行動8-10:移転価格税制と価値創造の一致

概要

行動8(無形資産)は、親子会社間等で、特許等の無形資産を移転することで生じるBEPSを防止するルールを策定する(移転価格ガイドラインの改訂)とともに、価格付けが困難な無形資産の移転に関する特別なルールを策定することを目的とした取組みです。

行動8に関する議論については、2014年9月16日に第一次提言が公表されました。その後、追加の検討事項について、下記のディスカッションドラフトが公表され、パブリックコメントおよびパブリックコンサルテーションが行われました。

  • 2015年4月29日: 費用分担取極(CCA)
  • 2015年6月4日: 評価困難な無形資産

さらに、行動8、行動9(リスクと資本)および行動10(高リスクの取引)に関する議論として、2014年12月19日に「リスク、再構築および特別措置に関するOECD移転価格ガイドラインに係るディスカッションドラフトが公表され、パブリックコメントおよびパブリックコンサルテーションが行われました。

最終報告書は、行動8ないし行動10とあわせて1つの報告書として取りまとめられ、2015年10月5日に公表されました。

最終報告書のなかで、行動8に関連する部分の概要は以下のとおりです。

  1. 無形資産
    • 無形資産の定義の明確化: 無形資産について、「有形資産または金融資産でないもので、商業活動における使用目的で所有または管理することができ、比較可能な独立当事者間の取引ではその使用または移転に際して対価が支払われるような資産」と定義
    • 無形資産の開発・改良・維持・保護・利用に関する機能・資産・リスクの検討
    • 無形資産の移転および使用に関する利益の価値創造に沿った配分
    • 評価困難な無形資産(Hard-To-Value Intangible)に関する移転価格ルールの策定(所得相応性基準の適用)
  2. 費用分担取極(Cost Contribution Arrangement: CCA)
    • 無形資産・有形資産の開発のための「開発CCAs」と役務を取得するための「サービスCCAs」
    • 関連者の機能に大きな重点を置き、各参加者の貢献を費用ではなく価値で判断
    • 第1章の改訂で述べられているリスクの管理の議論を反映
    • CCAsの参加者の決定は参加者が行いえるリスク負担に対する取り組み(Risk-bearing opportunity)を考慮
    • 参加者は、リスクを管理する能力と権限を有するものとする
    • 参加者は、CCAsから利益を得るという合理的な期待を有する者
    • バイイン支払、バイアウト支払、バランスペイメント(調整的支払)は独立企業間価格で実施
    • 文書化内容のリスト

我が国では、令和元年度税制改正において、行動8-10の最終報告書の内容およびそれらを反映したOECD移転価格ガイドラインの規定等を踏まえ、独立企業間価格の算定方法としてDCF法を加えるとともに、評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置(所得相応性基準)が導入されています。

OECDより公表された報告書等

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OECDディスカッションドラフトに対するPwCのコメント