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近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。
今回は、以下のトピックについてご紹介します。
EUは、2024年4月11日、刑法による環境保護に関する指令(Directive 2024/1203 on the protection of the environment through criminal law1)(以下「本指令」といいます。)を採択しました。環境犯罪が世界的に年5-7%のペースで増加し、環境、健康及び経済に対して年間800億~2,300億ユーロもの損害を及ぼす脅威となる一方で、その摘発等が十分になされない状況下、本指令は、環境犯罪に係る調査や刑事責任の追及のあり方の改善を目的として、従前の指令(Directive 2008/992)(以下「旧指令」といいます。)に代えて、環境犯罪となる行為を拡大し、刑罰等を強化する方向で、EU全域におけるそれらの最低基準を定めるものです3。
本指令は2024年5月20日に施行され、当該施行後2年以内に、EU加盟国がそれぞれ本指令を反映した国内法を制定することにより、本指令が各国において適用されることとなります。なお、本指令が定めるのは最低基準にすぎないため、EU加盟国においては、より厳格な国内法を制定することも許容されています。
また、EU加盟国は、環境犯罪行為の全部又は一部が自国内で実行された場合のみならず、他国で実行された行為による損害が自国で発生した場合にも管轄権を有することとなります(本指令第12条)。
本指針においては、環境犯罪に該当する行為類型が大幅に拡大され、大まかには、以下の各類型が規定されています(本指令第3条)。EU加盟国は、これらの行為が故意又は少なくとも重過失でなされた場合に環境犯罪に該当するよう確保する義務(同条)や、また、これらの行為の扇動、幇助又は教唆や、一部の行為の未遂についても環境犯罪に該当するよう確保する義務を負います(本指令第4条)。
規定される環境犯罪の行為類型(本指令第3条第2項(a)~(t)) | |
旧指令より存するもの4 | (a) 大気、土壌又は水中への大量の物質、エネルギー又は放射線の排出等(※) (f) 廃棄物の回収、運搬、処分等(※) (g) 廃棄物の船舶輸送 (j) 危険な活動がなされる、又は、危険な物質が貯蔵若しくは利用される施設の操業又は閉鎖(※) (l) 放射性物質の製造、生産、加工、取扱い、使用、保有、保管、輸送、輸出入又は処分等(※) (q) (n)(o) 保護されている野生動植物の殺生、保持、売却等保護地域における生息地の重大な破壊を引き起こす行為 (s) オゾン層を破壊する物質の生産、輸出入、上市等 |
本指令によって新設されたもの | (c) (b) 規制に違反してなされる大気、土壌又は水中への大量の物質、エネルギー又は放射線の排出等に繋がる製品の上市(※)規制に違反してなされる一定の物質の製造、上市、輸出又は利用(※) (d) 規制に違反してなされる水銀等の製造、利用、保管又は輸出入(※) (e) 規制に違反してなされる開発プロジェクトの実施(※) (h) 規制に違反してなされる船舶のリサイクル (i) 水質の悪化又は海洋環境の破壊を引き起こすか、又は引き起こすことが見込まれる汚染物質の船舶による排出 (k) 規制に違反してなされる一定の施設の建設、操業又は解体等(※) (m) 地表水の環境状態等の損害を引き起こすか、又は引き起こすことが見込まれる取水 (p) 規制に違反してなされる一定の製品のEU市場における上市又はEU市場からの輸出 (r) 規制に違反してなされる侵略的外来種のEU域内への持ち込み、上市等(※) (t) 規制に違反してなされるフッ素系温室効果ガスの製造、上市、輸出入等 |
(注)上表において、※が付された類型は、人の死若しくは重大な傷害、空気、土壌若しくは水の質への重大な損害、又は生態系、動物若しくは植物への重大な損害を、引き起こすか又は引き起こすことが見込まれる行為であることを要します。
本指令に伴う環境犯罪の範囲の拡大及び重罰化は、EU域内で事業を展開する日本企業に対しても重大な影響を及ぼすことが想定されます。また、取引をするEU域内企業等が本指令及び本指令を受けて各加盟国が制定する国内法を遵守するため、日本企業に対して契約上の義務を要求することも想定されます。
日本企業としては、本指令等の内容を把握した上で、自社の事業内容も踏まえて自社に及び得る影響を特定し、弁護士を含む専門家のアドバイスを受けながら、対応方針の策定や社内体制(社内規程・手続の制改定、内部監査、研修等)の整備等の適切な措置を講じていくことが求められます。
1 本指令
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:L_202401203
2 旧指令
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32008L0099
4 旧指令より存する類型についても、厳密な構成要件は本指令によって随所変更されています。