企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等の解説── 新リース会計基準の実務対応(3)不動産固有の論点についての考察(下)

  • 2024-04-25

はじめに

日本の企業会計基準委員会(ASBJ)は、現行のリースの会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等)の財務報告上の問題点の改善を図るため、2023年5月に、リースの新基準の開発へ向けた公開草案たる企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等(以下、本公開草案)を公表しています※1。本誌第46号(2023年9月号)からは、本公開草案の実務的な観点に焦点を当てた連載を開始しています。

本公開草案は、借手がリースについて使用権資産とリース負債をオンバランスする単一の会計処理モデルを採用することを前提としています(例外規定である「短期リース」または「少額リース」を除く)。現行のリースの会計基準の下では、借手にとって、不動産のリースは、実務上、オペレーティング・リースに分類されることが多く、その場合にはこれらのリースはオフバランス処理されます。本公開草案の提案によると、借手はリース期間にわたって当該不動産を使用する権利である使用権資産とリース料の支払義務であるリース負債を貸借対照表にオンバランスすることとなります。このことは、不動産を賃貸借契約により借りている多くの企業に影響を与え、特に店舗、支店等で多くの不動産を賃借している企業にとっては追加的にオンバランスされる資産および負債が貸借対照表へ大きなインパクトを与えることが予想されます。

前稿および本稿の2回にわたり、本公開草案から予想される不動産固有の論点と、その論点について実務上、考慮すべきポイントについて紹介します。なお、本文中の意見に関する部分は、著者の個人的見解であり、PwC Japan有限責任監査法人の見解ではないことを申し添えます。

1 借手の会計処理:リース負債の計上額の見直し

本公開草案によると、リース契約の開始時にいったん測定されたリース負債の帳簿価額は、基本的には、支払利息の計上およびリース料の支払いによって増減します。しかし、状況の変化などによりリース期間に変更がある場合や、契約条件の変更がある場合、契約条件の変更がなくても借手のリース料に変更がある場合※2に、借手は、リース負債の計上額の見直しを行って帳簿価額を修正することが求められます。また、使用権資産についても、変更の種別に応じて調整が求められます。図表1は、リース負債の計上額の見直しのフローを示したものです。

(1)契約条件の変更によるリース負債の計上額の見直し

本公開草案において「リースの契約条件の変更」とは、リースの当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲またはリースの対価の変更(例えば、1つ以上の原資産を追加もしくは解約することによる原資産を使用する権利の追加もしくは解約、または、契約期間の延長もしくは短縮)をいいます。例えば、1つまたは複数の原資産を使用する権利の追加または解約、もしくはリース期間の延長または短縮が該当します。

リースの契約書の修正等により既存のリース契約条件が変更された場合、当初の契約の修正として会計処理するのか、別個のリースとして会計処理を行うかを評価する必要があります。現行のリースの会計基準では、リースの条件変更に関する規定は存在しませんでしたが、本公開草案において契約条件の変更がある場合の会計処理に関する規定が置かれています。

リースの契約条件の変更が次の①および②のいずれも満たす場合、借手は、当該リースの契約条件の変更を独立したリースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料および付随費用を加算した額により使用権資産を計上する、とされています。

① 1つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されること

② 借手のリース料が、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること

例えば、不動産リースにおける増床とそれに伴う契約対価の増額は、契約条件の変更に該当します。オフィスの床面積を2倍へと拡大するよう賃借契約を変更する場合はリースの範囲の拡大(使用権の追加)になります。これに伴う契約対価も、拡大した床面積の現在の賃料相場(独立価格)と整合して増額する場合、拡大した床面積部分は、別個のリースとして取り扱います。なお、当初の契約に係る面積部分の会計処理には修正を行いません。これに対して、オフィスの賃借契約を2倍の面積へと拡大するものの、契約対価を現在の賃料相場と整合せずに増額する場合、別個のリースには該当せず、当初の契約の修正の会計処理を行うこととなります。

借手は、リースの契約条件の変更のうち、前項に従い独立したリースとしての会計処理が行われないリースの契約条件の変更について、リースの契約条件の変更の発効日に、次の会計処理を行うことが本公開草案では提案されています。

① リース負債について、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更後の条件を反映した借手のリース料の現在価値まで修正する。

② 使用権資産について、次のことを行うことによって、①のリース負債の見直しに対応する会計処理を行う。

(ア)リースの契約条件の変更のうちリースの範囲が縮小されるものについては、リースの一部または全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上する。

(イ)他の全てのリースの契約条件の変更については、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する。

不動産リースでは、契約上、リース料の改定が行われることがあります。市場の賃貸料率の変動を反映するようにリース料が変動するケースや、CPI(消費者物価指数)の変動に応じてリース料が変動するケースにおいて、将来のリース料の変動(すなわち、キャッシュフローの変動)がある場合にはリース負債の再測定が必要となります。このことは借手にとって実務上の大きな負荷となる可能性があります。従来、不動産リースをオペレーティング・リースとして会計処理してきた場合、リース料の改定は、損益計算書にのみ影響を与え、貸借対照表には影響がありませんでした。本公開草案では、リース負債の見直しという会計処理が求められることもあり、企業内において、不動産リースの契約条件の変更に関する情報の連携方法を再構築する必要があるかもしれません。不動産リースに係る契約を取りまとめる部署(例えば総務部)と経理部・主計部の間で、会計処理を行うために必要な情報を共有するためのオペレーションが求められる可能性があります。

(2)契約条件の変更を伴わないリース負債の計上額の見直し

本公開草案によると、借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、次のいずれかに該当するときには、該当する事象が生じた日にリース負債について当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減することとされています。ただし、使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお、リース負債の測定の減額がある場合には、残額を損益に計上することとなります。

① 借手のリース期間に変更がある場合※3

② 借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合※4

2 借手の会計処理:セール・アンド・リースバック取引

セール・アンド・リースバック取引とは、売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリースバックする取引のことです。売手は、資産の売却によって資金を調達しつつ、リースバックを受けて当該資産を使用し続けることができるというメリットがあります。

(1)セール・アンド・リースバックとオフバランス化

従来、売手(借手)がセール・アンド・リースバック取引を行うメリットとして、資産のオフバランス化がありました。例えば、ある企業が自社ビルのセール・アンド・リースバックを行い、その取引がオペレーティング・リースに分類される場合、自社ビルが貸借対照表から外され、売却後のリースは通常の賃貸借取引として費用処理されるため、オフバランス化が可能でした。売却した自社ビルは、リース契約に従って、その後も継続して使用できます。

本公開草案の提案によると、売手(借手)のリースは、短期リースおよび少額リースを除き、原則として、貸借対照表に認識されることになります。上述の例では、貸借対照表から自社ビルはオフバランスされ、売却後のリースが短期リースとして会計処理されない限り、当該リースバックに係る使用権資産がオンバランスされることとなります。オンバランスされる金額は、リース契約の条件等によって異なります。しかし、従来はオンバランス不要であった当該リースバック取引が、本公開草案の提案によってオンバランスされると、実務上、売手(借手)がセール・アンド・リースバック取引を行うかどうかを検討する際に大きな影響を与える可能性があります。

(2)セール・アンド・リースバック取引の会計処理

① セール・アンド・リースバック取引に該当するか

リースバックが行われる場合であっても、売手である借手による資産の譲渡がセール・アンド・リースバック取引に該当しないことがあります。具体的には、セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資産の譲渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が収益認識会計基準などの他の会計基準等により、一時点で損益を認識する売却に該当すると判断される場合、売手である借手は、当該資産を買手である貸手に譲渡し、譲渡した当該資産をリースしているものと考えられます。そこで、この場合においては、譲渡された資産とリースされた資産は同一であると考えられることから、これらの取引についてはセール・アンド・リースバック取引に該当すると判定されます。本公開草案は、セール・アンド・リースバック取引を、IFRS第16号と同様に「売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、リースバックする取引」と定義することを提案しています。本公開草案では、この定義において、譲渡された資産とリースされた資産が同一であることが重要な要素であるとしています。

この定義に照らすと、建設工事請負契約と一括借上契約が同時に締結される取引などにおいて、収益が一定の期間にわたり認識される場合には、資産の譲渡により売手である借手から買手である貸手に支配が移転されるのは仕掛中の資産であり、移転された部分だけでは資産の使用から経済的利益を享受できる状態にないと考えられます。これに対し、リースバックにより売手である借手が支配を獲得する使用権資産は、完成した資産に関するものであるため、譲渡された資産とリースされた資産は同一ではないと考えられます。よって、本公開草案では、このような取引はセール・アンド・リースバック取引として取り扱わないことが提案されています。

さらに、本公開草案は、売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に該当しないとしています。例えば、売手である借手が原資産に対する法的所有権を獲得したとしても、資産が貸手に移転される前に借手が資産に対する支配を獲得しない場合、当該取引はセール・アンド・リースバック取引ではなく、リースとして会計処理を行うこととなる点に留意が必要です。

② 資産の譲渡が売却に該当するか

本公開草案によると、売手である借手は、セール・アンド・リースバック取引における資産の譲渡が売却に該当するか否かについて判断を行い、次のとおり会計処理を行います。

(ア)資産の譲渡が売却に該当しない場合

次のいずれかに該当する場合、売手である借手による資産の譲渡は売却に該当しないこととされます。この場合、売手である借手は当該資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行います。

i. 売手である借手による資産の譲渡が収益認識会計基準などの他の会計基準等により売却に該当しないと判断される場合

ii. リースバックにより、売手である借手が、資産からもたらされる経済的利益のほとんど全てを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生じるコストのほとんど全てを負担することとなる場合

(イ)資産の譲渡が売却に該当する場合
  • (ア)i.、ii.のいずれも満たさない場合、売手である借手は、当該資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い当該損益を認識します。
  • リースバックについては、本公開草案の提案に従い、借手の会計処理を行うこととなります。ただし、一時点で損益を認識する売却に該当すると判断される場合であっても、上段(ア)ii.に該当する場合は金融取引として会計処理を行うこととなります。

③ 資産の譲渡対価やリースバックのリース料の水準による会計処理の違い

本公開草案によると、上記の②(ア)の場合に資産の譲渡対価が明らかに時価ではないとき、または、借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではないときには、売手である借手は、当該資産の譲渡対価と借手のリース料について次のとおり取り扱うこととされています。

(ア)資産の譲渡対価が明らかに時価を下回る場合
  • 時価を用いて譲渡について譲渡損益を認識する。
  • 譲渡対価と時価の差額について使用権資産の取得価額に含める。
(イ)借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を下回る場合
  • 借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を増額した上で譲渡について損益を認識する。
  • 当該差額について使用権資産の取得価額に含める。
(ウ)資産の譲渡対価が明らかに時価を上回る場合
  • 時価を用いて譲渡について損益を認識する。
  • 譲渡対価と時価の差額について金融取引として会計処理を行う。
(エ)借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を上回る場合
  • 借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を減額した上で譲渡について損益を認識する。
  • 当該差額について金融取引として会計処理を行う。

なお、本公開草案上、資産の譲渡対価が明らかに時価ではないかどうか、または借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではないかどうかは、資産の時価と市場のレートでのリース料のいずれか容易に算定できる方を基礎として判定するとされています。

3 貸手の会計処理の概要:現行基準と新基準の比較

貸手の会計処理については、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類を含め、現行のリースの会計基準の取り扱いを本公開草案でも原則として維持しています。このため、不動産のリースも、借手の場合と比較すると、貸手の会計処理に与える影響は、基本的には、収益認識会計基準との整合性を図る点やリースの定義およびリースの識別といった点にとどまり、相対的に少ないと考えられます。ただし、後述する不動産のサブリースの中間の貸手となっている場合のリースの分類判定などにおいて、貸手にも新基準の適用による一定の影響があることに留意が必要です。

4 不動産リースの貸手の会計処理の概要:中間的な貸手によるサブリースの会計処理

(1)不動産のサブリースの分類

ここでは、不動産のサブリースの中間の貸手として行動している企業に関して、サブリースの分類判定方法の変更による影響について説明します。サブリース取引とは、原資産が借手から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手の間のリースが依然として有効である取引をいいます(図表2)。なお、当初の貸手と借手の間のリースをヘッドリース、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」といいます。

次の①または②のいずれかに該当する場合、中間的な貸手のサブリースは、ファイナンス・リースと判定されます。なお、ヘッドリースたる不動産リースについて短期リースに関する簡便的な取り扱いを適用して使用権資産およびリース負債を計上していない場合、サブリースはオペレーティング・リースに分類されます。

現在価値基準:サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が、独立第三者間取引における使用権資産のリース料の概ね90パーセント以上であること

経済的耐用年数基準:サブリースにおける貸手のリース期間が、ヘッドリースにおける借手のリース期間の残存期間の概ね75パーセント以上であること(ただし、上記①の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く)

例えば、耐用年数が50年の不動産を原資産とする、ヘッドリースのリース期間5年、サブリースのリース期間5年という取引があった場合、現行のリースの会計基準の下であれば、サブリースはオペレーティング・リースに分類される可能性が高いですが、本公開草案によると、②経済的耐用年数基準により、ファイナンス・リースに分類されます。

(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の会計処理

本公開草案によると、サブリース取引のうち、次の要件をいずれも満たす取引について、中間的な貸手は、サブリースの基本的な会計処理をすることなく、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時または当該リース料の受領時のいずれか遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上できるとしています。

① 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払いを受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない。

② 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である。

③ 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない。
(ア)サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む)
(イ)サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法

(3)転リース取引

サブリース取引のうち、原資産の所有者から当該原資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引を「転リース取引」といいます。本公開草案で扱う転リース取引としては、主に機器等のリースが想定されています。不動産リースの実務において転リース取引がみられる事例は多くないかもしれませんが、本公開草案によると、中間的な貸手は、サブリースの基本的な会計処理をすることなく、転リース取引のうち、貸手としてのリースが原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当する場合、次のとおり会計処理を行うことができるとされています。

① 貸借対照表上、リース債権またはリース投資資産とリース負債の双方を計上する。

② 損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上する。

なお、本公開草案は、リース債権またはリース投資資産とリース負債は利息相当額控除後の金額で計上することを原則としていますが、利息相当額控除前の金額で計上することもできるとしています。リース債権またはリース投資資産から利息を控除するにあたって使用する割引率は、リース負債から利息相当額を控除する際の割引率を使用するとされています。

2 貸手へのその他の影響

上述のとおり、不動産の貸手が属する業種では、貸手自身の会計には重大な影響を受けない可能性があります。しかし、借手の行動の変化によって、事業モデルに影響を受ける可能性があります。

(1)借手のニーズの変化

借手の行動の変化によって、リースの契約期間の短縮化、変動リース料形式の契約の増加が要求される可能性があり、貸手の事業リスクが高まる可能性があります。さらに、このことがリースの経済的実質を変化させ、リース料の決定に圧力をかけることへ繋がる可能性があります。不動産の貸手は、現在の経済環境でリース料の増額を要求することは難しいと認識している可能性があり、これにより、不動産ファンド等の貸手の業績が影響を受け、キャッシュ・フローの変動性や事業リスクが高まる可能性があります。ひいては、これが貸手の投資にとって有利な資金調達ができるかどうかの貸手自身の能力にも影響する可能性があると考えられます。

(2)新サービスのビジネスチャンス

商業的にみると、借手のニーズの変化は、不動産の貸手にとって重要になる可能性があります。それぞれの不動産リースの契約条件によって状況は異なりますが、借手からは、賃料のリース部分と非リース部分の区分表示などを要求される可能性などが考えられます。こうした変化は、貸手の作業量を増やすだけでなく、業界に変化を起こす可能性もあります。また、新基準に従った開示を行うための情報を提供するなど、新基準に対応した新しい動きは新サービスおよび新商品のビジネスチャンスを生み出す可能性があります。新サービスに注目が集まるなど、市場におけるさまざまな動きが新リース基準によって加速する可能性があります。これにより、一部の貸手は従来の事業モデルを変更する必要があるかもしれません。


※1 https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2023/2023-0502.html

※2 リースの契約条件や借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある状況として、本公開草案では次のような状況が例示されています。
(1)原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合
(2)残価保証に基づいて支払われると見込まれる金額に変動がある場合
(3)指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料に変動がある場合

※3 借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、次の①および②のいずれも満たす重要な事象または重要な状況が生じたときに、延長オプションを行使することまたは解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかについて見直し、借手のリース期間を変更し、リース負債の計上額の見直しを行うこととされています。
① 借手の統制下にあること
② 延長オプションを行使すること、または、解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの借手の決定に影響を与えること

※4 前掲注2を参照


執筆者

PwC Japan有限責任監査法人
財務報告アドバイザリー部
シニアマネージャー 田野 雄一