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2021-02-17
PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。
※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。
デジタル活用を加速できるツールは揃っているのに、なかなか組織やチームでメンバーに使用してもらえない――。そんな悩みを抱えるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進メンバーは少なくないのではないでしょうか。今回は、PwCあらたのある監査チームが実際に行ったデータ加工の自動化の取り組みを取り上げ、ツールの活用をはじめDXを現場が一丸となって取り組むために必要なものは何かを考えます。
監査人は、被監査会社から会計データを受領した後、データを用途に応じて利用しやすいように加工してから監査手続を始めます。従来はこの作業を、主に表計算ソフトを用いて行っていました。しかし、加工手順が複雑な場合や仕訳データなどの膨大なデータを取り扱う場合、データ加工に多くの時間を要していました。
こうした背景から、PwCあらたは、監査人がより高度な判断を必要とする業務や被監査会社とのコミュニケーションに注力できる環境を整備するため、データ分析ツールをはじめデジタルツールを活用してデータ加工の自動化を進めています。
従来は半日かかっていたデータ加工をボタン一つで数分で行うことを可能とするのが、データ分析ツールです。データ分析ツールを導入すればデータ加工にかかっていた時間を大幅に削減できますが、同ツールを導入するためには、定型的なデータ加工を行っている業務を洗い出し、業務フローを整理した上で、ツールを用いてワークフローを構築する必要があります。筆者の監査チームのように定型的なデータ加工に年間で数百時間を要している場合、その全てを自動化するためにはチームメンバー全員の協力が欠かせません。そこで、全てのチームメンバーがデータ分析ツールを活用して監査業務を行うようになるためには何が必要か、自分なりに考えて働きかけてみることにしました。
まずデータ分析ツールの効果を認識してもらう必要があると考え、監査手続を実施する上で必要な仕訳データや売上高明細などのデータ加工をいくつか自動化し、チームミーティングで披露しました。このようなミーティングを繰り返し行うことで、データ分析ツールを活用することに意欲的なチームメンバーが出てくるようになり、ついには「データ分析ツールを使ってみたいけれど、難しいから使い方を教えてほしい」という声が多く挙がるようになりました。
チームメンバーからの声に応えるべく、マネージャーの協力を得てデータ分析ツールの操作方法を学ぶ勉強会を独自に開催しました。勉強会では、表計算ソフト以外のデータ加工ツールを使ったことがない人が最短でデータ分析ツールを使いこなせるようになることを目的に、表計算ソフトユーザーがつまずきやすいポイントに絞って解説を行いました。また、デジタルツールは自分で操作してみないと理解が深まらず定着しないため、研修の6割程度の時間を演習に当てました。
勉強会を行って実感したことは、新しい取り組みをチームや組織に根付かせることは容易ではないということです。チームメンバーの多くは通常の監査業務が忙しく、ツールの活用は後回しになっていました。そこで効果を発揮したのがマネージャーによる率先垂範です。マネージャーが自らツールを活用する姿を繰り返しチームに示すことで、チームメンバーにも前向きに取り組もうという空気が少しずつ生まれました。またチームメンバーが後回しにせずツールの導入を進められるよう、マネージャーがデータ加工の自動化を実現する期限を決め、ワークフローを構築する時間を確保することで、チームメンバー全員でデータ加工の自動化に取り組むことができました。最終的には、表計算ソフトを用いて作業をしたら数週間はかかるであろう量のデータ加工を2時間ほどで自動的に行うことができるようになり、より多くの時間を高度な判断を要する業務にかけられるようになりました。
現場が一丸となってDXに取り組むためには、デジタルツールを前提とした業務の見直しや現場スタッフの意識改革はもちろんのこと、DXを推進する現場スタッフの想いや活動をサポートする管理職の存在も重要となります。
振り返ると、現場スタッフの中にも業務を効率化することに対する意識に温度差がありました。ツールを積極的に活用する現場スタッフが手本を見せ、活用方法を説明するだけでは、ツールについて学ぶ意欲を掻き立てることはできても、実務で積極的に活用するまでには至りませんでした。チーム全体で業務を効率化する機運を高めていくにあたり、管理職自身もツールを活用するなどDXに積極的に取り組む姿勢を現場スタッフに示したり、得手不得手関係なく全ての現場スタッフに業務としてツールを活用した効率化の施策を検討する時間を確保したりするといった管理職のサポートは、チームの意識改革に大きな影響を及ぼしたように思います。当初は苦手意識のあった現場スタッフも、今では別の監査チームでも率先してツールを活用した業務の効率化を進めるようになり、DXの取り組みは徐々に浸透しつつあります。
PwCあらたのDXの取り組みはまだまだ続きます。これからも継続的に推進していくために、好循環を促せる組織体制を、皆でさらに作り上げていきたいと思います。