クローバック」条項を設けることを提案しています。同大統領が打ち出した7,000億ドルの支出プランでは、今後4年間で米国製の製品・サービスの購入に4,000億ドル、新たなテクノロジーやクリーンエネルギー事業に関する研究開発に3,000億ドルを投じる、としています。
また、職場におけるさらなるダイバーシティ&インクルージョンを求める国民の声に対して、ホワイトハウスは大統領令や規制に加え、そうした目標達成に進展を見せた企業を公に表彰するなどの方法で支援を行うことが考えられます。また、民主党はDREAM法(正規の書類を持たない状態で家族と共に16歳未満で米国に移り、教育を受けた若者に対して、条件を満たせば永住権取得を可能にする法案)の早期可決に優先的に取り組んでいく可能性があります。高度人材に対する措置など、その他の移民関連の法的措置が早期の取り組みに加えられるかは不明です。
景気回復の後押しにつながる「よい仕事」を創出する:プライベートセクター(民間部門)は常に、従業員の幸福の促進を担うような仕事を創出する役割を果たしてきました。今後は、経済・社会の在り方に関して、原状回復ではない、より持続可能な経済・社会への発展を後押しするような仕事を創出することが求められます。「よい仕事」の定義をさまざまな側面から考えてみた場合、安全である、賃金格差がない、(ある程度)安定している、やりがいがある、労働者のスキルが生かされる、汎用性の高いスキルを身に付けられる、ある程度の自主性を与えてくれる、などが挙げられます。こうした仕事は、生産性を向上させながら、従業員の経験価値を高めるものです。
従業員の将来的な雇用適性にフォーカスし、アップスキリングに投資する:バイデン政権が雇用と経済回復に注力する上では、民間部門による労働者のスキルおよび将来的な雇用適性の向上が大きな意味をなします。企業は、「バイ・アメリカン(Buy American)」政策の機運を、国内のサプライヤー、製造業者、デジタル企業への再トレーニングプログラムに投資する指針として見ることができます。
ESG課題としてダイバーシティ&インクルージョンに注力する:ダイバーシティ&インクルージョンや賃金、福利厚生、ガバナンスなどの労働問題の改善に向け、大統領令や規制など法令を超えた取り組みが米国の産業界に対して頻繁に働きかけられる可能性が非常に高いと考えられます。企業は、女性や外国人のダイバーシティ&インクルージョン、同一賃金、労働者の健康・安全に関する指標化などを考慮しながら、自社の透明性を高めていくべきでしょう。
バイデン大統領は、医療制度に関してはオバマ政権時代の路線に回帰し、政府補助による保険加入の段階的拡大を通じた医療保険制度改革(オバマケア)の継続発展を求めていくでしょう。また、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)の「価値に基づく医療(バリューベースケア)」および食品医薬品局 (FDA) の近代化の推進を今後も継続していくと予想されます。しかし忘れてはならないのは、バイデン大統領は副大統領時代とは全く異なる状況で大統領に就任することになることです。
米国は、2020年末時点で35万人以上の国民の命を奪い、何百万人もの感染者を生み、経済に大打撃を与えたCOVID-19拡大という難題に取り組んでいます。さらに、医療保険制度改革法(ACA)の合憲性についても最高裁での審理が行われており、今年判決が下される見込みです。バイデン大統領は、連邦政府としてトランプ前政権よりも積極的に感染防止対策を推進すると公言しています。公的医療保険制度の創設や、連邦政府機関であるメディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)によるメディケア薬価交渉の許可といったより大胆な方策は、民主党が議事妨害を阻止できる議席数を確保して上院をコントロールできない限り、困難なものと予想されます。
新たな医療経済への移行を加速する:COVID-19の感染拡大を機に、より消費者中心で、デジタルとバーチャルによる医療制度への移行が加速しています。こうした背景により、異業種の企業にも新たなビジネス機会が生じています。企業は、成長に向けて自社のケイパビリティ向上に向けた投資を行い、新たな医療経済へ着実に歩みを進めることで大きな利益を得ることができるでしょう。
データドリブン・シナリオプランニングを行う:COVID-19の感染拡大の行方やオバマケアの今後など、不確実な要素は数多く存在します。最高裁でオバマケアが違憲と判断された場合、何百万人もの米国民が健康保険を失うことになります。そうなった場合、短期的には一部の労働者に影響が出るのに加えて、最終的には、オバマケア代替案を求める声につながっていく可能性があります。今回の感染拡大において従業員の健康と安全の確保に注力してきた企業は、COVID-19がさらに猛威を振るった場合の影響や、高額医療費請求、薬価制度改革などに関する法改正の可能性を考慮した上で、データに基づいたシナリオプランニング(データドリブン・シナリオプランニング)への投資を行い、医療保障範囲とコストのモデル化を行う必要があります。
※本コンテンツは、PwC米国が2020年11月に発表した「Election 2020: Policy outlook with a Biden administration」を抜粋し、翻訳した要約版です。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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