システム導入で業務効率を上げるためのポイント―PwCあらたの業務依頼/管理システム開発の事例

2021-04-26

PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。

ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。


自社開発とパッケージシステムの併用により、法人課題を解決

他と同様、監査法人においても業務効率化の要の一つはシステムにあると筆者は考えています。実際に、ネットワークでつながった電子調書作成・管理システム(Aura)、被監査会社のデータの授受・加工のための安全なストレージシステム(ConnectExtractData Platform)などPwCグローバルネットワークのメンバーファームが協働で開発したシステムにより、監査業務は飛躍的に効率化しています。

PwCあらたは上記のシステムを使用していますが、これとは別に、監査業務のプロセスを標準化してテクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)への業務依頼を効果的に行うようにしたい、という課題を法人内で抱えていました。

TCCへの業務依頼は従来のシステム、管理はスプレッドシートベースのシステムによって行われていました。しかし、導入当初は効果的に動作していた他のシステムとの連携も、連携先のシステム変更により、十分に機能しなくなりつつありました。こうした問題を解決するために、新システムを導入することにしたのです。業務プロセスの標準化はデジタルトランスフォーメーション(DX)の手法としてよく行われますが、これだけでは上手く機能しないため、システムの導入とセットで行われます。

今回の業務依頼システムの構築では、1.業務依頼、2.業務管理という2つの切り口で導入するシステムの要件を検討しました。業務依頼はフォームを使用することにしました。業務依頼する上で必要な情報を入力することで、TCCはそれらを一元的に把握することができます。業務管理においては、一つ一つの依頼の中で発生する業務を「チケット」と呼ばれる単位に分割し、リソースを確認しつつ、適切に遂行する能力を有するメンバーにアサインできるようにすることを目標としました。

一般的にシステムをスクラッチ開発する場合、システム自体を柔軟に構築することができますが、開発に時間がかかり、費用も高くなる傾向があります。パッケージシステムを導入する場合、システム自体の柔軟性は低くなりますが、比較的短い時間で導入でき、かつ費用も低く抑えることができます。柔軟性を取るべきか、導入までの時間と費用を重視するべきか。私たちは業務依頼については法人内で開発し、業務管理については既存のパッケージシステムをカスタマイズすることにしました。

図1 システムの種類と改良のプロセス

業務依頼の開発過程(自社開発)

新システムを開発する上で最も心掛けたのは、ユーザーが業務依頼をストレスなくフォームに記入できることでした。業務プロセスを標準化するのは重要ですが、記載の仕方に細かなルールがあり、記載すべき内容が大量になるようでは、ユーザーが依頼そのものを億劫に感じてしまうからです。そのため、すでに導入済みの他のシステム(被監査会社の情報管理システムや人事情報管理システムなど)と素早く連携し、必要情報が自動で入力されるような仕組みがあると利便性が高そうです。

さらに他のシステムの仕様に変更が生じた際に迅速かつ柔軟にシステムを変更できるよう、アジャイルな開発手法を採用しました。

業務管理の開発過程(パッケージシステム)

業務遂行を支援するためには、ワークフロー部分と、人的リソースを管理する部分が必要になりました。すでにTCCはリソースを管理するシステムを導入していました。そのため、今回の業務管理システムとリソース管理システムを連携することにしました。連携箇所は限られており、かつ多くの企業が直面する一般的な課題であったため、連携機能を装備したパッケージシステムを導入することにしました。パッケージシステムの特徴である、提供会社によるサポートを得られること、導入コストを下げることを実際に体感することができました。

システム自体がシステムを改善する

こうして導入した業務依頼と業務管理の2つのシステムが、私たちに新たな学びをもたらしてくれました。それは、システムとは使いながら改善していくものである、との発想です。業務の標準化を形にできたものの、改善すべきポイントが浮き彫りになりました。そこで、自社開発したシステムの仕様を柔軟に変更していくのです。これにより、より最適な業務プロセスをスピーディに適用することが可能になりました。システムの使用により見つかった改善点をつぶさに修正することで、オペレーションを改善していく――。いわばシステムがシステムをよりよいものにしていくのです。

変更が多い部分を自社で構築してその後生じる変化に的確に対応できるようにし、変化が少ない部分を比較的安価であるパッケージシステムで賄う。システム導入にあたっては、準備段階での十分な計画と、導入後の運用体制の構築が欠かせません。それらがあれば、業種を問わずシステムによる業務の見直しやオペレーションの改善といった、システムリプレイスのメリットを十分に享受できると、筆者は実感しています。

図2 システム開発側とユーザーのやり取り
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主要メンバー

久保田 正崇

代表, PwC Japanグループ

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小宮 和寛

マネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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