
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の発足 ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2025年3月)
2024年9月23日に発足した、不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures:TISFD)の概要について説明します。
PwC弁護士法人のコーポレート・プラクティスニュースレターでは、企業において日々生起する法的な課題の解決に有益と思われるトピックを取り上げて、情報を発信して参ります。
今回は、以下の3つのトピックを紹介します。
トピック1:四半期開示制度の見直しに係る金商法改正案
トピック2:景品表示法検討会の報告書及び景品表示法改正案の概要
トピック3:企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正(サステナビリティ及びコーポレートガバナンスに関する開示)の概要
金融庁は、2023年3月14日付で、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」1(以下「本改正案」といいます。)を国会に提出しました。
本改正案は、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(以下「本WG」といいます。)が2022年6月及び2022年12月に公表した「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告」2(以下「本報告書」といいます。)において、金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に「一本化」することが適切と考えられる旨の方向性及びその具体化のための各論点が示されたことを踏まえて、上場会社の期中の業績等の開示について、四半期報告書制度を廃止し、代わりに半期報告書の提出を義務付けるための金融商品取引法の改正等を行うものです。
以下では、①本報告書で示された四半期開示制度の方向性について概観するとともに、②今回の改正案の内容を解説します。
四半期報告書とは、金融商品取引法に基づき、その事業年度が3カ月を超える上場会社等が、事業年度の期間を3カ月ごとに区分した期間ごとに、当該会社の属する企業集団の経理の状況等を記載して内閣総理大臣に提出する報告書です3。上場会社は、四半期報告書加えて、取引所規則により、事業年度若しくは四半期累計期間又は連結会計年度若しくは四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、直ちにその内容を開示すること(決算短信)が義務付けられています4。
四半期報告書は、取引所規則に基づく決算短信の導入後、会計・監査の基準の統一や虚偽記載に対して法的責任を問う必要を踏まえ、金融商品取引法に基づき導入されたものですが、これらの四半期開示は、かねてより内容面での重複や開示のタイミングの近接が指摘されていました。
本報告書においては、このような状況を踏まえ、コスト削減や開示の効率化を図るため、両者を「一本化」する旨の提言がなされています。その上で、両者を一本化するに際しては、四半期決算短信は開示のタイミングがより早く、かつ投資家に広く利用されていることから、金融商品取引法に基づく四半期報告書制度を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に統合することが望ましい旨の方向性が示されております。
さらに、本報告書においては、四半期報告書制度を廃止し、四半期決算短信への一本化を進めるに当たって検討が必要となる以下の論点について、以下のような考え方が示されています。
四半期決算短信の任意化及び適時開示の充実
四半期開示は、中長期の経営戦略の進捗状況を確認する上で有用と考えられているものの、企業に多大な事務負担を課すものであり、一方で積極的な適時開示により充実した情報開示が行われる環境が整えば、必ずしも一律に四半期開示を求める必要はないとも考えられることから、四半期決算短信の任意化が検討されました。しかしながら、各企業において必ずしも充実した適時開示が行われているとは言えない状況を踏まえ、四半期決算短信の任意化が開示の後退と受け取られることで日本市場全体の評価が低下する懸念があること等に鑑みて、当面は、四半期決算短信を一律に義務付けることが考えられるとされております。
四半期決算短信の開示内容の充実
四半期決算短信は、その後に四半期報告書が開示されることを前提に、速報性を重視して開示内容が簡素化されているため、四半期報告書制度の廃止に伴い開示内容を追加することが考えられる旨、情報追加に伴って四半期決算短信の開示タイミングが遅れるとしても、現状の四半期報告書と同じ四半期会計期間後45日以内であれば、速報性の確保という観点からも許容可能と考えられる旨の意見が示されております。これらの意見を踏まえ、四半期報告書制度の廃止が情報開示の後退と受け取られないようにするため、速報性を確保しつつ、投資家の要望が特に強い、セグメント情報、キャッシュ・フローの情報その他の事項について、四半期決算短信の開示内容を追加する方向で、取引所において具体的に検討を進めることが提言されております。
四半期決算短信に対する監査人によるレビュー
四半期決算短信においては、速報性を確保する必要がある一方で、監査等により確定した決算の内容が法定開示として後から開示されることにより客観性が担保されることから、四半期報告書と異なり、四半期レビューが求められておりません。
四半期報告書の廃止に伴い、四半期決算短信についても、財務情報の信頼性の確保等の観点から、監査人によるレビューを義務付けることも考えられるものの、その速報性を確保する必要があること、半期報告書と通期の有価証券報告書に対して監査人による監査等を行うことで財務情報の信頼性を確保可能と考えられることから、監査人によるレビューを一律には義務付けないこと(ただし、各企業の判断により任意で監査人のレビューを受けることは妨げず、また、投資家への情報開示の観点からレビューの有無を四半期決算短信に開示すること)が提言されております。
加えて、会計不正が起こった場合等において、取引所規則により一定期間、監査人によるレビューを義務付けることについて、具体的に検討を進めることが期待される旨が示されております。
四半期決算短信の虚偽記載に対するエンフォースメント
第1・第3四半期に係る四半期報告書廃止後の半期報告書及び有価証券報告書において法令上のエンフォースメントが維持されることから、四半期決算短信の虚偽記載を直ちに民刑事の責任や課徴金などの対象とすることは不要であり、四半期決算短信の虚偽記載に対しては、まず取引所において、エンフォースメントをより適切に実施していくべき旨が提言されております。
半期報告書及び中間監査のあり方
上場企業の半期報告書については、原則として、現行の第2四半期に係る四半期報告書と同程度の記載内容と監査人のレビューを求め、提出期限を決算後45日以内とすることが提言されております。
本報告書における以上の提言を踏まえ、企業開示の効率化の観点から、本改正案において、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止することとされております。
具体的には、以下の対応が実施される予定です。
(1)第1四半期及び第3四半期に係る四半期報告書の廃止
上場会社の第1四半期及び第3四半期については、金融商品取引法上の四半期報告書を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化すること(なお、前記のとおり、本報告書において、将来的な四半期決算短信の任意化については継続的に検討していくこととされたことを踏まえ、当面は、四半期決算短信を一律義務付け、今後、適時開示の充実の状況等を見ながら、任意化について継続的に検討するものとされております。)
(2)半期報告書提出の義務付け(第2四半期に係る四半期報告書の半期報告書への統合)
四半期報告書の廃止に伴い、上場会社には半期報告書の提出が義務付けられることとなりますが、見直し後の半期報告書については、現行の第2四半期報告書の取扱いを踏襲し、以下のとおりとすること
(3)半期報告書及び臨時報告書の公衆縦覧期間の延長
四半期報告書の廃止に伴い、半期報告書及び臨時報告書は、開示情報としての重要性が高まることから、公衆縦覧期間(半期報告書は3年間、臨時報告書は1年間7)を、それぞれ課徴金の除斥期間である5年間8に延長すること
現行制度と見直し案の差異は、以下の図のとおりとなります。
これらの改正に係る施行期日は、2024年4月1日(以下「本施行日」といいます。)とされております。なお、本施行日前に開始した四半期に係る四半期報告書の提出については、なお従前の例によること、半期報告書に係る改正後の金融商品取引法第24条の5の規定は、本施行日以後に開始する事業年度に係る半期報告書について適用すること等の経過措置が規定されております。
以上のとおり、本改正案が成立した場合、本施行日以降、従来の金融商品取引法に基づく四半期報告書制度は廃止されることとなります。一方で、四半期決算短信に関する本報告書の提言内容(四半期決算短信の任意化及び適時開示の充実、四半期決算短信の開示内容の充実、四半期決算短信に対する監査人によるレビュー)については、引き続き検討状況及び今後の具体化の内容を注視する必要があります。
2023年2月28日、不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案(第211回国会閣法第27号。以下「景品表示法改正案」といいます。)が閣議決定の上、国会に提出されました。この景品表示法改正案は、現在開会中の第211回国会において審議される予定となっており9、今国会で成立すれば、原則として公布の日から1年半を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)については、2014年に成立した改正法の施行から5年が経過したこと及びデジタル化の進展等の景品表示法を取り巻く社会環境の変化等により、見直しが求められていたため、2022年3月から消費者庁に設置された景品表示法検討会において議論が行われてきました。そして、2023年1月13日に景品表示法検討会による報告書(以下「報告書」といいます。)が公表され、景品表示法等の改正の必要性が提言されました10。
報告書において早期に対応すべき課題とされた事項を踏まえて立案された景品表示法改正案11は、事業者の自主的な取組の促進及び厳正・円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等を講ずることを主な改正事項としています。以下では、景品表示法改正案の概要について、報告書において指摘された事項と対照しながら簡潔に説明します12。
景品表示法改正案では、事業者の自主的な取組を促進するため、(1)確約手続の導入及び(2)課徴金制度における返金措置の弾力化のための規定を整備しています。
(1)確約手続の導入
2016年4月に課徴金制度が導入されて以来、景品表示法違反事件の端緒件数が増える傾向にある一方で、事件調査が長期化していることもあり、措置件数を増加させることができていないという景品表示法の運用状況等が問題視されてきました。報告書においては、措置命令又は課徴金納付命令だけでなく、事業者の自主的な取組の促進も通じて不当表示事案の早期の是正に取り組んでいく必要があるとの指摘がされ、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決するための手続である独占禁止法上の確約手続を参照した「確約手続」を景品表示法に設けることが提言されました(報告書第2の1(1))。
そこで、景品表示法改正案では、「確約手続」を導入する下記改正を行っています。
(2)課徴金制度における返金措置の弾力化
不当表示によって一般消費者に生じた被害の回復を促進するため、事業者が所定の手続に沿って返金措置を実施した場合には、課徴金額を減額又は課徴金の納付を命じないことが現行景品表示法に定められています。しかし、この返金措置は導入以後、活発に利用されているとは言えないことから、事業者の利用が促進されるよう返金措置の仕組みを改善する必要があることが報告書において指摘されております(報告書第2の1(2))。
そこで、景品表示法改正案では、下記改正を行っています。
景品表示法改正案においては、厳正・円滑な法執行の実現に向け、(1)課徴金制度の見直し、(2)罰則規定の拡充、(3)国際化の進展への対応の各規定の整備を行っています。
(1)課徴金制度の見直し
優良誤認表示・有利誤認表示を行った事業者に対しては課徴金の計算の基礎となるべき事実の調査が行われます。これまでの事案では、課徴金調査に対し、適切に売上額を報告できない事業者が存在していたことから、このような事業者の場合にも迅速に課徴金納付命令を行えるよう、課徴金対象行為に係る売上額を合理的な方法により推計できるようにする必要があることが報告書において指摘されております(報告書第2の1(3))。また、繰り返し景品表示法違反行為を行う事業者に対しては現行の制度では十分な抑止力が働いているとはいい難いことから、抑止力を強化する必要があると指摘もされております(報告書第2の1(3))。
そこで、景品表示法改正案では、課徴金制度の見直しとして、下記改正を行っています。
(2)罰則規定の拡充
優良誤認表示・有利誤認表示の事例の中には、表示内容について何ら根拠を有していないことを認識したまま表示を行うなど、表示と実際に乖離があることを認識しつつ、これを認容して違反行為を行うような悪質な事業者が存在します。このような悪質な事業者に対しては、行政処分にとどまらず、刑事罰による抑止の対象とする必要があると報告書において指摘されていました(報告書第2の1(4))。
そこで、景品表示法改正案では、罰則規定の拡充として、下記改正を行っています。
(3)国際化の進展への対応
現行景品表示法においては、措置命令については送達規定が整備されていないため、仮に措置命令の対象となる外国事業者が国内に支店を有しておらず、我が国での代理人の選任もしない場合には、当該外国事業者に対し有効に措置命令を行うことが困難となる状況が想定されていました(報告書第2の1(5))。
そこで、景品表示法改正案では、国際化の進展に対応するため、下記改正を行っています。
上記のほか、景品表示法改正案では、適格消費者団体による開示要請規定の導入等も改正事項としています。景品表示法改正案の改正事項は、実務に与える影響が大きいと考えられるため、引き続き景品表示法に係る国会審議の状況を注視して参ります。
2023年1月31日、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年内閣府令第11号)が公布、施行されました13。本改正には、企業のサステナビリティに関する取組みやコーポレートガバナンスに関する開示の拡充を図る重要な改正が含まれており、2023年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用されます。以下では、これらの改正について、パブリックコメントに対する金融庁の考え方なども踏まえて説明します。
2022年6月13日に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告14(以下「DWG報告」といいます。)において、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」、「コーポレートガバナンスに関する開示」などに関して、制度整備を行うべきとの提言がなされました。本改正は、DWGにおける提言を踏まえ、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」といいます。)の記載事項について、サステナビリティに関する企業の取組み等に関する記載欄を設けるなどの改正を行うものです。また、本改正による開示府令の改正と併せて、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」(以下「開示ガイドライン」といいます。)についても、所要の改正(以下「本開示ガイドライン改正」といいます。)が行われています15。
本改正では、有価証券報告書等の「企業情報」の「事業の状況」の項目中に、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄(以下「サステナビリティ記載欄」といいます。)が新設されました。サステナビリティ記載欄においては、各企業におけるサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況について、国際的なフレームワークと整合的な形で、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4つの構成要素に基づく開示が求められます16。
サステナビリティ記載欄においては、具体的には、以下の事項の記載が求められます。
a ガバナンス(サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続)及びリスク管理(サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程)について
b 戦略(短期、中期及び長期にわたり連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組)並びに指標及び目標(サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する連結会社の実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる情報)のうち、のうち、重要なものについて
c 上記(b)にかかわらず、人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標において、それぞれ、以下の事項
(a)戦略:人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針(例えば、人材の採用及び維持並びに従業員の安全及び健康に関する方針等)
(b)指標及び目標:人的資本に関し(a)で記載した方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
上記のとおり、aについては、一律に記載が求められる一方、bについては、cによりすべての提出会社において記載が求められる事項に該当しない限り、その重要性を踏まえて記載を行うか否かを判断することになります。サステナビリティ記載欄について、本改正では、「ガバナンス」、「リスク管理」、「戦略」、「指標及び目標」の4つの構成要素に基づく開示が必要とされていますが、それぞれについての具体的な記載事項や記載の方法について、詳細には規定されておらず、各企業の取組状況に応じて、それぞれの企業において具体的な記載事項を検討することになると考えられます17。
本改正により、提出会社やその連結子会社が女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「女性活躍推進法」といいます。)及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」といいます。)(以下、これらを総称して「女性活躍推進法等」といいます。)に基づき、女性管理職比率、男性の育児休業取得率及び男女間賃金差異(以下「女性管理職比率等」といいます。)を公表する場合には、公表するこれらの指標について、有価証券報告書等の「従業員の状況」において記載が求められることとなりました。これは、女性活躍推進法等に基づき公表しなければならない女性管理職比率等を有価証券報告書等においても開示対象とするものです。そのため、女性活躍推進法等に基づく公表義務(努力義務は含みません。)のない企業については、その記載を省略できるとされています18。
現時点においては、これらの情報は個社のものを開示すれば足り、連結ベースでの開示は求められていません19。もっとも、「DWG報告にて提言されたように投資家の投資判断にとって有用である連結ベースでの開示に努めるべきである」(パブコメ回答13番から17番まで)とされており、「記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示について―」20(以下「開示原則(別添)」といいます。)において、連結グループにおける会社ごとの指標の記載に加えて、「連結ベースでの開示に努めるべきである」旨が明記されています。
なお、女性管理職比率等の記載に当たっては、当該記載事項に加えて、投資家が適切に指標を理解できるようにするために、任意の追加的な情報を追記できることが明確化されました(本開示ガイドライン改正後の開示ガイドライン5-16-3)。
本開示ガイドライン改正により、有価証券報告書等の様式中「企業情報」の「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」から「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」までの将来に関する事項(以下「将来情報」といいます。)で有価証券報告書等に記載すべき重要な事項について、以下の事項が明確化されました(本開示ガイドライン改正後の開示ガイドライン5-16-2)。
本改正によるサステナビリティ記載欄の創設に併せて、開示ガイドラインにおいて、「サステナビリティに関する考え方や取組」や「コーポレート・ガバナンスの概要」の記載に当たって、以下の事項が明確化されています(本開示ガイドライン改正後の開示ガイドライン5-16-4)。
本改正では、サステナビリティ関連の開示項目の創設に加え、コーポレートガバナンスに関する開示の拡充も図られました。具体的には、以下の3点について、開示事項が追加されています。
まず、有価証券報告書等の「コーポレート・ガバナンスの概要」において、「取締役会、指名委員会等設置会社における指名委員会及び報酬委員会並びに企業統治に関して提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するものの活動状況(開催頻度、具体的な検討内容、個々の取締役又は委員の出席状況等)を記載すること」が求められることとなりました。
また、有価証券報告書等の「監査の状況」において、内部監査の状況等の開示の一環として、デュアルレポーティングライン(内部監査部門が代表取締役のみならず、取締役会並びに監査役及び監査役会に対しても直接報告を行う仕組み)の有無を含む内部監査の実効性を確保するための取組の開示が求められることとなりました。
更に、有価証券報告書等の「株式の保有状況」において、政策保有株式の「保有目的が提出会社と当該株式の発行者との間の営業上の取引、業務上の提携その他これらに類する事項を目的とするものである場合には、当該事項の概要」について開示が求められることとなりました。
本改正は、2023年1月31日に公布、施行されています。また、本開示ガイドライン改正は、同日より適用されています。なお、改正後の開示府令の規定は、2023年3月31日以後に終了する事業年度を最近事業年度とする有価証券届出書及び当該事業年度に係る有価証券報告書から適用されます。ただし、施行日以後に提出される有価証券報告書等については、早期適用が可能です。
2023年1月31日、投資家と企業との建設的な対話に資する充実した企業情報の開示を促すため、「記述情報の開示の好事例集2022」(サステナビリティ情報等に関する開示)21が公表され、2023年3月24日には、同好事例集が更新されています22。2023年1月31日付で公布、施行された本改正により、上記のとおり、2023年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から、新たにサステナビリティに関する企業の取組みの開示が求められることとなりますが、その具体的な記述は、それぞれの企業が工夫して記載することが求められるものです。好事例集においては、その開示に関する取組みの参考となる事例が掲載されています。
こちらの解説については、ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2023年4月)をご参照ください。
1 https://www.fsa.go.jp/common/diet/211/index.html
2 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220613/01.pdf
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20221227/01.pdf
3 金融商品取引法第24条の4の7
4 有価証券上場規程第404条
5 具体的には、事業年度が開始した日以後6カ月間の企業集団の経理の状況その他の事項として、内閣府令で定めることとされております。
6 金融システムの安定を図るためその業務の健全性を確保する必要がある事業として内閣府令で定める事業を行う会社については、60日以内
7 金融商品取引法第25条第1項第8号及び第10号
8 金融商品取引法第178条第11項
9 第211回国会は、2023年1月23日に召集され、延長がない限り、同年6月21日までの150日間を会期としています。景品表示法改正案は、第211回国会の閉会日までに審議される予定です。
10 景品表示法検討会「報告書」(令和5年1月13日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_004/
11 本レポートにおける景品表示法改正案の内容は、消費者庁作成の概要、要綱、法律案・理由、新旧対象条文及び参考条文に基づいて作成しています。各資料は、消費者庁ホームページの国会提出法案のページから入手が可能です。https://www.caa.go.jp/law/bills/
12 本レポートにおける景品表示法改正案の内容は、2023年2月28日に国会に提出された時点の法律案の内容であり、今後の国会審議の過程において法律案は修正される可能性があります。
13 以下、企業内容等の開示に関する内閣府令を「開示府令」といい、令和5年内閣府令第11号による開示府令の改正を「本改正」といいます。本改正の具体的な内容は、こちらをご参照ください。
14 こちらをご参照ください。
15 こちらをご参照ください。
16 4つの構成要素の定義については、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」といいます。)の公開草案が参考とされています(金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)』に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(2023年1月31日)(https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230131/01.pdf)(以下「パブコメ回答」といいます。)127番から134番まで。)。
17 それぞれの具体的な記載の方法について、パブコメ回答においては、「構成要素それぞれの項目立てをせずに、一体として記載することも考えられ」ること、「記載に当たっては、投資家が理解しやすいよう、4つの構成要素のどれについての記載なのかがわかるようにすることも有用だと考えられ」ること等が指摘されています(パブコメ回答83番から87番まで。)。
18 パブコメ回答36番から38番まで。
19 パブコメ回答43番から50番まで。
20 こちらをご参照ください。
21 こちらをご参照ください。
22 こちらをご参照ください。
※記事の詳細については、以下よりPDFをダウンロードしてご覧ください。
2024年9月23日に発足した、不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures:TISFD)の概要について説明します。
重要経済安保情報に関するセキュリティ・クリアランス制度の施行が目前に迫っています。運用基準の概要と適合事業者認定を受ける民間事業者に求められる対応の概要をご紹介します。
グループ内再編による繰越欠損金の引継ぎに係る納税者勝訴地裁判決(東京地判令和6年9月27日LEX/DB文献番号25621971)をご紹介します。
以下の4つのトピックをご紹介します。1.高年齢者雇用安定法の経過措置終了 2.東京都カスタマー・ハラスメント防止条例の概説 3.「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書」におけるバーチャルオンリー株主総会に係る検討の概要 4.「知的財産取引に関するガイドライン」及び「契約書ひな形」の改正