デジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、第一線のビジネスの現場にとどまらず、リスク管理や経営企画、内部監査も含めた、3つのディフェンスラインの全てに影響を与えています。デジタル革命を通じて、経営者は、従前以上に、企業活動全体の「いま」を的確に把握し、タイムリーに意思決定に生かすことができるようになっています。具体的には、経営者は、従来型の「定期的」かつ「サンプリングに基づくモニタリング」する手法にとどまらず、企業活動全体を「継続的」かつ「網羅的にモニタリング」する手法を利用することもできるようになってきました。データ分析の活用を通じた企業活動の透明性の向上は、持続的な企業価値創造の助けともなります。
デジタル革命の恩恵をより早く、より多く享受するためには、それぞれのディフェンスラインにおいて、バラバラにデータの入手・分析を行うのではなく、共通のデータ分析プラットフォームを活用することが有意義です。そこで、本稿では、このような継続的かつ網羅的なデータ分析を実現するためにPwCアジア各国で共同開発したデータ分析プラットフォームである「Financial Processes Analyser(」以下、「FPA」。)の概要をご紹介します。なお、文中の意見に係る部分は筆者たちの私見であり、PwCあらた有限責任監査法人または所属部門の正式見解ではないことをあらかじめご理解いただきたくお願いします。
FPAは、組織の主要なプロセスとその管理活動、レポーティング業務、モニタリング活動全体の透明性・信頼性の向上に貢献するデータ分析プラットフォームです。FPAはモニタリングを継続的かつ網羅的に実施することをサポートするため、以下の特徴・機能を備えています(図表1)。
FPAは、基本的にはクラウド型サービスですが、オンプレミスでの設定も可能です。さまざまなユーザーが、さまざまなデバイスを通じてFPAの各モジュールに24時間年中無休でアクセス可能とすることで、分析から得られる示唆を共有することができます。一般的に、データ分析プラットフォームの導入に際しては、「システム開発の高い負荷が高い」「分析結果からアクションにつながらない」「導入までの時間がかかり過ぎる」といった課題が散見されますが、FPAはSaaS形式で利用可能であるため、システム開発をせずにビッグデータの分析に向けた第一歩をすぐに踏み出すことができます。
継続的モニタリングを導入していない企業では、リスクが顕在化する大きな事案が発生したときに初めてリスクが特定される傾向にあります。事前にリスクを特定し大きな事案を未然に防ぐためには、継続的に幅広く取引データの分析を行い、リスクを察知するアンテナを張っておくとともに、その状況を3つのディフェンスラインで共有しておくことが有意義です。FPAには150種類以上の標準的な分析を実装しているため、幅広いリスクに対する早期の分析が可能です。リスクを察知するグループ共通のアンテナとして、FPAを活用することが有効です。
継続的モニタリングの事例として、販売プロセス・購買プロセス・人事給与プロセスの3モジュールを題材に、具体的な分析の事例と視点の一部を抜粋してご紹介します。
企業のグローバル化、DXが今後もますます加速していく中で、多種多様な地域・ビジネスを継続的に可視化できるデジタルプラットフォームを組織内で共有することは、持続的な価値創造を実現する上で不可欠です。FPAには引き続き、マシンラーニング機能を含め、さまざまな機能・利便性を追求予定です。私たちは、経営者はもとより、実務を担われている皆さまと一緒に高速でPDCAをまわし、試行錯誤しながら、ディフェンスライン共通で、より使いやすく、より便利なデジタルプラットフォームの活用に向けて、精進してまいります。
下記Webページでは、Financial Processes Analyser (FPA)を動画で解説しています。あわせてご参照ください。
PwC Japanでは、業務プロセス・システム・組織・データ分析の領域おいて、監査業務を通じて得たナレッジから保証業務のみならず、経営課題の解決のためのアドバイザリーサービスも提供します。
ガバナンス・リスク管理・コンプライアンスの構築、金融庁等の監督当局による規制対応など多様なサービスを提供しています。
データアナリティクスは、社内外に存在するデータを利用し、分析することにより、企業の現状を適切に把握し、リスク評価の精緻化、網羅性の確保や業務効率化によるコスト削減などの業務改善に資する情報を提供します。
PwCは、クライアントの現状を分析し、強固なデータ基盤を構築し、データを生かした収益化を支援します。ビジネスパフォーマンスの最適化やデータが生み出す市場機会の実現に向けて、保有資産、すなわちデータの力の活用を支援します。