藤川 琢哉
PwCコンサルティング合同会社
パートナー
日本企業が持つ現場のノウハウやデータの多くは構造化されておらず、これまで活用範囲が限定されてきました。 しかし、生成AIの登場によって状況が一変しました。 構造化されていないデータから学習し、新しいコンテンツを生み出すことができる生成AIを活用すれば、日本企業の内部に眠る、「匠」と言われるような高技能者が蓄積してきた情報を、再利用可能な企業アセットに転換できるようになったのです。
言い換えれば、生成AIの活用を通じ、日本企業は競争力を強化する機会を得たことになります。
ただし、社内業務でも社外に向けたサービスにおいても、生成AIのポテンシャルを最大限に活かすためには、まずリスクを適切に管理するためのガバナンス構築が重要です。 また、生成AIの活用アイデアを組織や事業の変革といった大きなインパクトに結びつけていくためには、目先の業務改善のみにとらわれず、企業として目指す姿や、未来の事業環境の変化まで見据え、変革の全体像を描く必要があります。
このようなニーズに応えるべく、PwC JapanではAIに加え、コンサルティング、監査、税務、法務、M&Aといった専門性を結集し、2023年3月に生成AIの専門タスクフォースを組織しました。 各インダストリーや業務プロセスの知見を持つ専門家と連携する他、大学やテクノロジー企業とのアライアンスも強化し、企業の組織運営そのものの変革に取り組むクライアントを支援する体制を敷いています。
同時に、クライアントに価値のあるサービスを提供し続けるためには、私たち自身がアーリーアダプターとなって効果的な活用方法を模索することが重要です。 生成AIタスクフォースは、PwC Japan内におけるAIガバナンス体制の構築、ガイドライン作成、メンバー向けのトレーニングを行う場としても機能しています。
生成AIの活用領域は、今後、組織や業務の変革のみならず、サステナビリティや人材育成などへと広がっていくでしょう。 生成AIの技術的な特性上、業界や産業全体といった単位でより多くのデータが利用可能になれば、生成するコンテンツの質が向上します。 そのため長期的には、産官学連携を通じて業界を変えていくような生成AIプラットフォームの構築を実現し、世界に伍する日本企業の競争力向上に貢献したいと考えています。