デジタル・トラストサービス・プラットフォームの利活用による理念追求

はじめに

PwCあらた有限責任監査法人は、2018年11月に「Vision 2025“デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム”」を発表しました。Vision 2025とは、当法人がPwCのPurpose(存在意義)である「社会における信頼を築き、重要な課題を解決する」を実現し、社会から必要とされる存在であり続けるために、2025年における私たちを取り巻く環境を概観し、今後の法人の在り方を構想したものです。「信頼(トラスト)」をキーワードとし、「品質の追求「」トラストサービスの拡充」「デジタル化とデータ活用」「人財の未来への投資「」ステークホルダーへの発信と対話」の 5つを戦略的優先領域に挙げています。

本稿では、戦略的優先領域の一つ「トラストサービスの拡充」に焦点を当て、デジタル・トラストサービス・プラットフォームの利活用による理念追求について解説いたします。

1 PwCの存在意義(Purpose)

PwCの存在意義(Purpose)は、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」です。これは理念ともいえるもので、PwCのビジネスとは何か、PwCはなぜ存在するのかを明確にし、あらゆる意思決定における極めて重要な道しるべやベンチマークの役割をもっています。私たちのVision 2025「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」、「トラストサービスの拡充」は、このPwCの存在意義(Purpose)を追求するために作られました。

2 Vision 2025の実現のために―監査を応用したトラストサービスの拡充

トラストサービスの本質は、企業や社会が抱える不安や心配、信頼を失墜させるような不祥事など、信頼に関する経営・社会課題を対象として、PwCの専門家の知見、デジタル技術やネットワークを駆使してこれらの課題を解決することにあります。

PwCの伝統的な事業である監査は、トラストサービスのコア事業です(図表の「Core Audit」参照)。監査の基本的構造と私たちの専門性やネットワークを駆使して、企業や社会の信頼に関するさまざまな課題を解決しようとする取り組みが「トラストサービスの拡充」です。

現在、トラストサービスの対象範囲は、財務情報の信頼に関する課題にとどまらず、業務・プロセスの信頼や、さらには個人や社会の信頼に関する課題にまで広がっています。

また、信頼に関する課題を解決する方法(サービスの種類)は以下のように多様化が進んでいます。

・「信頼の付与」型サービス

サービスの対象が、伝統的な監査のような財務情報だけでなく、内部統制監査に代表される「業務・プロセス」や、金融機関などの赤道原則運用状況に関する開示に対する独立業務実施者としての保証業務などに見られるような非財務情報にまで広がっています。

・「信頼づくりのサポート」型サービス

サービスの対象が、従来の財務報告の信頼性を確保するための体制づくりのご支援から、会計不正リスク、贈収賄リスク、サイバーセキュリティリスク、カルテルリスク、エネルギー・カーボンリスクなど、クライアントの重要なリスクを企業グループやサプライチェーン全体で制御するためのGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)体制を構築するご支援業務に広がっています。

・「信頼の基盤の創生」型サービス

世の中の信頼に関する課題の中には、信頼性を確保するための基準がない、効率良く信頼性を検証する仕組みがないため費用対効果が見合わないなど、制度的・デジタル技術的な基盤(インフラ)が整備されていないことに起因するものがたくさんあります。PwCはこれらの課題を解決するために、制度づくりやデジタル・トラストサービス・プラットフォームの開発に取り組んでいます。

3 デジタル・トラストサービス・プラットフォーム

情報オーバーロードを起こしているといわれるデジタル社会において、PwCの存在意義(Purpose)を追求し、Visionを実現しようとするならば、トラストサービスの生産性および品質を大幅に改善し、より多くの方にご利用いただけるような体制を構築しなければなりません。そこでPwC Japanグループは、安全かつ迅速に品質の高いトラストサービスをご利用いただけるよう、継続モニタリングのプラットフォームとして、Financial Processes Analyser(以下、「FPA」。)をアジア各国と共同開発するとともに、クラウド上にデジタル・トラストサービス・プラットフォーム(以下、本稿では便宜上「PLAT」といいます)を構築しました。FPAやPLATを利活用することによって、秘匿性の高い情報であっても、安全に、効率良く、情報処理作業(収集、分類、整理、計算、保存、報告書作成など)を行うことができます。

次のページからはFPAをご紹介するとともに、PLATの全体像を皮切りに、外部委託先管理、リスク情報管理、内部通報管理、ESG情報管理、情報収集・管理、といった利用シーンに応じたPLATの活用事例とメリットをご説明します。

デジタル・トラストサービス・プラットフォーム

PwCのデジタル・トラストサービス・プラットフォームは、経済社会の「信頼」の改善を⽀援するための基盤です。デジタル技術の進展によって、世の中の信頼に関する課題が⼤きく変わる中、PwCʼs Lab Assistance Toolをはじめとするクラウドサービスを通じて、PwCは「信頼の空⽩域(トラスト・ベイカンシー)」の補完を支援します。

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執筆者

丸山 琢永

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人, PwCビジネスアシュアランス合同会社

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