ウィズコロナ/アフターコロナにおける新たなワークスタイルへの転換に向けて

  • 2021-10-20

ウィズコロナにおけるPwCのワークスタイル調査結果と今後のアクションへの示唆

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、企業におけるビジネスモデルに対して大きな影響を与えるのみならず、そこで働く従業員一人ひとりの日々の生活形態を変容させるなどさまざまな影響を与えてきました。

PwCが2021年に実施した第24回世界CEO調査では、日本国内の45%のCEOが「従業員エンゲージメントやコミュニケーション」を、今後最も重要視する人材戦略として挙げています。「コミュニケーション」という観点がここまで取り上げられるということは、COVID-19の影響を受け、従業員個々の働き方に対して、経営者がより強い課題意識を持っていることを如実に示していると言えるでしょう。

こうした環境下において、各企業は従来の生産性、従業員のエンゲージメントを維持していくために、リモートワークの導入・拡大をはじめ、さまざまな施策を推進してきました。PwCが行った調査「PwC's COVID-19 CFO Pulse survey Japan Edition」によれば、日本のCFOの88%がリモートワークを恒久的な働き方の選択肢として捉えているという結果となっており、これからの事業活動において新たな働き方の定義が必要になることは、多くの企業において共通の課題認識として捉えられていると言えるでしょう。

しかしながら、その実態は、リモートワークを支えるインフラ面の整備のみならず、根幹となるビジネスプロセスや従業員の意識、マネジメントモデルの変革など、さまざまな施策を一体化して求められる未だ経験したことのない大きな変革に対して、明確な解を持ち得る企業は多くはないのが実情ではないでしょうか。

また、そうした取り組みの多くは、いかにして従来どおりの生産性に復帰できるかという、「マイナスをゼロ」にするという観点が強く意識されていることも否定できません。当然ながら従来どおりの企業活動を行うためにこうした観点は必要不可欠ですが、新たな働き方の模索が今後、一定期間において継続していくと仮定した場合には、新たな働き方を通じて「ゼロを超えてプラス」を生み出していくという観点も、長期的な企業競争力を生み出すためには必要となってきます。

PwCは、こうした状況に対して一つの提言を行うべく、「New Ways of Work」と呼ばれる新たな働き方の導入を、さまざまなデジタルツールを活用して、グループ内で試行してきました。本稿では、その検証結果を共有すると共に、日本企業において今後想定されるであろう課題ならびに必要とされるアクションを、グループ内試行から得た経験値に基づいてまとめたものです。本書が多くの企業にとって、新たな働き方を見出すための一助になることを願っています。

北崎 茂
PwCコンサルティング合同会社 パートナー

1.プロローグ

私たちは今、新たなワークスタイル確立に向けた岐路に立たされている

2020年、突如出現した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、私たちの働き方は、リモートワークの導入をはじめ急速な転換を余儀なくされました。2021年6月現在、未だ感染収束の兆しは見えず、3度目の緊急事態宣言を経て、各企業においては働き方の見直しを再び迫られているのが現状です。

一部の企業はすでにリモートワークを恒久的な働き方の選択肢として導入することを検討し、定着させつつあります。一方で、さまざまな事情により従前の働き方を変えられない、もしくは楽観的観測とともに従前の働き方に戻そうとする企業の動きも垣間見られています。いずれにせよ、今なお多くの企業がこのような状況下で、リアルとバーチャルの働き方をいかに融合すべきなのかという問いに対し、答えを見つけられぬまま模索を続けているのではないでしょうか。

図表1は、COVID-19による働き方の変化と今後考え得るシナリオを示したものです。収束の糸口が見えぬ状況下、私たちとウイルスとの闘いは、おそらく長期戦を覚悟せざるを得ないでしょう。そんな中にあって、リモートワークを緊急事態における一時的な手段と捉えて従前のワークスタイルを継続するのか、新たなワークスタイルを確立させるのか⸺。まさに今、私たちは、新たな働き方を選択するかどうかという、大きな岐路に立たされています。

図表1 COVID-19による働き方の変化と今後のシナリオ

働き方の多様化に伴い、組織・従業員の課題は不透明化

COVID-19の急速な感染拡大により、多くの企業が突如としてリモートワークの導入を余儀なくされました。バーチャルな環境下で従来のような生産性や効率性をどう維持すればよいのか、同僚や上司とどうコミュニケーションを取ればよいのかなど、多くの不安を抱えながら、これまでと異なるワークスタイルにチャレンジした人は少なくないはずです。

しかし結果として、オフィスに出社せずとも、バーチャルな環境下で一定のパフォーマンスを維持できることに気付いた人も多かったのではないでしょうか。PwCがリモートワーク環境下の働き方に関するグループ内調査「Remote Work Survey」を実施したところ、想定を超える約3分の1の従業員から「リモート環境下において生産性が向上した」というポジティブな結果が得られました(図表2)。

しかし同時に、同僚や上司と思うようにコミュニケーションが取れないことによる仕事のやりづらさや孤独感、家庭との両立におけるストレスなど、これまでにはなかった新たな問題が一定程度発生していることも判明しました。しかもこれらの問題は、従業員個々が置かれた環境や仕事の特性、組織のあり方などさまざまな要因に依存しながら、まだら模様のように発生しているのです。

何より深刻なのは、働く場所が多様化したことに伴い、上記のような問題を抱える従業員が実際にどのような働き方をしていて、かつ問題がいつ誰に起きているのかを把握することが困難な状態に陥っていることです。これこそリモートワークにおける最大の問題と言えるのではないでしょうか。

図表2 リモートワーク環境下の生産性に関する調査結果

現状が見えないままでは、生産性やエンゲージメントの低下ひいては雇用ブランドの棄損にもつながりかねない

リモート環境下で従業員の現状がブラックボックス化されたままでは、経営・マネジメント層と従業員の間に、実態に対する認識のギャップが発生してしまうことも否定できません。従業員が抱える問題に気付けなかった結果、組織全体の生産性やエンゲージメントの低下、ひいては退職者の増加に伴う雇用ブランドの棄損など、企業経営に関わる重大なリスクを生じさせる恐れもあります。

このような事態に陥ることなく、新たな時代に適合したワークスタイルを確立していくためには、従業員の現状をタイムリーに可視化し、適切に把握することが有効な手段の一つであると私たちは考えています。

本レポートでは、2020年5月から6月にかけて、リモートワークによる働き方の変化を明らかにするためPwC内で約600名を対象に実施した前述のグループ内調査と、その前後の組織内コミュニケーションの変化を明らかにするためのネットワーク分析の結果を参考にしながら、ワークスタイルの変化が引き起こす問題について考察するとともに、それらの問題を解決してウィズコロナ/アフターコロナにおける新たなワークスタイル確立を実現するためのキーアクションを紹介します。

2.ワークスタイルの変化に際し、私たちはどのような問題に直面したのか

前述のとおり、私たちは2020年5月から6月にかけて、PwC内の約600名を対象に、働き方の変化に関する調査を行いました。その内容ならびに分析の結果からは、急激な働き方の変化がもたらした5つの課題が見えてきました。以下、順に紹介します。

Findings 1:人知れず孤立していく従業員

リモートワークが本格的に導入され、非対面のバーチャルな環境下で仕事をするようになった私たちがまず初めに実感したことの一つは、周囲のメンバーとのコミュニケーションの量や質が変化したことではないでしょうか。

バーチャルな環境下では、コミュニケーションがオンライン会議やメール・チャットツールを通じた目的特化型のものに限定されやすいと言えます。対面であれば当たり前のように交わしていた他愛もない会話が減り、上司と部下の関係性においては業務に関連した指示やフィードバックなど一方向のコミュニケーションに限られてしまう傾向にあります。これが行き過ぎると、コミュニケーションの量自体が減少し、従業員同士のつながりが希薄化しやすくなることは否定できません。

PwCは、グループ内の特定の組織におけるメールやオンライン会議、チャットなど日々の蓄積されたコミュニケーションデータを活用し、オフィスに出社していた1度目の緊急事態宣言前と、その後のリモートワークを中心とするバーチャルな環境下で、従業員のコミュニケーション・ネットワークの状況にどのような変化があったのかを、2カ月単位で調査・分析しました。

その結果、リモートワークによるバーチャルな環境下においても、従業員間のつながりを担保できている組織と、コミュニケーション量が徐々に減少し従業員間のつながりが希薄化している組織が大きく二分される結果となり、コミュニケーション量が最も減少している組織においては従前より約20%減と、大幅に下がっていることが分かりました(図表3)。また、従業員個々のコミュニケーション量の傾向を可視化したところ、つながりが希薄化し孤立化傾向にある従業員は、特にアソシエイトやシニアアソシエイトといったスタッフ層に多く見られる結果となりました。

これはあくまでPwCの例ですが、リモートワークを導入している企業においては、少なからず周囲とのつながりの希薄化を実感している人も少なくないのではないでしょうか。

Findings 2:失われたインフォーマルコミュニケーション

バーチャルな環境下において最も失われたコミュニケーションの一つは、従来オフィスで行われていた、同僚とのふとしたインフォーマルなコミュニケーションの機会でしょう。

Remote Work Surveyでは、上司・同僚・クライアントとのコミュニケーションの量がそれぞれ、どのように変化したかを調査しました。その結果、「上司とのコミュニケーションが減少した」と回答したのは25%、「クライアントとのコミュニケーションが減少した」のは33%、「同僚とのインフォーマルコミュニケーションが減少した」のは46%であり、同僚とのコミュニケーションが最も大きなインパクトを受けていることが分かりました(図表4)。

従来のオフィスを中心とした働き方では、仕事の合間や会議の前後、エレベーターや廊下での出会い頭など、ふとした瞬間に同僚と会話をする機会が存在しました。そして、一見すると他愛もない会話において、有益なナレッジが共有されたり、新しいアイデアが生まれたりといったことを経験した人は少なくないでしょう。インフォーマルなコミュニケーションは、実は私たちに、多くのコラボレーションの機会を提供していたとも言えます。

さらに特筆すべきは、同僚とのインフォーマルなコミュニケーションは、コラボレーション機会の提供のみならず、バーチャルな環境下で働く私たちのエンゲージメントにも大きく影響を及ぼしていたことです。実際にPwCにおける調査結果をもとに社員のエンゲージメントに与える影響因子を分析したところ、同僚とのインフォーマルコミュニケーションが最も影響度が高いことが明らかとなりました。

このように偶然かつ意図的でない同僚とのインフォーマルコミュニケーションが欠如することは、複数の側面で組織に悪影響を及ぼす危険性をはらんでおり、バーチャルな環境で働くことの大きな問題となり得ると言えます。これらのことから、バーチャルな環境下においても従来のようなインフォーマルコミュニケーションを担保するための仕組みの構築が今後急務になると、私たちは考えています。

Findings 3:ワーク/ライフの境界の曖昧化によるストレス

リモートワークの導入により、多くの従業員が自宅で働くことを余儀なくされました。それにより、従来前提として存在したワークとライフの二極構造は大きく変化し、その境界は非常に曖昧なものになりつつあります。家族と同じ空間で仕事をし、合間に家事や育児をする……。ワークとライフが入り混じる体験の数々に、とまどいを覚えた人は少なくないでしょう。

Remote Work Surveyにおいてリモートワークに関する課題を調査したところ、57%の従業員が「仕事とプライベートの切替が困難であること」と回答し、最も強く課題を感じていることが明らかとなりました(図表5)。また、仕事とプライベートの切替に課題を感じている従業員の約7割が精神的にストレスを感じており、同じく7割が「生産性が低下した」と回答していることも明らかとなっています。

もう一つの特徴的な結果は、このワークとライフの切替の問題は、特に30代の従業員に顕著な傾向にあったことです。仕事・子育て・家事といったマルチタスクが求められやすいこの世代は、特にリモートワークによって長時間労働や、それに伴う仕事への集中力の欠如を招きやすいと言えます。それらが精神的・身体的ストレスを増長させるリスクが高いことは、おそらく多くの人が実感しているところではないでしょうか。

一方で、ワークとライフを厳密に分けないことは、決して負の側面ばかりではありません。時間や場所に縛られず個人の裁量で仕事ができることで、生産性やウェルビーイングを向上させているケースも多く見受けられます。リモートワークが長期化するに連れて、私たちは徐々にワーク/ライフのバランスを柔軟にコントロールする術を身に付け始めているのかもしれません。

重要なことは、この環境変化に柔軟に適応できるか否かは、従業員個々の置かれた環境やワーク/ライフに対するスタンス・嗜好性に依存しているということです。ワークとライフの境界が曖昧化したことをポジティブに捉えている従業員が一定数存在する一方、一部の従業員は、先行きが見えない中で思わぬストレスの増幅や生産性の低下に襲われている可能性があるということを、私たちはまず認識する必要があると言えそうです。

Findings 4:デジタルリテラシーの低さがもたらし得る生産性の低下

バーチャルな環境下においても生産性を維持・向上し、実効性を高めていくには、テクノロジーの活用が不可欠です。そしてテクノロジーを適切に活用するには、ツールやシステムを柔軟に利活用できる従業員のデジタルへのリテラシーと、新たな環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく、いわゆる「Learning agility(学習の俊敏さ)」が強く求められます。

しかしながら、PwCがデジタル環境の変化についての意識を調査したレポート※1では、「テクノロジーへの理解を深め、活用するために新しいスキルを習得しているか」という質問に対して、グローバルでは85%が「Yes」と回答しているのに対し、日本ではわずか29%にとどまる結果となりました(図表6)。このことから、日本のデジタルリテラシーがグローバルと比較して低いというのは否定できません。

バーチャルな環境下で業務を遂行するには、デジタルの活用が必然的に求められます。デジタルリテラシーが低いことは、従業員のExperience(業務上享受できるあらゆる経験価値)を低下させ、生産性の悪化をもたらすリスクをはらんでいるとも言えるのです。

Remote Work Surveyにおいて従業員のデジタルツールの活用度を調査したところ、業務実績をもとにハイパフォーマーと考えられる人材は、その活用度が平均より10%高いことが分かりました。チャットやオンライン会議のみならず、共同編集ツールやナレッジ共有ツールなど、オンライン上でのコラボレーションを実現するツールを特に積極的に活用していることが特徴として挙げられます。これはあくまでPwC内の一例に過ぎませんが、周囲を見回せば、バーチャルな環境においてツールをうまく活用して生産性を向上している従業員は、少なからず見られるのではないでしょうか。

従業員同士が離れた場所で業務を行うことが当たり前になった昨今、リアルタイム性を提供するデジタルツールは、業務の生産性を担保する上で必要不可欠になりつつあります。これらを使いこなすスキルが、もし欠如していたら……。バーチャル環境下における生産性向上の大きなハードルになりかねないことに、私たちは強い危機感を抱く必要があります。

Findings 5:限界を迎える従来型マネジメント

ワークスタイルの変化によって変革を余儀なくされているものとして、Ways of management―マネジメントの在り方を忘れてはなりません。リモートワークにより、いつ、誰が、どこで、どんな風に働いているかが見えづらくなったのは前述のとおりです。今、部下をどのようにマネジメントするべきか、チームの一体感をどのように維持・醸成すべきか。そんな悩みに直面しているマネジメント層は少なくないのではないでしょうか。

従来のオフィスでは、多くのマネジメント層が、部下の様子や業務の進捗を把握しながら役割分担や指示を行ったり、表情や顔色によって精神状態を把握したりするなど、face to faceを前提としたマネジメントを行ってきました。ところがバーチャルな環境下で、部下を知るための情報量は圧倒的に少なくなりました。従来のように、部下一人ひとりの働きぶりや進捗をリアルタイムで把握することは今や、著しく困難です。face to faceを前提とした従来型のマネジメント手法は、すでに限界を迎えていると感じる人も少なくないはずです。

マネジメント層が直面するもう一つの大きな問題として、従業員間の情報格差が挙げられます。バーチャルな環境下においては前述のとおり、コミュニケーションの量が減る傾向にあります。これは決してラフなコミュニケーションに限られません。組織のビジョンや戦略、方針……。こうした、組織のメンバーとして知っておくべき情報が主に口頭で伝達されていた組織であれば、職位をまたがるコミュニケーションの量が減少することにより、伝達されづらくなる可能性があります。業務上必要な情報の伝達が割愛されているとの印象は、従業員の一体感の欠如やエンゲージメント低下に大きな影響を与える可能性が高く、見過ごせない問題であると私たちは考えています。

Remote Work Surveyにおいて、リモートワーク環境下におけるマネジメント層からの戦略方針の伝達度と従業員のエンゲージメントの関係を見たところ、エンゲージメントの高い従業員グループは約9割が「リーダーから戦略が伝達されている」と感じている一方、エンゲージメントの低いグループは約半数にとどまりました(図表7)。つまり、バーチャルな環境下で組織への帰属意識が希薄化しやすくなる傾向がある上、マネジメント層からの戦略伝達が十分に受けられないことは、従業員のエンゲージメント低下に影響を与えると言えそうです。

バーチャルな環境下で、いかに適切に従業員を管理しながら、必要なメッセージを発信すべきか。マネジメントのあり方は今、大きく見直しを迫られています。

3.課題を克服して新たなワークスタイルを確立するために、私たちが実行すべきアクションとは

COVID-19により激変した働き方が、収束後に従前に戻ることは、もはや考えづらいでしょう。前述してきた課題の芽を早期に摘み、ウィズコロナ/アフターコロナの世界で従来どおりまたは従来以上の生産性やエンゲージメントを担保していくために、私たちにはどのようなアクションが求められるのでしょうか。一言で表せば、それはニューノーマルの時代における新たな働き方のモデル「New ways of work」を早期に構築することです。以下は、私たちが考えるNew ways of work構築のための4つの重要な検討事項(key tips)です。

  1. 多様な価値観に応える新たなワークプレイスをデザインする
  2. 失われたコミュニケーションを支える仕組みを再構築する
  3. デジタル時代を生き抜く自律的な人材を育成する
  4. バーチャル環境下における新たなマネジメントのあり方を定義する

もちろん、図表8に記す全てのポイントを一度に推進し、最適なワークスタイルを確立することは難しいでしょう。しかし重要なことは、4つのKey tipsを踏まえ、まずは自社の現状の課題を認識すること、そして課題に対して早期に解決のためのアクションを遂行していくことです。新たな働き方を取り入れたことで生じた非効率性やリスクを最少化し、従業員のエンゲージメントや組織としてのパフォーマンスを向上させていく⸺。こうした地道なアクションの積み重ねによってNew ways of workを確立することこそが、企業に大きな価値を生み出すと私たちは考えています。

ここからは4つのKey tipsに沿って、具体的なアクション案を含むアプローチのヒントをお伝えしていきます。

図表8:New ways of work構築のための4つの重要検討事項

Key tips 1:多様な価値観に応える新たなワークプレイスをデザインする

従来型のオフィスに限定したワークスタイルを維持することは、もはや現実的ではないと言っても過言ではありません。実際、企業の経営者層の多くも、そうしたワークスタイルからの転換を図っていることが分かっています。PwCが日本企業の最高財務責任者(CFO)を対象に行った調査※2では、CFOの約9割が「リモートワークを恒久的な働き方の選択肢として導入する」、約7割が「リモートワーク環境を改善しようとしている」と回答しています(図表9)。

新たなワークプレイス構築に向けた改革を行う上で見落としてはならないことは、従業員の業務や置かれた環境・就業観は「多様である」という前提です。この前提を踏まえて「多様な人材による多様な働き方をいかに柔軟に担保するか」という問いに答えていくことが、中長期的な企業の成長を決定付ける一つのカギとなると私たちは考えています。

では、この多様性が担保された新たなワークプレイスをデザインする際のポイントとは何か、3つのキーワードと共に考察していきます。

オフィスの価値の再定義

リモートワークが進むことによって、従来のオフィスのあり方は大きな変革を迫られています。バーチャルであっても、会社・組織からの一定のサポートや環境整備によって業務を生産性を維持しながら遂行できると、多くの人が気付いたことでしょう。そのような中、リアルのオフィスは今後、どのような意味を持つのでしょうか。

PwCは、オフィスの価値は「コラボレーション」にあると考えています。実例として、2021年2月に開設した新オフィスが挙げられます※3。コンセプトを「共創」とし、従業員間のコラボレーションにより新たな経験と価値を生み出す場として設計しました。リモートワークをこれからも活用しながらも、必要に応じて同僚やクライアントと会い、膝を突き合わせて話し合うことで新しいアイデアやソリューションを生み出していくのです。オフィスの役割はそこにあると私たちは確信しています。リアルで会うことの意味は何か、リアルで会うからこそ実現できることとは何か。まずは各企業がこうした問いに向き合い、オフィスの意義をあらためて明確にすることが重要となるでしょう。

多様なワークプレイスの選択肢

近年、欧米でABW(Activity Based Working)という考え方が注目を集めています。これは、企業が働く場所や時間を一律に指定するのではなく、従業員一人ひとりが集中作業や共同作業、打ち合わせなどの活動に応じて働く場所や時間を自由に選択できるワークスタイルのことで、日本でもこうした考え方は広まりつつあります。ABWを軸にした考え方においてはまず、従業員が生産性高く、かつ効率的にパフォーマンスを発揮するための「多様なワークプレイスの選択肢」を企業が用意することが重要となります。

例えば日本でも、金融機関において、本社勤務の従業員が自身の最寄りの支店をサテライトオフィスとして使用できるようにしたり、地方在住のまま本社勤務扱いで働くことを可能にする制度を整備したりといった取り組みが見受けられます。従来は一つのオフィス、一つのデスクに限定されていたワークプレイス。今やその役割を大きく変え、従業員の柔軟な働き方を支えるための環境となっていくことが求められつつあるのです。

デジタルワークプレイスの最適化

働く場所が多様化することで、従業員同士が従来対面で行っていたようなコラボレーションに弊害が生じたり、作業効率の低下を感じたりすることももちろん最初はあるでしょう。しかし、ITツールを最大限に活用し、デジタルワークプレイスを整備・最適化することで、私たちは時間や場所の制約を超え、従来に近い質のコラボレーションを実現したり、作業効率を高めたりすることが可能になることも忘れてはいけません。例えば、グループウェアをはじめとするコラボレーションツールを適切に活用すれば、離れた場所にいる従業員同士が共同で作業をすることは容易になります。仮想空間であるバーチャルオフィスを活用することで従業員同士が従来のオフィスにいるかのように気軽に声を掛け合うこともできるようになります。こうしてデジタルワークプレイスを最適化すれば、従来同じオフィスで働いていた従業員同士のコラボレーションにとどまらない効果を得ることも期待できます。その一つが、クロスボーダーでの連携の加速です。一瞬で世界中の人々とつながることができるデジタルの利点が、従来考えられていたコラボレーションの常識の幅を大きく広げ、新たな価値を生み出すことにも寄与するのです。

重要なことは、ワークプレイスの多様化に伴う課題や弊害に直面しても従来型のワークスタイルに戻すのではなく、デジタルの可能性を最大限に信じ、課題や弊害を乗り越えていくための方法論を見つけ出していくことです。そうした積み重ねに、従来のオフィスでの業務以上の生産性やコラボレーションを生み出す可能性が秘められています。

Key tips 2:失われたコミュニケーションを支える仕組みを再構築する

働く場所がリアルからバーチャルへと転換することによる従業員にとっての最も身近な変化は、コミュニケーションのあり方が大きく変化することでしょう。例えば、会議の前後などのちょっとしたすき間時間の会話や廊下ですれ違った際の雑談がなくなるなど、コミュニケーションの量自体が減少するのみでなく、(たとえその量自体に大きな変化がなくとも)デジタルを介入させることによって相手の表情が見えなくなったり、その場の雰囲気がつかみづらくなったりするなど、コミュニケーションの質の変化が起こりやすいことも否めません。つまり、バーチャルな環境下においては、従来オフィスにおいて行われていたコミュニケーションの量や質をそのまま再現することは難易度が高いと言わざるを得ないのです。

一方で、こうした失われたコミュニケーションは、いくつかの工夫によって取り戻すこともできます。リアルな環境で行われ、実は重要度が高かったコミュニケーションを取り戻すために何をすべきか、PwCにおける実際の取り組みを踏まえ、見えてきたヒントをお伝えします。

小集団のコミュニケーションプラットフォーム

バーチャルな環境下でコミュニケーションの量と質を担保するための最大の鍵、それはできる限り少人数のコミュニケーションプラットフォームを構築することです。なぜなら、組織が小集団であればあるほど、双方向で密なネットワークを担保しやすく、結果としてバーチャルな環境下であっても、コミュニケーションや情報伝達の量と質を維持しやすいためです。

もちろんビジネスや組織の特性上、大規模の組織を維持ウィズコロナ/アフターコロナにおける新たなワークスタイルへの転換に向けてせざるを得ないケースは少なくないでしょう。その場合は、例えば組織の中で単位の小さなチームを設けたり、少人数を束ねるチーム制を敷いたりすることなどによって、意図的にコミュニケーションの密度を高める工夫をすることが有効です。実際にPwCの一部の組織では、50人以上のメンバーを6人前後の小チームに分け、各チーム単位で情報伝達を行っています。こうした取り組みは、リーダーからのメッセージを各チームのマネジメントが現場の状況やニーズに合わせて伝達でき、また現場からは生の声をマネジメントを介して伝えられるため、一方通行にならないコミュニケーションの実現に一役買っています。バーチャルな環境下においては、こうした双方向性のあるコミュニケーションの機会を意図的に設計することで、組織としての情報流通度を高めることが重要だと言えます。

多元的なコミュニケーションネットワーク

バーチャルな環境下におけるコミュニケーションは、その量や密度のみでは、失われたコミュニケーションを補完するという意味で決して十分とは言えません。もう一つの重要なポイントは、COVID-19によって狭められたコミュニケーションネットワークの幅をいかに広げ、従業員の多様性に対応できるかどうかにあると、私たちは考えています。

バーチャルな環境下のコミュニケーションの特徴として、ミーティング主体(例:リアルな環境で行っていた雑談や休憩がなくなり、他者との会話が業務上必要なミーティングのみになる)になりやすいこと、資料のレビューや報告・連絡・相談など、直属の上司などとの業務に直結したものに限定されやすい傾向などが挙げられます。こうしたコミュニケ―ションに依存することは、例えば上司と部下が全く異なるライフスタイルや価値観・志向性を持っていた場合、すれ違いの原因になり、結果的に互いにストレスを抱え込んでしまうことになりかねません。

リスクを最低限に抑え、なおかつ多様な人材を生かしていくためには、一人の従業員をできるだけ多様な人材がケアする仕組みが必要です。例えば、評価者である上司に加え、キャリアの相談を行えるコーチ・メンター、日ごろの悩みや困りごとを気軽に相談できる同僚など、複数の話し相手を担保する仕組みを導入することが重要です。多元的なコミュニケーションネットワークを整備するにあたっては、従業員の精神的なよりどころや組織の多様性推進の旗振り役となるようなメンバーをあらかじめ選定し、誰もが気軽に相談できる窓口を設置しておくのも一案です。

Recognition文化の加速

バーチャルな環境下でのコミュニケーションにおける重要課題を克服して新たなワークスタイルを確立するために重要なキーワード、それは「心理的安全性」です。互いの顔が見えない中でコミュニケーションの量・質が低下することは、特に若手や勤続年数の短い従業員の孤立感を生みやすく、「自分はここに居場所がある」という、いわば自己肯定にも似た心理を欠如させる危険性があります。

この心理的安全性を担保し、従業員のエンゲージメントを維持・向上させるための一つの効果的な方法として、組織内のコミュニケーションに「Recognition(賞賛)」を取り入れることを紹介します。Recognitionとは「認識」や「承認」という意味も持ち、人事領域においては、非金銭的報酬を用いて従業員の活躍を認め、賞賛する仕組みのことを指します。

Recognitionの代表的な仕組みの一つに、ピアボーナスがあります。ピアボーナスとは、英語のPeer(同僚・仲間)とBonusを組み合わせた言葉で、「従業員同士が互いの行動に対して賞賛とインセンティブを贈り合うことができる仕組み」を指します。「〇〇をしてくれてありがとう」「あなたの働きがこんな風に役に立った」⸺。こうした言葉の掛け合いは、自身の業務がいつ誰の役に立っているのかを知ることにつながり、さらには「自分は組織に貢献できているんだ」との心理的安全性の醸成にも結び付きます。

互いの行動を認め合い、賞賛する組織文化を作り出すことは、Recognition文化の加速を促す効果的な方法の一つです。互いの様子が見えず関係性が希薄化しやすいバーチャルな環境下だからこそ、互いの行動やアウトプットを賞賛し、認め合うプロセスを意図的に作り上げることが大きな意味を持ちます。

Key tips 3:デジタル時代を生き抜く自律的な人材を育成する

COVID-19感染拡大により、社会のデジタル化は一層加速しています。変化の激しい時代を生きる企業や組織が、そのスピードに追従し、かつ柔軟に適応していくためには、従業員一人ひとりが自身のスキルを向上させ続けること、すなわち「アップスキリング」が不可欠です。

現代のアップスキリングにおける重要なキーワードは、新たな環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく「Learning agility(学習の俊敏さ)」です。変化が早く、不確実性の高い環境下では、私たちに求められるスキルやリテラシー・マインドセットは日々変化します。例えば技術革新やAIの進化、さらにはパンデミックによって業務のあり方が大きく変わり、デジタルリテラシーが急速に求められるようになるとは、ほんの数年前には誰も想像できませんでした。明日に何が起こるか分からないからこそ、私たちは常に、新しい環境や経験から学び続けていかなければなりません。従業員がLearning agilityを身に付けるために組織として取るべきアクションを考察します。

健全な危機意識の醸成

自律的に学び続けるための出発点は、健全な危機感にあると私たちは考えます。自らが今、不確実性の高い変化の中にいること、その中では従来のスキルやリテラシーが加速度的に陳腐化していく恐れがあることを強く認識し、危機感を抱きながら、新たな学びの習得に励む。こうしたスタンスこそLearning agilityの出発点と言えます。

前述したように、日本はグローバルと比較して「新たなスキルを習得している」人の割合が圧倒的に低く、その危機感の低さは顕著です。企業が従業員に健全な危機感を醸成するためにまず重要なことは、現状の自身の立ち位置を正しく認識させることです。そのために必要なのは「可視化」です。

PwCの例を取り上げると、独自開発したアプリケーション「Digital Fitness」を活用して、従業員のデジタルへの理解の深化を促しています。同アプリでは毎週、デジタルに関する最新のトレンドが配信されます。それを各自が読み、理解度を図るアセスメントを受験することで、自身のデジタルスキル・マインドのレベルを把握することができます。組織を構成する従業員に対し、自身の現在地を正しく知る機会を提供することは、企業が新しい時代に適応し、選ばれる存在になる上で非常に重要な一歩となると私たちは考えています。

Digital experienceの提供

従業員に対して、知識やスキルのインプットを目的に学習の機会を提供している企業や組織は少なくありません。こうした場を持つことは従業員のモチベーションを維持し、業務レベルを上げていく上で有意義ですが、デジタル全盛の時代においては、習得した内容を実際の業務に落とし込み、より高度なサービス提供につなげることが重要さを増します。重要なのは「Digital experience」、つまりデジタルを活用し、アウトプットする学習体験をデザインすることです。

テクノロジーが発達し、破壊的イノベーションが国や業種の壁を越えてなされる時代です。デジタルスキルやマインドセットの学習を机上のみで完結させていては、競争から取り残されてしまいます。デジタルデバイスやツールの使い方を学び、実際の業務での活用までをも包含した学びの体験を設計することが、学習効果や実践性の最大化に大きく寄与します。

同時に、こうした体験の場は画一的なものではなく、従業員一人ひとりのレベルや目指すキャリアによって異なるべきであることも忘れてはなりません。個々の習熟度や目的に応じてさまざまな学習体験を提供し、一人ひとりの経験を育成モデルに反映すること、これが今の人事部門には求められていると言えるのではないでしょうか。

自律的なキャリア形成を促す仕組み作り

コロナ渦で進んだリモートワーク、国が推進する兼業・副業といった新たな働き方……。ワークスタイルが社会全体で変わりつつある今、企業に求められるのは、従業員の「自律性」を高めることです。事業領域の多角化によるビジネスの複雑化、競争のグローバル化など、企業や組織を取り巻く状況は厳しさを増しています。こうした状況においては、自らに求められる役割を自発的に考え、率先してスキルを高められる人材が重要性を増します。一方で、従業員のキャリアに対する考え方は多様化しています。企業はこれらの事実を十分に認識した上で、多様な人材が多様なゴールに向かっていくための指針となる広大な地図を用意していかなければなりません。

例えば、ある製薬企業は、各部門のジョブディスクリプションを公開し、目指すジョブに就くにあたっての自身のスキル充足度や不足スキルを可視化できる仕組みを構築しています。多様な人材が自らのキャリアを自らの意思で選択していくために、自社内にどのような機会があるのかをオープンにし、従業員の背中を後押しするプラットフォームを用意すること。あくまで一例ですが、今後の自律的なキャリアを支援する上で、大きな鍵になる取り組みと言えるのではないでしょうか。

Key tips 4:バーチャルな環境下における新たなマネジメントの在り方を定義する

部下と同じ空間で仕事をしないバーチャルな環境下においては、マネジメント層が得られる部下の情報の量と質がリアルな環境下に比べて圧倒的に減少することは、やむを得ない事実です。ふとした瞬間に見ていた部下の表情の変化、オフィス内での雑談の様子から把握していたメンバー同士の関係性、会議の前後で感じられた組織の雰囲気……。これまで同じ空間にいることで把握できた多くの情報がバーチャルな環境下でブラックボックス化されてしまっています。

何気ない日常の様子の積み重ねによって部下の状態を把握し、日々のマネジメントの判断材料としてきた多くのマネジメント層。バーチャルな環境下でこれまでと同様の質を担保しながらマネジメントを行うことを、難易度の高いチャレンジと感じている人も一定数いるのではないでしょうか。このチャレンジを乗り越えるためには、従来のマネジメントのあり方やスタンス・価値観を大きく転換することが不可欠です。そのためのポイントを大きく3つに分けて紹介します。

質と量が担保された情報発信

バーチャルな環境下においては、コミュニケーション量の減少や、コミュニケーションが双方向から一方向になる傾向が強まることから、マネジメント層の戦略や方針が伝わりづらくなるのは前述のとおりです。このことが従業員のエンゲージメントの低下や組織の一体感の欠如につながる恐れがあることから、経営層やマネジメント層が自らの言葉で、変化の中での自社の方針やその決定の背景を、従来よりも意図的に頻度高く打ち出すことが必要です。その際の肝は「いかに手触り感のあるメッセージを発信できるか」そして「従業員との双方向性を担保できるか」であると私たちは考えています。

例えばPwCは、従業員が不安や孤独を感じやすい今だからこそ、動画をはじめとするデジタルチャネルを最大限に活用し、「誰も取り残さない」組織作りを強化しています。リーダーが日常生活における変化やコミュニケーション上の工夫といったソフトなメッセージを定期的に発信したり、戦略伝達の会議で従業員からリアルタイムで質問やコメントを受け付けたりするなど、心理的安全性と双方向を重視したコミュニケーションに取り組んでいます。こうした工夫が、バーチャルな環境下、従業員個々が日々の業務と組織の戦略の結び付きをあらためて認識でき、組織の一体感が醸成されることに寄与すると考えています。

エンパワーメントスタイルへの転換と検証

バーチャルな環境が前提となり、日々の部下の業務状況を細部まで把握したり、目標に対する進捗状況を管理したりすることが難しくなった今、マネジメントスタイルの見直しは急務です。従来のような管理型から、部下の自主性を重視して権限を委譲するエンパワーメント型への転換が、新しい時代のマネジメントスタイルのスタンダードになるかもしれません。

バーチャルな環境下で管理型のマネジメントを継続することは物理的に難易度が高いだけでなく、部下の生産性低下を招いたり、上司と部下双方のストレスを生み出したりしかねません。互いの状況が見えづらい環境で、マネジメント層は役割・責任を明確にした上で部下に権限を委譲し、自律的に働くことができる環境づくりを行うほうが、効率的でよいアウトプットにつながっていきます。

失われた情報を取り戻す1 on 1

従業員に対してエンパワーメントすることは、決して従業員を放置・放任することではありません。バーチャルな環境では部下の日々の働きぶりや表情など、細かな情報がつかみにくくなります。だからこそ、マネジメント層は部下と頻度高くコミュニケーションを行い、「失われた情報」を意図的に取り戻す努力をすることが不可欠です。

部下に権限を委譲しつつ、道を踏み外さないよう見守っていくためには、1対1のコミュニケーション(1 on 1)を最大限に活用することが肝となります。週に1回、または隔週に1回といった頻度でコミュニケーションを定例化し、業務の進捗状況や課題、さらには部下の近況を正しくキャッチするのです。その上で、必要なサポートや即時性のあるフィードバックを行い続けることが、バーチャル下においても部下の成長を担保し、エンゲージメントを維持・向上させる重要なポイントになるでしょう。

ここまでエンパワーメントスタイルの利点を述べてきましたが、マネジメントスタイルの全面的な転換が必ずしも正解というわけではありません。重要なのは、どのマネジメントスタイルが正解と決め付けることなく、環境の変化に応じてスタイルを検証・変更しながら、最適解を柔軟に模索していくことであると私たちは考えます。

最後に

私たちは今、時代の転換点に立たされています。企業活動においても、ワークスタイルの転換をはじめさまざまな変革を余儀なくされていることには疑いの余地がありません。これまでの常識や価値観が覆されることは私たちにとって大きな脅威である一方、新たなワークスタイルを確立することは、ウィズコロナ/アフターコロナの時代を生き抜く重大なカギにもなり得ます。

PwCは本レポートで、Remote work Surveyやコミュニケーション・ネットワーク分析をもとにバーチャルな環境下における組織の課題を明らかにし、それらを克服するためのKey tipsを導出しました。ここに記した私たちが直面した課題と、それらに対して取り組んできたさまざまな取り組みは、多くの企業にも当てはまるものであり、また参考にもできる内容であろうと想定します。

COVID-19感染拡大をきっかけに多くの情報が奪われ、非透明化された今だからこそ、重要なのは情報を取り戻す努力をし、自社の状態や課題を適切に把握することにあります。こうした仕組みを早期に確立し、課題解決に向けてタイムリーにアクションできるか否か⸺。これが、新たな時代における最適なワークスタイル確立の成否を分けると私たちは考えています。

多くの企業が答えを求めて模索を続ける昨今、本レポートが一つでも多くのヒントとなることを願っています。

※1: PwC, 2020年2月.「 デジタルがもたらすのは希望か、脅威か―デジタル環境変化に関する意識調査」https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/is-digital-hope-or-threat2020.pdf

※2: PwC, 2020年6月.「 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応に関するCFOパルスサーベイ日本分析版‐2020年6月15日」https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/pwc-covid-19-cfo-pulse-survey03.pdf

※3: PwC, 2021年2月.「 PwC Japan、ニューノーマル時代の新しい働き方を実現するオフィスを大手町に開設」https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/otemachi-one210205.html

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主要メンバー

北崎 茂

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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齋藤 冠郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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東福寺 芽衣

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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