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ディールメーカーが厳しいマクロ経済環境に対処する中、2023年の産業機械・自動車(IM&A)セクターの特徴は、M&Aに対するより規律あるアプローチによって定まってくると予想されます。なお2022年のM&A活動は、GDP成長率の鈍化、ロシアとウクライナの紛争、エネルギー危機、金利上昇とインフレの高進といった逆風を受け、パンデミック前の水準へ回帰しました。
市場の混乱にもかかわらず、強固な財務基盤を持つIM&Aセクターの企業は、引き続きM&Aに積極的であるとみられます。企業は、新たな技術およびサービスに係るケイパビリティを獲得し、整理統合を通じて規模の効率性を高めるため、買収に焦点を合わせています。また、サプライチェーンのレジリエンスの強化が引き続き重視され、企業によるM&A活動を安定した水準に保つ要因となっています。プライベート・エクイティ(PE)や特別買収目的会社(SPAC)は引き続き取引を進めるものの、より厳しい環境に直面しています。
多くのCEOは、成長から収益性や資本配分へと重点を移す中で、ポートフォリオを見直し、カーブアウトや事業売却を検討しています。こうした取引を通じて、より収益性の高い分野へ投資するための新たな資本を調達するのです。現金保有残高が低水準の企業は防御的なM&A戦略を検討することが考えられます。そうした企業は、事業統合を通じて規模の拡大を達成する機会や、特に欧州ではコモディティ価格の変動とエネルギーコスト上昇による利益率の低下を抑制する機会を追求する可能性があります。現在のサプライチェーンの混乱は、重要なサプライヤーや原材料へのアクセスを確保するための垂直統合を促進し、他のセクターとの事業統合を加速させるでしょう。
市場環境の不確実性により、企業は短期的な予算を策定するのみで、事業の合理的なバリュエーションとして合意することが難しくなっています。短期的には、センチメントが売り手市場から買い手市場へと変化すると予想されるものの、買い手と売り手の間のバリュエーションに差があるため、一部のディールが成立しないという事態も想定されます。意欲のあるディールメーカーは、デューデリジェンスとシナリオプランニングを通じて、買い手と売り手の期待価格とのバリュエーション格差を埋める方策を見出すでしょう。
セクターの観点から見ると、航空宇宙・防衛(A&D)分野のディールメーキング活動については、私たちは依然として慎重ながらも、主に観光業が回復し、国防予算が安定していることから楽観視しています。自動車市場におけるディールは、引き続き電気自動車への移行が支配的なテーマとなるでしょう。エンジニアリング・建設(E&C)セクターでは、インフラ投資に対する意欲の高まりがディールに対してプラスの影響を与えるとみられます。ビジネスサービスセクターでは、やや反循環的な性質とテクノロジー主導のソリューションに対する投資家の関心の高まりが相まって、健全な水準のディールが予想されます。産業機械セクターは、戦略的な重点分野と機械・設備のニッチ市場における整理統合によって、中小規模のディールが後押しされ、安定したディール活動を示すと考えられます。
「IM&Aのディールメーカーの焦点は、ケイパビリティやサービスへの投資に向けた戦略的分野に移行しています。これはポートフォリオの見直しによるカーブアウトおよび事業売却と相まって、現在のマクロ経済の逆風を乗り越え、2023年を通じて継続的なディール活動を後押しするでしょう」
今後6~12カ月間には、以下の分野でM&A活動が活発化する可能性が高いと考えられます。
IM&AセクターにおけるM&Aの件数と金額は、2021年から2022年にかけてそれぞれ11%と30%減少しました。一方、M&A市場全体ではそれぞれ17%と37%減少しています。厳しいディールメーキング環境にもかかわらず、2022年のM&A活動は、航空宇宙・防衛、自動車、ビジネスサービス、エンジニアリング・建設、産業機械の各セクターにおいてパンデミック前の水準に戻りました。この傾向は各国・地域にわたって一様ではなく、投資家が他の市場で機会と成長を見出すようになったという、より広範な変化を示唆しています。例えば、2021年から2022年にかけて、インドのM&A件数は33%増加しましたが、中国では主にマクロ経済要因とパンデミック関連の課題のためにディール件数が35%減少しました。欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域のディール活動は同期間に4%減少しましたが、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルではディール活動が増加しました。米州では、ディール活動が10%減少し、ディール金額は54%減少しました。これは主に、ビジネスサービス分野を中心としたメガディール(取引額が50億米ドルを超える案件)の大幅な減少によるものです。
IM&AセクターのディールメーキングにおけるPEのシェアは、2021年から2022年にかけて横ばいでしたが、下半期には買い手のタイプによる相違が見られました。強固な財務基盤を持つ企業が引き続きディールを進めたのに対して、債券市場の逼迫が資金調達のコストと困難さを増大させたため、PEの活動は減少しました。
「IM&Aセクターでは、2023年の上半期にポートフォリオ最適化と事業売却に伴って新たなディールメーキング活動が世界的に促進される見通しです。下半期にはIPO市場が再開し、技術の獲得を目的としたディールが増加し、市場環境が正常化する可能性があります」
CEOは事業を戦略的に見直し、市場や事業上の優先度といった観点から現在のポートフォリオを再評価することにより、どの事業部門に投資を継続し、またどの事業部門を売却すべきかを決定することが求められます。低成長期や景気後退期には通常、こうした戦略的選択が事業上の喫緊の課題となります。早期に断固とした行動をとることが、利益を最大化する上での鍵となるのです。持続可能性に重点を置いた新たな投資に向けて資本を解放し、DXを加速させるために資産を売却するというトレンドが強まると予想されます。また、現在の経済的逆風が2023年まで続く場合は、ディストレストM&Aが増加する可能性があります。
デジタル化は全てのIM&Aセクターにおいて、将来のM&A取引の戦略的根拠に重要な影響を及ぼすに違いありません。企業はM&Aを利用して新たな技術力を獲得し、事業を変革します。特にクラウドトランスフォーメーションは、IM&Aセクター、とりわけビジネスサービス、航空宇宙・防衛、その他産業機械の各サブセクターにおける多くの安定した企業にとって重要な要素となります。これらのサブセクターは、多額の研究開発費と新しい破壊的ビジネスモデルによって特徴付けられる傾向があります。
他のセクターやサブセクターへの事業統合を引き起こすM&Aが増加すると予想されます。自動車分野の企業は、電動化を進める中で引き続きアーリーステージのテクノロジー企業を探し求めています。航空宇宙・防衛、エンジニアリング・建設、および産業機械分野の企業も、技術、人材、その他のケイパビリティへの投資を継続し、それぞれ独自のイノベーションを推し進めています。また、原材料や主要なコンポーネントへのアクセスを直接確保することでサプライチェーンを強化するために、他のセクターへ参入する企業が増加することも予想されます(例:バッテリーの生産に使用される重要な鉱物へのアクセスを獲得するために鉱山関連の資産を買収する)。
ESGは、単に形式的なデューデリジェンス作業としてではなく、長期的な価値創造の梃子として、ますますCEOにとっての重要課題として位置付けられるようになっています。投資テーマの標準的な基準を満たした上で、買収対象の企業がより広範なESG目標に寄与する特性も備えていれば、主要なステークホルダーとの対話を方向付ける上で役に立つ可能性があります。これは企業価値にプラスの影響を与えると予想され、特定の重要なディールを成立へと導く助けとなる可能性があります。
M&Aの環境は多くのIM&A企業にとって厳しいものであり、マクロ経済要因が成長見通しと収益性について不確実性を生み出していることは明らかです。この機会を捉えてポートフォリオを見直し、M&Aを追求することで新しいケイパビリティを獲得し、おそらくは新たなセクターに進出する企業は、長期的な価値創造を支える持続的な成果をもたらす上で有利な立場に立つことになります。
データについて
M&A動向の解説は、業界で認知された情報源から提供されたデータに基づいて行っています。具体的には、本書で言及する金額と数量は、2022年12月31日現在でRefinitivが提供し、2023年1月2日にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられたディールを除く)。これはDealogicからの追加情報および当社の独自調査によって補完されており、Dealogicのライセンスの下で提供されたデータから派生したデータも含まれています。Dealogicがこのようなライセンス供与されたデータに関する全ての権利を保持し、留保します。PwCの産業マッピングと整合させるため、ソース情報源に一定の調整を加えています。
※本コンテンツは、PwC米国が2023年1月に公開した「Global M&A Trends in Industrial Manufacturing and Automotive Sectors: 2023 Outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。