対談風景 の写真

アカウンタビリティの発揮がサステナビリティガバナンス実践の条件
──グローバル メガトレンド フォーラム 2021より

企業が環境問題や社会課題に積極的に取り組むことが求められる時代が本格的に到来した。そのような変化は、コーポレートガバナンスコードおよびスチュワードシップコードの改訂にも反映されている。このセッションでは、サステナビリティの観点を経営戦略とガバナンスに取り込んだサステナビリティガバナンスのあり方について、味の素株式会社代表執行役社長の西井孝明氏、キリンホールディングス株式会社常務執行役員の溝内良輔氏、りそなアセットマネジメント株式会社執行役員責任投資部長の松原稔氏をパネリストとして迎え、PwC税理士法人代表の高島淳とともに意見を交わした。モデレーターはPwCあらた有限責任監査法人代表執行役の井野貴章が務めた。

「日本を環境立国に」~視聴者との質疑応答

質疑応答では「長期と短期の利益を考えなくてはならない事業会社を、機関投資家はどこまで許容できるのか」という質問を最初に取り上げた。

りそなアセットマネジメントの松原氏は、企業が、資本市場に存在する多様な立場の投資家との対話に苦心している状況に理解を示しつつ、企業からも同様の質問を受けることが多いとコメントし、次のように回答した。「事業会社にも機関投資家にも、これまで以上にアカウンタビリティとレスポンシビリティが求められています。経営者は収益に関しての判断理由とともに、サステナビリティ観点での重要性について積極的な説明をすることが重要になっているのです」(松原氏)

2つ目の「サステナビリティに対して懐疑的な意見も根強いことに対して、経営者としての考えを聞きたい」という質問には、キリンホールディングスの溝内氏が回答した。「気候変動の最前線にいる食品事業は、“炭鉱のカナリア”で、すでに苦しんでいます。自分とは関係のない問題ではなく、今直面している問題なのです。環境対策は、多面的かつ複合的な取り組みが必要で、日本の得意な調整力や擦り合わせ技術が生きる分野です。私は、日本が2030年には世界をリードできると思っており、自然と人間の営みの共存という日本の価値観で環境立国を目指していければ素晴らしいと考えています」(溝内氏)

続いて味の素の西井氏が、冒頭で語った気候変動のターニングポイントである2030年以降に起こるシナリオの意味を説いた。「世界中の農業が維持できなくなり、食資源が枯渇し、供給量が減少してくる。それがもう9年先に来るということです。TCFDのScope 1、2だけでなく、Scope 3のサプライチェーン全体での温室効果ガス排出まで削減していけるよう、海外の農業分野のサプライヤーと一緒に温暖化や土壌汚染などの問題などに取り組みながら、説明責任を果たす経営をしていくことが必要です。こうした取り組みを後押しするために、活動のネットワークを広げ、チームジャパンとして環境問題に取り組むことで、解決に向かっていけるのではないかと思っています」(西井氏)

最後に、PwCあらた有限責任監査法人の井野が、「多様なステークホルダーと一緒にチームとなることで、日本を環境立国に、そして世界の環境問題に貢献していけると信じることができました」と述べ、セッションを終了した。

西井 孝明 氏

西井 孝明 氏

味の素株式会社
代表執行役社長

1982年味の素入社。営業やマーケティング、人事などを担当。2004年に味の素冷凍食品に出向し、取締役に就任。家庭用冷凍食品の業績を改善。2009年には本社人事部長を務め、2011年に執行役員に就任。2013年、ブラジル味の素社長に就任。2015年より味の素取締役社長最高経営責任者 代表取締役。2021年、取締役 代表執行役社長 最高経営責任者に就任。

溝内 良輔 氏

溝内 良輔 氏

キリンホールディングス株式会社
常務執行役員

1982年キリンビール滋賀工場入社。市場リサーチ室長などを経て、2010年からオーストラリア・ライオン社常勤取締役、2012年からキリンホールディングス経営企画部長を務め、2017年からキリンホールディングス株式会社常務執行役員としてグループのCSV(Creating Shared Value)を担当。

松原 稔 氏

松原 稔 氏

りそなアセットマネジメント株式会社
執行役員責任投資部長

1991年4月にりそな銀行入行、年金信託運用部配属。以降、投資開発室および公的資金運用部、年金信託運用部、信託財産運用部、運用統括部で運用管理、企画を担当。2009年4月より信託財産運用部企画・モニタリンググループ グループリーダー、2017年4月責任投資グループ グループリーダー。2020年1月りそなアセットマネジメント株式会社責任投資部長、2020年4月より現職。

高島 淳

高島 淳

PwC税理士法人
代表

1996年にPwC税理士法人に入社。2000年から2004年にかけてPwC英国ロンドン事務所およびPwCタイバンコク事務所に駐在し、日系企業の海外進出、買収、統合、地域統括会社の設立などを支援。現在、日系企業の税務ガバナンス構築を支援する専門チームを組成し、日系企業の税務機能強化サポートを中心に従事。総合商社、化学、電機、ハイテク、インフラなどの業種における税務コンサルティングを担当。

詳細プロフィールはこちら

井野 貴章

井野 貴章

PwCあらた有限責任監査法人
代表執行役

1991年中央新光監査法人に入所。1997年よりクーパース&ライブランド ニューヨーク事務所の保険業担当部門へ出向。2004年に中央青山監査法人の社員、2007年にあらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)の代表社員に就任。2014年に執行役として品質管理担当に就任後、2018年から人事担当、2019年から執行役副代表を経て、2020年7月に代表執行役に就任。

詳細プロフィールはこちら

※ 法人名、役職、本文の内容などは掲載当時のものです。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

バックナンバーをカテゴリーから探す