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不動産業界は依然として資本コストの高い環境へと移行中ですが、最近のインフレの進展や世界的な金利の引き下げの見込みから、不動産のディールメーカーを取り巻く事業環境は好転しています。このことが投資家の信頼を高め、結果として2024年の不動産M&A活動の復活につながると期待しています。
不動産セクターは、今後のM&A活動の規模や形態に影響を与えるような課題に直面し続けています。ディールメーカーは、資産の運用パフォーマンスを最適化し、資本コストの上昇に対応するため、不動産ディールをより柔軟かつ創造的に組み立てる必要性をますます考えるようになっています。その他に2024年の案件組成のペースに影響を与える可能性のある短期的な不確定要素としては、世界各地で今後実施される選挙の結果や、地政学的緊張の継続がクロスボーダーM&A活動に与える影響などがあります。中長期的なメガトレンド(人口動態の変化、住宅価格の値ごろ感、脱炭素化、デジタル化など)はすべて、ディールメーカーが不動産ポートフォリオを構築またはリバランスする際に考慮すべき重要な要素です。
ほとんどの不動産セクターのファンダメンタルズは総じて堅調で、優良資産に対する投資家の需要は引き続き健全です。しかし、特に米国のオフィスサブセクターは引き続き不透明な需要に直面しており、その結果、ストレスが高まっています。オフィスサブセクターがより広範な商業用不動産セクターのリスクと機会の認知に大きな影響を及ぼすことで、バリュエーションに対する不確実性が生じています。全体として、資産価格の不確実性は、今のところ一部のトランザクションを抑制する重要な要因であり続けています。ディストレス・トランザクションは今後も発生すると思われます。しかし、相対的な供給とレバレッジのレベル、そしてレンダーがスポンサーとの関係を維持するために協力を望んでいることを考慮すると、2008年の世界金融危機の際に見られた水準に比べれば、影響は低水準にとどまる可能性が高いと思われます。
「世界中の不動産産業でトランスフォーメーションが進行しており、M&A戦略の転換、価値創造への注力の強化、新しい環境に対応するための専門家のスキルアップが求められています」
Tim Bodner,PwC米国、パートナー、グローバル不動産ディールリーダー2024年には以下の分野におけるM&Aが活発になると予想します。
マクロ経済や政治環境が不透明なため、資本調達が難しくなっています。信用面では、銀行や生命保険会社がコベナンツ(契約条項)やローンサービシングの問題が予想されることから融資基準を厳しくしており、債務の借り換えや新規投資に対する資本の利用可能性は低下すると予想されます。加えて、債券やその他の資産はより高いリスク調整後リターンを提供するため、一部の機関投資家は不動産配分を減らして債券を選好しています。しかし、2024年には金利引き下げが予定されており、貸出基準が緩和され、その結果、信用力が向上するでしょう。その間も、しっかりとした計画を持つ信頼できる借り手は資金を確保できるものと思われます。
北米と欧州では、伝統的な金融機関の撤退により、民間の貸し手が資金ギャップを埋めるために参入する機会が生まれています。2024年には、2023年よりも民間クレジットファンド、オルタナティブ・レンディング・プラットフォーム、銀行以外の機関からの融資が増えると予想されています。欧米諸国と同様、アジア太平洋地域の国々も、政府の直接介入によるものではありますが、資本収縮に見舞われています。しかし、多くのアジア太平洋諸国では、開発資金を調達するために負債を活用しない裕福な投資家が所有する不動産が多いため、この影響は緩和されています。
エクイティ面では、多くの銀行が現在、プロジェクトの融資比率を下げるために借り手にエクイティの増額あるいは銀行への預金を要求しています。しかし、2024年にはスポンサーがドライパウダーを投入するため、エクイティの利用可能性が高まると予想されます。欧州では、パリやロンドンなど一等地の優良物件を求めるアジアの富裕層投資家からの活発な投資が目立っています。ディストレスト(不良債権)案件の購入機会を求めて多くのエクイティが待機しているため、2024年には投資額が増加すると予想されます。特にリファイナンスが活発化するにつれて、今後1年から1年半の間にバリューの修正が加速すると見られます。
2024年には、より多くのファンドがディストレスト不動産を購入する機会に備えて資金を調達すると予想されます。不動産の所有者や運営者は、金利が下がるまで不採算資産を持ち続けるか、それとも今損失を出して将来のさらなる損失を回避するかという難問に直面しています。すぐに売却する動機や圧力がないオーナーは売却に消極的で、そのため売却トランザクションが滞っています。トランザクションが低水準であることにより、投資家は買い手と売り手が合意できる価格に向けた交渉が行いづらくなり、ビッドとアスクのギャップが広がっています。しかし、業界が期待値を再調整するにつれて、市場参加者は再び取引を開始すると予想されます。
PwCの「第27回世界CEO意識調査」によると、不動産業界のCEOの44%が、現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、10年後に自社が経済的に存続できないと考えており、1年前の調査対象者の36%から増加しています。気候変動、テクノロジーによるディスラプション、人口動態の変化といったメガトレンドから、マクロ経済やその他の産業要因に至るまで、CEOは、この新しい時代に成功するため、あるいは生き残るために、戦略を適応させ、事業を変革する必要性を認識しています。
不動産業界の成長見通しが鈍化する中、企業は業務の合理化、反復的な管理業務における新技術の活用、エネルギー効率の改善による営業コストの削減などの対応が求められています。
環境・社会・ガバナンス(ESG)は、世界中の不動産投資判断の主な原動力の1つになると思われます。PwCとUrban Land Instituteが発行した「Emerging Trends in Real Estate® Europe 2024(英語ページ)」レポートのリサーチの一環としてのインタビューにおいて、欧州全域で事業を行う不動産会社の最高経営責任者(CEO)は、「ESGコンプライアンスは"あったらいいな"というものではありません」と述べています。機関投資家、貸し手、テナントからの圧力により、気候変動や持続可能性に関する報告やエネルギー使用に関する世界的な規制への準拠は、不動産エグゼクティブの優先事項となっています。CEOは、価値創造の手段として、持続可能性とエネルギー効率にますます注目しています。例えば、より持続可能性の高いビルを運営する企業は、割高な賃料を課すことができ、利益率とキャッシュフローを改善できる可能性があります。米国では、損害保険料が高騰していることや、場合によっては物件の保険に加入できないことにより、利幅が悪化し、オーナーはリスクにさらされています。したがって、持続可能性に重点を置いた資産ポートフォリオの構築に注力するCEOは、リスクを軽減し、新たな機会を創出する上で有利な立場に立つことができるでしょう。
テクノロジーは不動産のバリューチェーン全体に大きな影響を与えると予想され、不動産の専門家はデータを統合し、データの移動と分析を自動化し、より良い意思決定に向けた情報を見極める取り組みを続けています。生成AIが引き続き大きな話題を呼んでいる中、ディールメーカーはAIを活用して指数関数的に増加するデータを分析する能力を、デューデリジェンス・プロセスやビジネスモデルに取り入れるようになると予想されます。不動産業界のCEOが急増するデータをAIによって活用できると期待される分野の一例として、気候やサステナビリティが挙げられます。例えば、AIはさまざまな立地の不動産における気候リスクのモデル化から、水漏れの特定やセントラル空調システムの制御などのモニタリング業務まで、気候変動の影響を評価するために幅広く活用されています。
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世界の不動産業界におけるディールの件数と取引額は、金利上昇、資金調達難、その他多くの逆風に苦戦したため、2023年1-9月期は前年同期比で40%以上減少しました。ディール金額は米州が56%と最も減少し、欧州・中東・アフリカは54%、アジア太平洋は31%しました。ディール件数では、欧州・中東・アフリカが54%と最も減少し、米州は39%減、アジア太平洋は28%減少しました。不動産は現地の市況に大きく左右されるため、欧州のディール件数が減少したのは、同地域が現在進行中の2つの戦争とマクロ経済的課題に地理的に近接していることも一因と考えられます。
不動産業界のディールメーカーは、現在の不透明な状況をうまく乗り切り、価値創造に集中できれば、持続的な成果を生み出すことに成功するでしょう。より慎重な資本市場においては、アジリティと創造性を発揮してディールを構築すること(例えば、売主のアーンアウト条項を追加してビッド・アスク・スプレッドを埋める、あるいはベンダーのテイクバック・モーゲージを追加して資金ギャップを管理する、など)が強みとなるでしょう。十分な準備をしておくことで、ディールメーカーは適切な機会が訪れたときに迅速に行動することができます。
※本コンテンツは、PwC米国が2024年1月に公開した「Global M&A trends in real estate: 2024 Outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。