【変化するエネルギーアグリゲーションビジネス】 ―低圧アグリの現状と課題―

2025-03-31

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国内では普及拡大が進展する分散型エネルギー資源(DER)を活用したエネルギーアグリゲーションビジネスに関する取り組みが積極的に進められています。本稿では、その中でも低圧DERの活躍機会拡大に寄与すると期待される、低圧アグリの動向を紹介します。

低圧アグリの取り組み背景と概要

低圧顧客が有する家電やエネルギー機器をネットワーク化し、新サービスを開発していくことは長年検討がなされています。

国内では、2000年代から国家プロジェクト(eホーム、スマートハウス実証)などを通して、DERの活用に関する研究開発・実証が行われました。当時からさまざまなユースケースが提案され、DERそのものに加えてパワーコンディショナ(PCS)やエネルギーマネジメントシステム(EMS)といった関連する設備・ソフトウェアの技術開発・標準化も進められました。

現在、このように長く検討されてきたDERのビジネスは、DERの普及と制度・市場の整備により、実証からビジネスへ大きく転換期を迎えています。とりわけ、DERの活用拡大として、小規模なDERを活用するデマンドレスポンス(DR)と、DERをアグリゲートして市場に供出するビジネス「低圧アグリ」が注目されています。ここでいう低圧アグリは、ヒートポンプ式給湯器、家庭用蓄電池や電気自動車などといったDERの余力をアグリゲートしてマネタイズするビジネスで、2026年より市場開放される予定になっています。

しかしながら、小規模なDERをアグリゲーションしてマネタイズするには、いくつかの乗り越えるべき課題があります。

低圧アグリビジネスの課題

低圧アグリを実ビジネスにしていくには、制度面、通信技術面、運用/システム面、セキュリティ/プライバシー面で、乗り越えなければならない課題があります。

  1. 制度面
    市場取引のルール具体化は進んでいるものの、まだ検討中の論点もあります。また非常に難解・複雑であり、さらにはさまざまな変更が毎年生じます。それ故、事業者は制度動向を逐一ウォッチして、自社の運用/システムに修正を加えていく必要があります。
  2. 通信技術
    通信コストが高価であり、いかに通信コストを安価にできるかは重要な課題となります。また、DERをコントロールする通信プロトコルには国内規格だけでなく、海外規格も国内で存在感を強めており、どのような通信方法でリソースとつなげるかは安全面含めて品質を検証して進めていくことが必要となります。
  3. 運用/システム
    人間のみで、多数のDERを制御し続けることは不可能であり、需給予測・制御ロジックで自動化することが不可欠であり、賢いAIを開発・活用していくことがビジネス上の差別化領域となります。
  4. セキュリティ/プライバシー
    ネットワークでつながるDERを安心・安全に動かすためのセキュリティ確保、宅内機器から見えるプライバシー情報の管理にも対応していくことが求められます。

提言

今後、DERの普及・拡大で、需要家はエネルギー供給をするプロシューマーに変わっていくことがビジネスの前提となります。このような世界では、顧客を需要家(購買者)として捉えるのではなく、エネルギー供給者はビジネスパートナーとしてプロシューマーを集め、アグリゲートしてエネルギー供給を実現するコーディネーターに変わる必要があります。このことから、今回紹介した低圧アグリビジネスへの参入はエネルギー供給者にとって不可避な取り組みであり、エネルギーのトランスフォーマーとして参入の課題を乗り越えていくことを期待します。

支援実績の例

  • 低圧アグリを想定した事業・ITシステムの構想支援
  • アグリゲーションシステムの構想策定・要件定義支援
  • バッテリー(EV、定置用)に係る市場調査・事業構想
  • Behind The Meter領域における研究開発テーマの検討支援

さらにご興味のある方は、下記のサイトを是非ご覧ください。

  • 【グリーントランスフォーメーション(GX)ビジネス開発支援】詳細はこちら
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執筆者

竹内 大助

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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鈴木 啓

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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