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2022年は医薬・ライフサイエンスおよびヘルスケアサービスの双方のM&A活動にとって厳しい1年となりましたが、2023年にはディール組成が従来の水準まで回復すると予想されます。
買い手がイノベーティブな資産を巡り競い合う中、企業のバランスシート上の豊富なキャッシュやプライベート・エクイティ(PE)のドライパウダーにより、年間を通じて積極的なM&A活動が続くでしょう。
ヘルスケア業界の企業は、自社の成長プラン達成に向けて買収が必要となるでしょう。大手製薬会社は、開発パイプラインのギャップを解消すべく、アーリーステージに位置するバイオテクノロジー企業の買収を図っていくと予想されます。上場企業のバリュエーション低下は、コーポレートプレイヤーにおける大規模ディール組成キャパシティを限定的にする可能性がある一方、イノベーティブな資産をより魅力的な価格で取得する機会を創出する可能性もあります。
厳しいマクロ経済環境や人材不足、インフレを要因として、独立系ヘルスケアクリニックが、特に民間の病院や医療介護施設などの総合プラットフォームの傘下に加わる可能性も高まるでしょう。その他、動物病院や放射線治療施設など最近のロールアップ型プラットフォームは、依然としてフラグメントな市場の中で、今後も統合を続けていくと思われます。一方、人手不足問題をさらに軽減し、医療機関による費用対効果および質の高いケアの提供を可能とする、遠隔医療、ヘルステック、アナリティクス企業は、投資家から高い関心を集めると予想されます。
「2023年のマクロ経済は引き続き厳しい状況が予想されます。しかし、バリュエーションが元の水準まで戻り、またヘルスケア業界の企業は事業目標の達成や競合他社に対する優位性の維持に向けて事業のイノベーションや変革を必要としていることから、M&Aを強く推進する機会が生じるでしょう」
今後半年から1年の間に以下の分野のM&A活動が活発になると予想します。
ヘルスケア業界における2022年のグローバルM&A件数および金額は、件数で23%、金額で46%、それぞれ過去最高となった2021年の水準から減少しました。2022年のディール件数はパンデミック前の水準を上回ったものの、金額は大きく落ち込みました。メガディール(金額が50億米ドル以上のディール)の件数は、2021年から2022年にかけて20件から9件へと半減しました。しかし、2022年に発表された9件のメガディールのうち、5件は年末の2カ月間に発表されたものであり、2023年にはさらに多くのメガディールが発表されると予想されます。
GDP成長の鈍化、インフレ、金利上昇、ウクライナ侵攻、中国におけるCOVID-19感染状況の悪化などが相まって、ディール環境は厳しさを増しています。世界規模のパンデミックによるサプライチェーンの混乱と地政学的緊張の高まりにより、ビジネスリーダーはリスクや依存関係を再評価し、コントロールの強化に向けてM&Aに乗り出しています。2023年には、リードタイムの短縮や、クライアントが望む確実性の向上を図るための戦略として、M&Aによるサプライチェーンのオンショア化、ニアショア化あるいは「フレンドショア化」(友好国や同盟国でのサプライチェーン構築)が増加すると予想します。
マクロ経済や規制環境が不透明な中、企業は引き続きノンコア資産を戦略的に評価・特定し、売却を進めると思われます。このような売却によって得られた資金は、企業の戦略的ビジョンと合致した資産を獲得するためのディール組成能力を向上させるでしょう。
製薬会社は、研究開発活動に加えて、中堅バイオテクノロジー企業に資本を投じることによって、医薬品パイプラインのギャップを解消しようとしています。こうした投資からの利益獲得をさらに加速させるために、製薬会社は、中堅バイオテクノロジー企業への資本投入、創薬分野におけるAIをはじめとする研究開発のデジタル変革の加速化などの取り組みに加え、M&A資産を迅速に統合・拡大する準備が必要となるでしょう。
民間クリニックやスペシャリティケア提供者、サービスグループ(眼科、体外受精、老人ホーム/高齢者介護等)は、依然としてフラグメントな状態です。PEは、こうした資産をプラットフォームに統合することに関心を示しており、2023年にはさらなるロールアップ活動が行われると予想されます。これらの分野や病院事業者の間では、人手不足や政府によるパンデミック支援の終了に伴って事業運営や流動性に係る問題が生じており、リストラクチャリングやディストレストM&Aの増加につながる可能性があります。
ヘルスケア業界では、アナリティクステクノロジー、スマートヘルス機器、医療活動管理ソフトウェア、消費者中心型デリバリーモデル(顧客ダイレクト(D2C)型デジタル治療の開発を含む)などを通じたビジネスモデルのデジタル化が進んでいます。こうした能力を獲得することで、既存の事業者がビジネスモデルを刷新すべくセクターの枠を超えたディールが行われています。医薬・ライフサイエンス事業者とヘルスケアサービス事業者は、大規模な患者情報データセットのマイニングと収益化といったデジタルソリューションを活用し、インタラクションを高めて保険者、医療機関、消費者に対してより個別化したアプローチを提供するために、テクノロジー企業の買収や提携を増やしています。さらに、医薬・ライフサイエンス事業者は、デジタル販売チャネルの拡充策として新興企業を継続的に監視し、資金調達から買収に至る諸活動に取り組むと予想されます。
特にPE企業は投資家に対するESGコミットメントを示しており、そうしたコミットメントが自らの投資テーマの重要な一部となっています。投資家、ステークホルダー、政府機関の投資基準が高まる中、ヘルスケア業界の企業はその多くを満たしており、またグローバルな社会的課題への寄与が明確なため、魅力的なESG投資機会をもたらしています。より幅広いディールメーカーがESGトピックを自らのビジネスモデルやデューデリジェンスプロセスに組み込んでいくと予想されます。
2023年、ヘルスケア業界におけるディール組成活動は安定的に推移すると予想しています。不透明なマクロ経済状況にもかかわらず、投資家は依然としてこのセクターに魅力を感じています。事業変革やリポジショニングのツールとしてM&Aを活用することにより、企業はステークホルダーに対して長期的な価値や持続的な成果(sustained outcomes)を生み出しやすくなると思われます。
データについて
M&A動向に関する当社の見解は、業界で認知された情報源から提供されたデータに基づいています。本レポートで使用した金額および件数は、2022年12月31日時点でRefinitivが提供し、2023年1月2日時点でアクセスした公式発表に基づいており、噂や、取り下げられたディールは除外しています。さらに、補足情報としてDealogicおよび当社の独自調査からの情報も加味しています。本レポートは、Dealogicによる使用許諾に基づいて提供されたデータから導出したデータも含んでいます。かかる被使用許諾データの全ての権利はDealogicが留保しています。なお、PwCの業界マッピングと整合させるため、データ情報源に一定の調整を加えています。
※本コンテンツは、PwC米国が2023年1月に公開した「Global M&A Trends in Health Industries: 2023 Outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。