消費者が本当に信頼しているのは誰か?

世界の消費者意識調査 2018

本調査によって、急激に高まるソーシャルメディアの重要性や、見知らぬ人々の意見を信頼することが分かった。ブランドや小売業が、どのようにして本物で信頼できるとみなされるようにするかということが課題として浮き彫りになった。

  • 価格の他にどのような要素を考慮するかを尋ねたところ、3人に1人を超える消費者(35%)が、「ブランドへの信頼感」を上位3つの理由の1つに挙げた。
  • SNSはオンラインメディアの中で、買物をする際、最も影響力が大きい選択肢になっている。
  • 40%を超える調査回答者は、小売業者が自分の購入パターンや購入したものをモニタリングしても構わないと答えている。
  • 消費者がオンラインのセキュリティリスクをどう評価するかという点においても、信頼感は重要な役割を果たしている。

重要度が高まるブランドへの信頼感

買物先の小売業者を選ぶ際に、価格の他にどのような要素を考慮するかを尋ねた。その結果、3人に1人を超える消費者(35%)が、「ブランドへの信頼感」を上位3つの理由の1つに挙げている。

買物先の小売業者の(価格以外の)選定理由として、ブランドへの信頼感を第1位に選んだ人の割合は、全ての回答者のうちの14%だった。しかし、巨大な消費市場である中国の回答者のうち、ブランドへの信頼感を第1位の理由に選んだ人の割合は21%に達し、この調査に参加した他のどの国よりも高かった。

現代の消費者は他人の知識を信頼している

消費者は「どこで」買物をするかを決める上では、ブランドへの信頼感を重視しているが、「何を」買うかを決める上では他人の意見を判断材料として重視している。今回の調査では、買物に関する情報を得るためにどのメディアをよく使用しているかについて尋ねた結果、第1位はSNSとなり(回答者の37%)、中国の回答者はSNSを好む割合が52%と際立っていた。

しかし、その他の国の消費者は、SNSへの依存度がさらに大きく、中東で70%、インドネシアとマレーシアで58%、ハンガリーでは55%の回答者がSNSを選択した。

消費者が求めるものは監視ではなくメリット

回答者の多くは、小売店が自分の購入パターンを把握して、自分に合った提案をしてくれることを容認している。40%を超える調査回答者は、小売業者が自分の購入パターンや購入したものをモニタリングしても構わないと答えており、実店舗、オンライン、ソーシャルメディアなど全てのチャネルにおいて、自分とどのようなやり取りをしているか、小売業者に最新の情報を把握してほしいと考えている。

消費者は、自分の現在地を小売業者にあまり知られたくないようである。店舗の近くにいる時を見はからい、小売業者がカスタマイズしたメッセージを自分のモバイル機器に配信してくれることはありがたいと答えた回答者は、全回答者の中で34%にとどまった。

信頼がオンラインのセキュリティリスクに対する不安を和らげる

今回の調査で、オンラインのセキュリティ問題や不正リスクをどのように軽減しているかを尋ねたところ、回答者の過半数が信頼できる安全なウェブサイトしか利用しない(57%)、または信頼できるプロバイダーを選んで支払いを行っている(51%)と答えている。

昨年の調査と比べて、全般的に消費者のセキュリティ対策がやや減少傾向にあることは注目に値する。これは、小売業者に対する買物客の信頼感が増しているということかもしれない。もしそうなら良い知らせだが、同時に、信頼性の高いセキュリティへの期待が高まっているということでもある。

日本における示唆

買物をする小売店を選ぶ重要な要素として、「ブランドを信頼している」と回答した人は、グローバルにおいては第2位の35%だったが、日本においては20%の第5位だった。日本では、特に立地や特典など、実質的なメリットを求める傾向にある。大手企業の寡占化が進む小売業界において、既存小売業はほぼ信頼できる企業であると言えるような環境が大きく影響しているのかもしれない。

買物をする際に参考にしている情報源としては、ソーシャルメディア(以下SNS)がグローバルの調査結果では第1位(37%)であったが、日本の第1位は価格比較サイト(47%)で、SNSは第3位の24%となっており、影響度はさほど高くないという結果だった。しかし年齢別で見ると、18~34歳以下におけるSNSの割合は36%の第2位で、第1位の価格比較サイトの37%と僅差になっており、若年層においてはSNSが主要な情報入手媒体となっている様子がうかがえる。

オンライン購入時のセキュリティ対策としては、特に信頼度を重視している点はグローバルの結果と同様で、日本においても「信頼できる安全なウェブサイトのみ利用する」と回答した人が最も多く45%となっており、さらに55歳以上では61%まで上がる。高齢者ほどブランドの信頼性を重視していることが分かる。

配送手段としてドローンを信頼するかどうかについては、グローバルの回答結果では約40%の人が信頼して受け入れると回答したが、日本においては20%と低く、特に35歳以上は10%程度にとどまった。

年齢が高くなるほど警戒心が高まり、既存の手段・サービスの信頼度を重視する傾向にあるが、非従来型の医療サービスの受け入れ度で見ると、若者より高齢者層の方が非従来型のサービスプロバイダーを受け入れる割合が高い。このように、慣れ親しんでおらず「信頼」がなくとも、「必要」が勝る場合もあり得る。

主要メンバー

矢矧 晴彦

マネージングディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email