DXのナレッジを蓄積・共有し、テクノロジーの導入・保守を効率的に行う「自動化ツール開発支援チーム」

2022-06-14

近年のデジタル化の急速な進展に伴い、監査手続に利用するデータ量も急増しています。PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)では、「トップダウンとボトムアップの両方からDX推進を実現する意味とは」でご紹介したとおり、トップダウン型の変革を進めるだけでなく、全職員を対象とする2日半のデジタル研修を実施するなど、職員全体のデジタルリテラシー向上のための取り組みを継続的に行い、ボトムアップ型の変革も促しています。監査は通常5~10人単位のプロジェクトチームで実施しますが、ボトムアップ型の変革で課題となるのは、各人がそれぞれの監査チームでテクノロジーによる自動化を進めるだけでは局所的なデジタル化の範疇を越えず、業務効率化の効果を十分に得られないということです。

そこで、社内に散在するナレッジを蓄積・共有するために「自動化ツール開発支援チーム」を立ち上げ、テクノロジーの導入・保守を効率的に行うことになりました。

DXに向けた4つの課題

DXを進める際の課題として、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。職員のITへの理解、専門人財、IT投資、デジタル化のための時間の不足、既存システムのブラックボックス化など、さまざまな問題が思い浮かぶのではないでしょうか。

PwCあらたでは、以下の課題が生じました。

  1. 監査現場と自動化ツール開発支援チームの間でDXに対する認識に違いがあった
  2. 自動化ツール開発支援チームのメンバーが監査業務を理解することが難しかった
  3. 監査チーム側にDXのニーズはあるものの、何から始めていいか分からなかった
  4. 監査チーム側の通常業務が忙しく、DXのための時間が確保できなかった

これらの課題の根底には、監査業務を行っている現場と自動化ツール開発支援チームの間で業務の実態やテクノロジー導入の効果についての理解度に差があり、相互理解が困難であったという状況がありました。そのため、自動化ツール開発支援チームにとっては実務への理解をいかに深めるかが重要な課題となりました。

実務を理解した上で、テクノロジーを導入できる業務を検討し、どのように実現していくのか順を追って考えていくことの大切さを紹介します。

DXを強く推し進めるためのPwCあらたの取り組み

取り組み1:DXについての継続的なメッセージ発信

課題1に対する施策として、経営トップから強いメッセージを出すということが考えられます。PwCあらたではDXについて現場の理解を促し、デジタル人材を育成するために、2019年より全てのパートナーと職員に対してデジタル研修の受講を毎年課しています。

また、全社会議を開催する度に、次世代監査のためにDXが必要であることを経営陣が自ら説明し、DXを全社的に推進するための雰囲気を醸成しています。

取り組み2:監査業務で得た知見を自動化ツール開発に還元する

課題2に対しては、自動化ツール開発支援チームのメンバーが監査チームのメンバーとしても業務を行うことで好循環を作っています。自動化ツール開発支援チームのメンバーはツールの開発支援のみに従事しているわけではなく、監査繁忙期には監査業務にも従事しています。監査業務に関わることで現場の業務への理解が深まり、効率化すべき点、テクノロジーを活用すべき点が見えてきます。

また、自動化ツール開発支援チームのメンバーの出身業界はさまざまであり、得意分野もそれぞれ異なります。これらのメンバーが協働していくには難しい面も多々ありますが、開発事例をメンバー間で共有し、技術者としてお互いをリスペクトし合い、意見を尊重することで、チームとしての技術力を日々高めています。

取り組み3:監査チームに寄り添う支援

課題3に対する施策として、各監査チームに直接ヒアリングをすることで、ツール開発を提案・支援しています。監査チームの状況や課題を正しく理解し、その課題を解決する自動化ツールを開発するためには、監査業務の理解が必須となります。前述のとおり、自動化ツール開発支援チームのメンバーは監査業務も兼務しているため、課題の理解が早いことを強みとしています。監査チームが気付けなかった改善点を発見し、新たな業務効率化につなげられています。

また、この活動ではヒアリングだけでなく、監査チームが編集したデータ分析ツールのレビューも行っています。レビューを行い、改善のためのアドバイスをすることで、監査チームがデータ分析ツールを扱う技術力を高めることにも貢献しています。

取り組み4:自動化ツール開発窓口の常設化

DXを推進していく中で、監査チームは通常業務が忙しくDXのための時間が確保できないという問題を抱えていました。そこで、自動化ツール開発支援チームは監査業務の一部でも自動化できるように、各監査チームから寄せられる依頼に基づいて、デジタルツールを開発する取り組みを始めました。また、自動化ツール開発支援チーム内で開発の手順を標準化することでツール作成のノウハウが蓄積されてきています。これにより、自動化ツール開発支援チームの技術力は飛躍的に向上し、高度なDXの推進につながっています。

自動化ツール開発支援チームはデジタルツールを開発するだけでなく、ツールの仕様の詳細や使用方法をまとめたマニュアルを作成しており、システムのブラックボックス化を防ぎ、その後のツールの保守を容易にしています。

さらに、監査チームが気軽に開発依頼できるようにするために、過去の開発事例を紹介する社内サイトを立ち上げました。定期的に社内報で案内することや、業務効率化の効果が高かった開発事例を共有する社内セミナーも開催しています。

自動化ツール開発支援による現場の変化

自動化ツール開発支援の活動により、監査チームではデジタルツールの利用が拡大し、業務が効率化しました。これにより、今では顧客価値の創造につながる本質的な業務に注力できています。また、デジタルツールによる業務効率化の成功体験が広がっていくことで、現場におけるDXへの意識は一層高まり、より高度でチャレンジングなアイデアも生まれてきています。

監査の現場のDXへの意識の高まりに呼応するように、自動化ツール開発支援チームのメンバーもより高度な技術の習得にも取り組んでおり、個々のメンバーのスキルアップや、ナレッジの蓄積は加速度的に進んでいます。

ここまで自動化ツール開発支援の活動および実績をご紹介させていただきました。今後もこれまでの経験を活かしつつ、今まで以上の成果を残せるように挑戦し続けていきます。

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執筆者

長野 恵奈

シニアアソシエイト, PwCビジネスアシュアランス合同会社

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進藤 秋平

アソシエイト, PwCビジネスアシュアランス合同会社

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