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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、企業におけるビジネスモデルに対して大きな影響を与えるのみならず、そこで働く従業員一人ひとりの日々の生活形態を変容させるなどさまざまな影響を与えてきました。
PwCが2021年に実施した第24回世界CEO調査では、日本国内の45%のCEOが「従業員エンゲージメントやコミュニケーション」を、今後最も重要視する人材戦略として挙げています。「コミュニケーション」という観点がここまで取り上げられるということは、COVID-19の影響を受け、従業員個々の働き方に対して、経営者がより強い課題意識を持っていることを如実に示していると言えるでしょう。
こうした環境下において、各企業は従来の生産性、従業員のエンゲージメントを維持していくために、リモートワークの導入・拡大をはじめ、さまざまな施策を推進してきました。PwCが行った調査「PwC's COVID-19 CFO Pulse survey Japan Edition」によれば、日本のCFOの88%がリモートワークを恒久的な働き方の選択肢として捉えているという結果となっており、これからの事業活動において新たな働き方の定義が必要になることは、多くの企業において共通の課題認識として捉えられていると言えるでしょう。
しかしながら、その実態は、リモートワークを支えるインフラ面の整備のみならず、根幹となるビジネスプロセスや従業員の意識、マネジメントモデルの変革など、さまざまな施策を一体化して求められる未だ経験したことのない大きな変革に対して、明確な解を持ち得る企業は多くはないのが実情ではないでしょうか。
また、そうした取り組みの多くは、いかにして従来どおりの生産性に復帰できるかという、「マイナスをゼロ」にするという観点が強く意識されていることも否定できません。当然ながら従来どおりの企業活動を行うためにこうした観点は必要不可欠ですが、新たな働き方の模索が今後、一定期間において継続していくと仮定した場合には、新たな働き方を通じて「ゼロを超えてプラス」を生み出していくという観点も、長期的な企業競争力を生み出すためには必要となってきます。
PwCは、こうした状況に対して一つの提言を行うべく、「New Ways of Work」と呼ばれる新たな働き方の導入を、さまざまなデジタルツールを活用して、グループ内で試行してきました。本稿では、その検証結果を共有すると共に、日本企業において今後想定されるであろう課題ならびに必要とされるアクションを、グループ内試行から得た経験値に基づいてまとめたものです。本書が多くの企業にとって、新たな働き方を見出すための一助になることを願っています。
北崎 茂
PwCコンサルティング合同会社 パートナー
2020年、突如出現した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、私たちの働き方は、リモートワークの導入をはじめ急速な転換を余儀なくされました。2021年6月現在、未だ感染収束の兆しは見えず、3度目の緊急事態宣言を経て、各企業においては働き方の見直しを再び迫られているのが現状です。
一部の企業はすでにリモートワークを恒久的な働き方の選択肢として導入することを検討し、定着させつつあります。一方で、さまざまな事情により従前の働き方を変えられない、もしくは楽観的観測とともに従前の働き方に戻そうとする企業の動きも垣間見られています。いずれにせよ、今なお多くの企業がこのような状況下で、リアルとバーチャルの働き方をいかに融合すべきなのかという問いに対し、答えを見つけられぬまま模索を続けているのではないでしょうか。
図表1は、COVID-19による働き方の変化と今後考え得るシナリオを示したものです。収束の糸口が見えぬ状況下、私たちとウイルスとの闘いは、おそらく長期戦を覚悟せざるを得ないでしょう。そんな中にあって、リモートワークを緊急事態における一時的な手段と捉えて従前のワークスタイルを継続するのか、新たなワークスタイルを確立させるのか⸺。まさに今、私たちは、新たな働き方を選択するかどうかという、大きな岐路に立たされています。
COVID-19の急速な感染拡大により、多くの企業が突如としてリモートワークの導入を余儀なくされました。バーチャルな環境下で従来のような生産性や効率性をどう維持すればよいのか、同僚や上司とどうコミュニケーションを取ればよいのかなど、多くの不安を抱えながら、これまでと異なるワークスタイルにチャレンジした人は少なくないはずです。
しかし結果として、オフィスに出社せずとも、バーチャルな環境下で一定のパフォーマンスを維持できることに気付いた人も多かったのではないでしょうか。PwCがリモートワーク環境下の働き方に関するグループ内調査「Remote Work Survey」を実施したところ、想定を超える約3分の1の従業員から「リモート環境下において生産性が向上した」というポジティブな結果が得られました(図表2)。
しかし同時に、同僚や上司と思うようにコミュニケーションが取れないことによる仕事のやりづらさや孤独感、家庭との両立におけるストレスなど、これまでにはなかった新たな問題が一定程度発生していることも判明しました。しかもこれらの問題は、従業員個々が置かれた環境や仕事の特性、組織のあり方などさまざまな要因に依存しながら、まだら模様のように発生しているのです。
何より深刻なのは、働く場所が多様化したことに伴い、上記のような問題を抱える従業員が実際にどのような働き方をしていて、かつ問題がいつ誰に起きているのかを把握することが困難な状態に陥っていることです。これこそリモートワークにおける最大の問題と言えるのではないでしょうか。
リモート環境下で従業員の現状がブラックボックス化されたままでは、経営・マネジメント層と従業員の間に、実態に対する認識のギャップが発生してしまうことも否定できません。従業員が抱える問題に気付けなかった結果、組織全体の生産性やエンゲージメントの低下、ひいては退職者の増加に伴う雇用ブランドの棄損など、企業経営に関わる重大なリスクを生じさせる恐れもあります。
このような事態に陥ることなく、新たな時代に適合したワークスタイルを確立していくためには、従業員の現状をタイムリーに可視化し、適切に把握することが有効な手段の一つであると私たちは考えています。
本レポートでは、2020年5月から6月にかけて、リモートワークによる働き方の変化を明らかにするためPwC内で約600名を対象に実施した前述のグループ内調査と、その前後の組織内コミュニケーションの変化を明らかにするためのネットワーク分析の結果を参考にしながら、ワークスタイルの変化が引き起こす問題について考察するとともに、それらの問題を解決してウィズコロナ/アフターコロナにおける新たなワークスタイル確立を実現するためのキーアクションを紹介します。
COVID-19により激変した働き方が、収束後に従前に戻ることは、もはや考えづらいでしょう。前述してきた課題の芽を早期に摘み、ウィズコロナ/アフターコロナの世界で従来どおりまたは従来以上の生産性やエンゲージメントを担保していくために、私たちにはどのようなアクションが求められるのでしょうか。一言で表せば、それはニューノーマルの時代における新たな働き方のモデル「New ways of work」を早期に構築することです。以下は、私たちが考えるNew ways of work構築のための4つの重要な検討事項(key tips)です。
もちろん、図表8に記す全てのポイントを一度に推進し、最適なワークスタイルを確立することは難しいでしょう。しかし重要なことは、4つのKey tipsを踏まえ、まずは自社の現状の課題を認識すること、そして課題に対して早期に解決のためのアクションを遂行していくことです。新たな働き方を取り入れたことで生じた非効率性やリスクを最少化し、従業員のエンゲージメントや組織としてのパフォーマンスを向上させていく⸺。こうした地道なアクションの積み重ねによってNew ways of workを確立することこそが、企業に大きな価値を生み出すと私たちは考えています。
ここからは4つのKey tipsに沿って、具体的なアクション案を含むアプローチのヒントをお伝えしていきます。
私たちは今、時代の転換点に立たされています。企業活動においても、ワークスタイルの転換をはじめさまざまな変革を余儀なくされていることには疑いの余地がありません。これまでの常識や価値観が覆されることは私たちにとって大きな脅威である一方、新たなワークスタイルを確立することは、ウィズコロナ/アフターコロナの時代を生き抜く重大なカギにもなり得ます。
PwCは本レポートで、Remote work Surveyやコミュニケーション・ネットワーク分析をもとにバーチャルな環境下における組織の課題を明らかにし、それらを克服するためのKey tipsを導出しました。ここに記した私たちが直面した課題と、それらに対して取り組んできたさまざまな取り組みは、多くの企業にも当てはまるものであり、また参考にもできる内容であろうと想定します。
COVID-19感染拡大をきっかけに多くの情報が奪われ、非透明化された今だからこそ、重要なのは情報を取り戻す努力をし、自社の状態や課題を適切に把握することにあります。こうした仕組みを早期に確立し、課題解決に向けてタイムリーにアクションできるか否か⸺。これが、新たな時代における最適なワークスタイル確立の成否を分けると私たちは考えています。
多くの企業が答えを求めて模索を続ける昨今、本レポートが一つでも多くのヒントとなることを願っています。
※1: PwC, 2020年2月.「 デジタルがもたらすのは希望か、脅威か―デジタル環境変化に関する意識調査」https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/is-digital-hope-or-threat2020.pdf
※2: PwC, 2020年6月.「 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応に関するCFOパルスサーベイ日本分析版‐2020年6月15日」https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2020/assets/pdf/pwc-covid-19-cfo-pulse-survey03.pdf
※3: PwC, 2021年2月.「 PwC Japan、ニューノーマル時代の新しい働き方を実現するオフィスを大手町に開設」https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/otemachi-one210205.html