2025年の見通し

消費者市場における世界のM&A動向

Global M&A Trends in Consumer Markets hero image
  • 2025-03-10

投資家の自信が回復し、企業が戦略を見直す中、消費者市場のディールメーキングは2025年に回復の兆しを見せ始めています。

2024年に発表された大型ディールは、消費者市場セクター全体で増加しています。この動向は消費者市場のM&A活動が回復しつつあり、2025年には投資家の信頼が回復し、成長を目指す企業による戦略的トランスフォーメーションが加速することを示唆しています。消費者心理はパンデミック後のインフレと金利の急上昇から完全には回復しておらず、特に関税、地政学的紛争、気候変動の影響など、いくつかの不確実性が依然として残っています。しかし、このセクターのバリュエーションが上昇し、パイプライン活動が活発化していることから、ディールメーカーの楽観的な見方が強まり、2025年のM&A件数と金額が増加することが予想されます。

マクロ経済の不確実性、資金調達の課題、売り手と買い手の価格に対する期待の不整合などが、過去2年間にわたり消費者市場のM&A活動を鈍化させました。2024年の消費者市場のディール件数は2023年に比べ16%減少しましたが、ディール金額は13%増加し、過去1年間に発表された大型ディールの影響が浮き彫りになりました。

2025年に入り、いくつかのマイナス要因は緩和され始めています。例えば、一部の国では物価上昇圧力が続いているものの、世界のインフレ率は概ね落ち着いており、金利は以前より高い水準で安定しています。国際通貨基金(IMF)の推計によると、2024年から2025年にかけての世界のGDP成長率は3.2%と予測されており、パンデミック前の20年間の平均成長率である3.7%をやや下回る水準で安定的に推移する見込みです。PitchBookのデータによると、北米および欧州の消費者セクターのEBITDAマルチプルは2023年の9.0から2024年第3四半期には9.5に上昇し、同セクターの売上高マルチプルも同期間に1.0から1.2に上昇したように、市場は消費者市場のバリュエーションが上昇していることに注目をしています。

最近では、マクロ経済の改善が一部の先進諸国における実質賃金の上昇に寄与しています。しかし、消費者の購買力と消費マインドは依然としてインフレの影響を受けています。いくつかの国では、家計貯蓄率が高くなっており、これは消費者の警戒感を反映しています。例えば欧州では、家計貯蓄率は2022年の7.3%から2025年初頭には8.2%に上昇し、パンデミック前の水準を約1.5%上回ると予想されています。

好景気のニュースと消費者の景気認識との間にはしばしばタイムラグがありますが、現在の断絶は、消費者側が長引く「バイブセッション(景気後退)」に直面している可能性を示唆しています。

「消費者が『バイブセッション』を経験しているように見えるとしても、投資家の活動や市場環境の緩和に支えられ、消費者市場のディールパイプラインが埋まってきている兆候は明らかです」

Hervé Roesch、PwC英国、パートナー、グローバル消費者市場ディールズリーダー

最近のインフレによる価格上昇の局面では、消費者市場の企業は販売量の圧縮を経験しました。しかし、そのような段階は終わりを告げ、企業経営者は、特定のカテゴリーの売却、他のカテゴリーにおけるポジション強化、新市場への参入、新たな顧客ニーズに対応するための新たな方法の開発などを通じ、業績を伸ばすためにポートフォリオを積極的に管理しています。最近発表された2024年のディールの例としては、MarsのKellanova買収案やUnileverのアイスクリーム事業売却などがあります。

また、プライベート・エクイティ(PE)が保有する多くの消費者向けアセットが2025年にエグジットされると予想されます。ここ数年、PEの保有期間はすべてのセクターで長期化しています。Gain.proが実施した欧州PEのエグジット分析によると、消費者市場のアセットには、どのセクターよりも保有期間が長いという好ましくない特徴があります。2023年から2024年にエグジットされた消費者市場のアセットの平均保有期間は、2019年から2020年の5.1年から6.3年に増加しました。バリュエーションとエグジット環境の改善と、リミテッドパートナー(LP)出資者やファンドクローズへの資金返還の圧力が相まって、M&Aがさらに活発化することが予想されます。これは、2025年の消費者市場のアセット売却活動にとって良い兆しです。

L CattertonによるTod'sの買収に伴う上場廃止、ApolloによるInternational Game Technologyのゲーム・デジタル事業の買収提案、International PaperによるDS Smithの買収提案など、非公開化および上場廃止のトランザクションのトレンドは2025年も続くと予想され、特に米国以外の市場では、このセクターにおける市場株価が低水準にとどまる可能性があります。

76%

過去3年間に大規模な買収を行った消費者市場のCEOのうち76%のCEOが、今後3年間で1つ以上の買収を計画している。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

環境規制や企業の環境プロファイルに対する消費者の認識は、特に包装、小売、消費財セクターに影響を与え、ますます投資判断に影響を与えるようになっています。特に欧州では、今後予定されている法規制に直面した際に、業績の持続可能性を実証できるかどうかが、多くのM&Aプロセスにおいて重要な成功要因となっています。

消費者市場における世界のセクター別M&A動向

消費者市場における2025年のM&Aの見通し

消費者市場では2025年に向けて成長が再び課題となっており、このセクターの大半の事業者にとっては販売量を伴った利益ある成長が主な目標となっています。企業ではポートフォリオの再編が活発になり、PEでは流動性主導のエグジットが増えると予想されます。そのため、消費者市場のディールパイプラインはここ数年来で最も強力なものとなるでしょう。

※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in consumer markets: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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