カスタマージャーニーにおけるそれぞれの瞬間を強化する ‐ 世界の消費者意識調査2019

人は良い体験に高いお金を払う

カスタマージャーニー(Customer Journey)における阻害要因に対処し、消費者の期待と製品やサービスの溝を埋める[English]よう努力している企業は、消費者のロイヤルティを得るだけでなく、価格を上乗せすることも可能です。

例えば、PwCの世界の消費者意識調査2019によれば、Amazonプライムの会員は2017年から年々増加しています。そしてサイトを利用する回答者の半数近く(46%)は、Amazonの体験が優れているために、Amazonだけで買物をする、またはAmazonでよく買物をするようになったと答えています。消費者は明らかにAmazonのショッピング体験を喜び、プライム会員の年会費を払って会員特典を利用する人も増えています。

ワンランク上の価格を払う買物客は、パーソナルショッパーやスタイリストなどの高度なサービスや、モバイル決済、最先端テクノロジーなどの高い利便性を望んでいます。持続可能なブランドやオーガニック食品など、製品の信頼できる特性に対しても高い価格を払います。

消費者の「魔法の瞬間」を生み出す

買物において、消費者が欲しいもの、必要なものを、欲しい時、必要な時に提供する、この「魔法の瞬間」を提供することで企業は消費者を喜ばせることができます。これが企業の売上を増やし、ニーズを予期した小売店と満足した消費者の絆を深めるということは不思議なことではありません。調査の回答者によれば、店内の体験が非常に良いと感じる要素のトップ3は、店内で商品が探しやすい、店員が製品について詳細な知識を持っている、支払いがスピーディーで簡単、でした。

例えばオンラインで食料品を注文し、実店舗で受け取るとします。受け取りに行くと、店員が、昨年のこの時期には誕生日ケーキを購入していたことを告げ、尋ねます。「注文にケーキを追加しますか?」これが魔法の瞬間です。

しかし、消費者にとって買物を簡単にするのは、小売店にとっては大変な作業です。ストアマネジャーは在庫を完璧に把握し、サプライチェーンが需要の高い商品を適切な時に適切な数量だけ納品してくれることを確認し、商品を受け取ったらすぐに注文をまとめる人手、システム、プロセスを準備する必要があります。また、消費者の買物履歴を調べるツールをスタッフに提供しなければなりません。商品を受け取りやすい安全な場所も確保する必要もあります。さらに重要なのは、このシステムについて、消費者を教育することです。

とにかく経費を抑えようとする習慣のある経営者は、必要経費のリストを見て尻込みするかもしれません。しかし、この支出を出費ではなく、投資と考えてみてはどうでしょうか?コンシューマーエクスペリエンスの改善に投資すれば、顧客が定着し、良い口コミが流れ、売上が伸びます。重要なのは、顧客の購買ジャーニー(Purchase Journey)にとって重要な要素を理解し、適切な場所にリソースを割り当てることです。

有料メディアからパーソナライズされた本格的な体験へ資金を移行する

有料広告の力は減退しています。PwCの調査回答者の35%は、自分の決断に最も大きな影響を与える要素として従来のテレビCMを挙げていますが、26%は好きなブランドや製品のキャンペーン、プロモーションに直接リンクする広告を挙げています。また、25%はインタラクティブなソーシャルメディア広告を選んでいます。

つまり、有料広告が行動のきっかけになるとしても、企業各社は、消費者との有意義な関係を育む体験を創造することに力を注ぐべきだということです。ある消費財メーカーのオンライン店舗のディレクターは、2019年1月のインタビューでPwCに対して以下のように言い切っています。「ほとんどの企業は、インターネットを通じたつながりや取引がテレビを超えたことを理解しています。資金の妥当な部分をデジタル取引にまだ移行していない企業は、乗り遅れていると思います」

消費者との関係が構築できている企業は、従来の広告のように確立された経路で何度も消費者とかかわらなくても、コミュニケーションを継続することができます。例えばCanon USAは、印刷広告とテレビCMの予算を、潜在的な顧客との本格的な取引を提供するイベントに移しました。同社は、全米オーデュボン協会が年1回開催しているホークフェスティバルと提携し、イメージライブラリを設置しました。ここでは参加者が、鷹のわたりを撮影した写真をアップロードし、共有することができます。Canonのセールスデベロップメント、Eコマース、戦略担当ディレクターであるMatt Gorman 氏は、2019年1月のインタビューでPwCに対して次のように語っています。「例えば鳥に関心を持つ人の気持ちを把握できれば、『マーケティング』をその方向に合わせることができます」

パーソナリゼーションの重要性は、一部の企業がシームレスな体験を提供しようとしていることにも反映されています。そのことで、これまでと違ったパートナーと協力することすらあります。電子・電化製品の小売会社であるBest Buy[English]は、スマートホーム機器と高齢者向けの月決めモニタリングサービスを提供するため、医療のソリューション会社とこのほど提携しました[English]。これは、すでに展開している無料ホームデザイン/コンサルテーションと併せ、同社の顧客に対するフルサービスモデルを強化することになります。

マルチチャネルな消費者と取引するにはマルチチャネルマーケティングが必要である

昨今、消費には、アプリ、デジタルサービス、ソーシャルコミュニティ、実店舗など、小売に限らず、幅広い業界にわたって多くの方法があります。PwCの調査回答者の75%近くが、3種類ものヘルスケア、ウェルネス、フィットネスに関するアプリをスマートデバイスで利用しています。54%の人がストリーミングサービスを通じて動画やテレビ番組を週に2回以上視聴し、有料のケーブルテレビ契約を解約する「コードカッティング」をしています。また、80%以上が、過去1年間で1回以上、デジタルチャネル金融/財務取引を実行しています。

しかし、オンライン消費が増加しても、対面での接客の重要性に変わりはありません。顧客とつながるチャネルとして無視すべきでもありません。欧州、中東、アジア地域におけるMetLifeのD2C/デジタル革新部門責任者であるFrançoise Lamotte 氏は、既存の顧客には特定のことに関してオンラインやモバイルアプリに移行してもらえる一方、潜在的な顧客に対しては、まだ人間が商品の説明をし、共感を得るためのセールストークを実行する必要があると考えています。

自動車業界も、すでに顧客へアプローチするために従来とは異なるチャネルに投資をしています。2018年のPwC Strategy&のレポート[PDF 5,036KB]によれば、欧州の消費者の47%、中国の消費者の79%が、手頃な料金のロボタクシーを利用できるならマイカーを手放してもいいと考えています。この状況を受け、一部の自動車ディーラーはライドシェアの会社と提携し[English]、オンデマンドモビリティ専用の車両や特別ローンをドライバーに提供しています。

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主要メンバー

矢矧 晴彦

マネージングディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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