宮城 隆之
PwCコンサルティング合同会社
パートナー
クライアントが直面する課題は年々複雑化しています。気候変動、テクノロジー、人口動態の変化といった大きな社会課題が絡み合い、一企業や一業界の取り組みでは解決することが極めて困難になっています。
このような変化を受けて、私たちプロフェッショナル・サービス・ファームに求められる役割も変わってきています。 クライアントが認識している課題解決に応えるだけでなく、より広い視野と客観的な洞察力を持って、現時点で把握し切れていない課題を見つけ、それらを包括する解決策を提示することが求められています。
PwC Japanは、ビジネスを通じて社会課題の解決に取り組んでおり、ソーシャルインパクトの活動もその一環と位置づけています。
課題を見定め、特定する人が、必ずしもそれらを解決する能力を有しているとは限りません。 むしろ一致しないことが多いでしょう。 ましてや複雑化する課題の解決には、解決に必要な知識や技術、さまざまな経験などを結びつける役が重要です。ときには、解決に向けた専門性を持つ人や組織によって、取り組む目的やゴールが異なるかもしれません。 そのようなさまざまな価値観や目的を踏まえ、中長期の視点に立って社会の重要な課題を解決する方向へ導く役割を担っていくのが、PwC Japanだと考えています。
PwC Japanのソーシャルインパクトの活動は多岐にわたっています。例えば、地方自治体に向けてはサステナブルな街づくりを継続的に支援する一方、次世代を担う中高生にはデザイン思考をベースとした教育プログラムを提供しています。 PwC Japanには、このようなプロボノ(業務上のスキルを活用したコミュニティ支援活動)やボランティア活動に高い関心を持つメンバーが多く在籍しており、誰もが活動に参加しやすい仕組みを整え、定期的に見直しています。
また、さまざまな専門性や経験を結集することによって、個人的な活動では生み出せない大きなインパクト(コレクティブインパクト)を起こすことも重要だと考えています。 インパクトという言葉は、短期間で大きな成果をもたらすことをイメージさせますが、大きなインパクトを出すためには取り組みに対する継続的なコミットメントが欠かせません。
PwC Japanでは、800人ほどのメンバーがチャットなどを通じてグループ内で専門性を持つ人を募集したり、課題解決のヒントを探して議論したりするコミュニティを運営しています。このような活動も含め、私たちが推進するコミュニティ支援活動においては、メンバーのプロフェッショナルスキルを社会に還元する「循環」を目指しており、実際に、2023年度のコミュニティ支援活動時間の95%以上が、プロボノによるものでした。
また、2023年度は「コレクティブ・インパクト・ベース」という活動を立ち上げ、社会課題について知見を深めたり、その先の展開として政策提言にまとめたりするためのプラットフォームをつくりました(詳細は「Special Contents:Social Impact」参照)。
コレクティブ・インパクト・ベースは社会課題に関心や興味を持つメンバーにとって、どこに課題があり、どんな取り組みが実行性を持つかなどについて、知識を得るだけでなく、体感を通して目利き力を高める機会にもなります。 また、ビジネスを通じた課題解決について議論する場としても機能し、その結果として、私たちの提供価値の高度化にも結びついています。
私たちのソーシャルインパクトの活動は、短期的な収益にとらわれず、中長期の視点も併せ持つ両輪の取り組みであることが特長です。
社会課題の解決は、短期的なリターンや事業化に結びつかないといった実利的な観点からの課題が指摘されますが、畑から実を刈り取るだけではサステナブルな活動になりません。 重要なのは中長期の視点で土を耕し、新たな種を植えて活動を循環させていくことです。 ソーシャルインパクトの活動も、現時点では経済的な成果に結びつかないこともありますが、短期と中長期の時間軸をバランスよく見ることが、隠れた課題をあぶり出すことにつながります。
ソーシャルインパクトの活動はすぐに華々しい成果が出るものではなく、複雑な課題であるほど解決するまでの時間と労力がかかります。 言い換えれば、将来的に社会を大きく変えていくためには、目の前の課題と真摯に向き合い、解決に向けて地道に取り組んでいく過程が不可欠だということです。
プロフェッショナル・サービス・ファームである私たちは、自ら行動を起こし、社内外の仲間を増やしながら粘り強く取り組むことで、未来を変えるための大きなインパクトを生み出していきたいと考えています。