PwCは2010年以降、世界中の消費者を対象に、消費行動の把握を目的とした年次調査を実施してきました。本年は世界27カ国、22,000人以上が対象となっています。
調査の結果、消費者は自国の経済に対して非常に楽観的で、個人支出についても、主にモバイルで過去12カ月間よりも支出を増やすか、または同程度に保つ予定だと回答しました。また、買物にあたってSNSから大きな影響を受けるようになっており、即日配送やより速い配送に追加料金を支払うこともいとわないことが明らかになっています。AIデバイスやテクノロジーの利用についてアンビバレントな思いを抱いており、特に自分の購買特性を知られたくないと考えています。
PwCでは2010年以降毎年、全世界の何千人もの消費者を対象に購買行動を追跡し、小売業の将来に関する世界規模の調査結果を「PwC世界トータルリテール調査」として数々のレポートにまとめてきました。
しかし、消費者が今までにはなかったソリューションを積極的に受け入れる中、以前は明確であった小売業者、製造業者、IT企業、物流業者、医療機関などの線引きがますます曖昧になっていることを考慮し、調査の全体像をより明確に表すよう、名称を「世界の消費者意識調査」に変更しました。コンシューマーマーケットをより俯瞰的に捉えたレポートになっています。
調査結果のサマリーをご覧下さい。
景気後退に伴う「ニューノーマル」によって消費者の購買力や企業の投資が低迷してきたと言われているにもかかわらず、調査結果を見ると、消費者とCEOが共に今後数年について強い安心感を抱いていることが分かりました。
実際に、2018年における自国の経済全体の見通しについて消費者に尋ねたところ(次ページの図1参照)、経済状況が前年を上回ると答えた人は3分の1に上り、さらに経済状況が前年と同程度になると答えた人も41%となりました。一方、2018年は経済状況が悪化すると考える消費者は21%にすぎません。また、調査回答者に今後12カ月の個人支出について尋ねたところ、回答者のほぼ4分の3が過去12カ月間よりも支出を増やすか、または同程度に保つ予定だと回答しています。
消費財(CPG)業界と小売業界において急速に活用が進んでいる人工知能(AI)。既に多くの買物客が、家電製品を通じたいわゆる「ボイスコマース」を利用し、家庭用品や食料品を補充購入している他、店舗においても、リアルタイムな在庫管理や陳列方法の改善にAIが活用されています。また、このテクノロジーは物流や配送を変革し、企業による顧客データの収集・分類の方法にも革命をもたらしています。業界の中でもいち早く取り組みを進めた企業は、出遅れた企業に比べ、今後2~3年内に非常に有利な立場を得ることになるでしょう。本調査によって、AIが急速に普及している状況や、AIをいち早く導入する傾向が強い消費者の特徴が明らかになっています。
2017年は、多くの小売業者がeコマースの台頭を受け入れる年となりました。とはいえ、世界のB2Cビジネスにおけるeコマースのシェアはまだ小さく、全ての小売業者に成長の余地がまだ残されています。成功の鍵を握るのは、オンラインで経験するのと同じようなシームレスなやり取りを実現する競争上の強みをいくつか見いだすことです。
調査を通じ、ソーシャルメディアの重要性が急激に高まっていることが明らかになりました。またブランド企業や小売業者が、ソーシャルメディアを通じて得られる見知らぬ人々の意見を、信頼に足るものとみなすことができるのかという課題も浮き彫りになりました。この信頼感の問題は、増加の一途をたどる大量の顧客データのセキュリティを確保しつつ、いかにして新たな技術やサービスを通じて顧客体験を向上させるかを検討する際、経営陣が最も気にかけるべきことです。
行動学の専門家によると、習慣というものは人間が幸福を追求し、何かを達成する上で不可欠なものです。一定の習慣がなければ、私たちは目の前に広がる膨大な数の選択肢を前に、立ちすくんでしまうでしょう。
それが現在はどうでしょう。ここ数年、デジタルディスラプション(デジタル化による創造的破壊)に伴い消費行動が様変わりし、一部の習慣が消滅する一方で、全く新しい消費行動が生まれています。本レポートでは、消費行動の発展と転換が、最も顕著に現れている分野(買物に利用されるチャネル、オンラインで注文した商品の配送リードタイム、買物のきっかけ)や、この状況に対して企業がいかにビジネスを変化させ、利益につなげられるかについて明らかにしています。
調査結果によると、スピードや柔軟性、信頼性といった配送に関する買物客の期待を引き上げているのはeリテーラーです。
特に比較的高齢の買物客は、当日配送やより短時間での配送に追加料金の支払いをいとわないことが明らかになりました。
幸い、競争に勝ち抜くソリューションの検討余地は十分にあります。これは消費財メーカーや小売業者に限られたことではなく、配送サプライチェーンの各段階に存在する数多の運輸・物流業者にも言えることです。
「ブランドは、誠実で思いやりがあり、ネットワークに貢献していると見られるような発信方法をそれぞれに考える必要があります。」