
2024年上半期最新情報 消費者市場における世界のM&A動向
消費者市場の2024年上半期のディール件数は、すでに低水準にあった前年同期からさらに減少しました。ディール金額も前年同期を下回りましたが、超大型ディールが全体の金額を下支えしている状況です。下半期のディールは改善が見込まれています。
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2024年に発表された大型ディールは、消費者市場セクター全体で増加しています。この動向は消費者市場のM&A活動が回復しつつあり、2025年には投資家の信頼が回復し、成長を目指す企業による戦略的トランスフォーメーションが加速することを示唆しています。消費者心理はパンデミック後のインフレと金利の急上昇から完全には回復しておらず、特に関税、地政学的紛争、気候変動の影響など、いくつかの不確実性が依然として残っています。しかし、このセクターのバリュエーションが上昇し、パイプライン活動が活発化していることから、ディールメーカーの楽観的な見方が強まり、2025年のM&A件数と金額が増加することが予想されます。
マクロ経済の不確実性、資金調達の課題、売り手と買い手の価格に対する期待の不整合などが、過去2年間にわたり消費者市場のM&A活動を鈍化させました。2024年の消費者市場のディール件数は2023年に比べ16%減少しましたが、ディール金額は13%増加し、過去1年間に発表された大型ディールの影響が浮き彫りになりました。
2025年に入り、いくつかのマイナス要因は緩和され始めています。例えば、一部の国では物価上昇圧力が続いているものの、世界のインフレ率は概ね落ち着いており、金利は以前より高い水準で安定しています。国際通貨基金(IMF)の推計によると、2024年から2025年にかけての世界のGDP成長率は3.2%と予測されており、パンデミック前の20年間の平均成長率である3.7%をやや下回る水準で安定的に推移する見込みです。PitchBookのデータによると、北米および欧州の消費者セクターのEBITDAマルチプルは2023年の9.0から2024年第3四半期には9.5に上昇し、同セクターの売上高マルチプルも同期間に1.0から1.2に上昇したように、市場は消費者市場のバリュエーションが上昇していることに注目をしています。
最近では、マクロ経済の改善が一部の先進諸国における実質賃金の上昇に寄与しています。しかし、消費者の購買力と消費マインドは依然としてインフレの影響を受けています。いくつかの国では、家計貯蓄率が高くなっており、これは消費者の警戒感を反映しています。例えば欧州では、家計貯蓄率は2022年の7.3%から2025年初頭には8.2%に上昇し、パンデミック前の水準を約1.5%上回ると予想されています。
好景気のニュースと消費者の景気認識との間にはしばしばタイムラグがありますが、現在の断絶は、消費者側が長引く「バイブセッション(景気後退)」に直面している可能性を示唆しています。
「消費者が『バイブセッション』を経験しているように見えるとしても、投資家の活動や市場環境の緩和に支えられ、消費者市場のディールパイプラインが埋まってきている兆候は明らかです」
Hervé Roesch、PwC英国、パートナー、グローバル消費者市場ディールズリーダー最近のインフレによる価格上昇の局面では、消費者市場の企業は販売量の圧縮を経験しました。しかし、そのような段階は終わりを告げ、企業経営者は、特定のカテゴリーの売却、他のカテゴリーにおけるポジション強化、新市場への参入、新たな顧客ニーズに対応するための新たな方法の開発などを通じ、業績を伸ばすためにポートフォリオを積極的に管理しています。最近発表された2024年のディールの例としては、MarsのKellanova買収案やUnileverのアイスクリーム事業売却などがあります。
また、プライベート・エクイティ(PE)が保有する多くの消費者向けアセットが2025年にエグジットされると予想されます。ここ数年、PEの保有期間はすべてのセクターで長期化しています。Gain.proが実施した欧州PEのエグジット分析によると、消費者市場のアセットには、どのセクターよりも保有期間が長いという好ましくない特徴があります。2023年から2024年にエグジットされた消費者市場のアセットの平均保有期間は、2019年から2020年の5.1年から6.3年に増加しました。バリュエーションとエグジット環境の改善と、リミテッドパートナー(LP)出資者やファンドクローズへの資金返還の圧力が相まって、M&Aがさらに活発化することが予想されます。これは、2025年の消費者市場のアセット売却活動にとって良い兆しです。
L CattertonによるTod'sの買収に伴う上場廃止、ApolloによるInternational Game Technologyのゲーム・デジタル事業の買収提案、International PaperによるDS Smithの買収提案など、非公開化および上場廃止のトランザクションのトレンドは2025年も続くと予想され、特に米国以外の市場では、このセクターにおける市場株価が低水準にとどまる可能性があります。
過去3年間に大規模な買収を行った消費者市場のCEOのうち76%のCEOが、今後3年間で1つ以上の買収を計画している。
出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)
環境規制や企業の環境プロファイルに対する消費者の認識は、特に包装、小売、消費財セクターに影響を与え、ますます投資判断に影響を与えるようになっています。特に欧州では、今後予定されている法規制に直面した際に、業績の持続可能性を実証できるかどうかが、多くのM&Aプロセスにおいて重要な成功要因となっています。
食品・飲料業界の全体的な市場環境は、2025年にはより良好になると予想されます。食料品の指数は2022年のインフレ主導の高値から下落を続け、これによりさらなる価格引き下げが可能となり、数量の回復が促進されると予想されます。
Marsによる世界的なスナック企業Kellanovaの360億米ドルでの買収提案、Carlsbergによる清涼飲料会社Britvicの買収提案、General Millsによるフランスの大手乳業会社LactalisとSodiaalへの北米ヨーグルト事業の売却発表などに代表されるように、継続的なポートフォリオの見直しは、2024年の一連の取引に続いてM&Aの機会を創出します。2025年に向けて、このセクターのM&Aパイプラインは日用消費財セクターの世界的企業による大規模なカーブアウトに牽引され、より強固なものとなっています。例えば、Unileverはアイスクリーム事業の分離を計画しているほか、同社のCEOは約10億米ドルの食品会社資産の売却計画を発表しました。また、Reckittも中核でなくなったホームケアブランドのEssential Homeポートフォリオからの撤退を含め、ブランドポートフォリオの強化計画を発表しています。また、Mead Johnson Nutrition事業の戦略的な見直しも検討中です。
コンシューマーヘルスのM&A動向は、2024年に発表された、いくつかの重要なディールによるトレンドを受け、2025年も堅調に推移すると予想されます。2024年6月に世界的な製薬会社であるDr. Reddy’sがHaleonのニコチン代替療法カテゴリーにおけるコンシューマーヘルスケアブランドのグローバルポートフォリオ(米国外)を買収することで合意した事例が代表的です。2024年7月には、Cooper Consumer HealthがViatrisの一般用医薬品事業の買収を完了しました。2024年10月には、CD&RがSanofiのコンシューマーヘルスケア事業Opellaの50%の支配権を買収することに合意し、Sanofiは重要な株主として残ることに同意しました。大手事業者は今後もポートフォリオの見直しを続け、その結果、選択的買収と売却の両方が行われると予想されます。最近分社化または売却されたコンシューマーヘルス事業は、M&Aを通じてトランスフォーメーションプランを加速させることが予想されます。また、2025年にはこのセクターでPEが保有する事業のパイプラインが市場に登場し、堅調な活動レベルをさらに後押しするものと思われます。
ペット用品やペットサービスに対する消費者の需要は底堅く、人口動態や消費者の嗜好に支えられ今後も成長が見込まれています。2024年のこのセクターはM&Aの観点からは活発であり、2024年6月から8月にかけて、CVCは欧州のペットフード会社Partner in Pet Foodの株式の過半数を取得することに合意し、Fressnapf Groupはイタリアのペットケア小売業者Arcaplanetを買収し、Bansk Groupは米国のペットの薬・健康・ウェルネス企業会社PetIQの全株式を取得する計画を発表しました。2025年もペットケアセクターのM&Aは活発であると予想されます。
2024年は、Couche-Tardによるセブン&アイ・ホールディングス(セブン-イレブンのフランチャイズで知られる)への買収提案やHudson’s Bay Company(Saks Global)によるNeiman Marcus Groupの買収など、このセクターでいくつかの大型ディールが発表されました。2024年12月に完了したWalmartによるVizio Holding Corpの買収は、小売企業がブランドを活用し、幅広いチャネルで消費者を取り込もうとしていることを物語っています。
ファッションは依然として厳しい状況にあり、「確立したブランド」のオーナーによるシナジーを伴うM&Aが推進されると予想されます。最近の小売ブランドディールの例としては、2024年9月に完了したAuthentic BrandsによるHanesbrandsからのChampionブランドの買収や、2024年10月に完了したEssilorLuxotticaによるVF CorporationからのSupremeブランドの買収が挙げられます。
小売業におけるその他のM&A活動は、ある程度のディストレストから発生する可能性があり、バランスシートが健全化し、シナジー効果と成長の機会を得たコンソリデーターがアセットを引き取ることになるでしょう。
消費者心理が引き続き裁量的支出の重石となっている一方で、観光セクターが回復の兆しを見せています。国連観光局の世界観光バロメーターによると、世界の観光セクターは2024年にパンデミック前の99%まで回復し、2025年も健全な状態が続くと予想されています。M&A活動の中心はホテルで、SPAC(special purpose acquisition company)であるJVSPAC Acquisition Corpとシンガポールを拠点とするHotel101 Globalの合併や、Ares ManagementによるHyatt Hotels CorpおよびLand Securities Group Plcからの2つのホテル資産ポートフォリオの買収が発表されるなど、大規模な取引が行われています。旅行会社も投資家の関心を集めており、American Express Global Business Travelによる世界的な出張および会議ソリューション・プロバイダーCWT Holdingsへの買収提案や、Concord Sponsor Group II LLCによるイベント管理プラットフォーム企業Events.comの買収案などがあります。
米国と欧州では最近、複数のレストラン運営会社が買収されました。これは2025年にこのサブセクターがよりダイナミックな環境になることを示唆しており、そのような環境では既存の事業者は成長を支えるためにM&Aを企図しています。2024年4月にCVCはイタリアンレストランチェーンのLa Piadineriaを買収し、2024年5月には世界的なフードサービス企業のCompass Groupが英国とアイルランドのコントラクトサービスとホスピタリティサービスのプレミアムプロバイダーであるCH&COを買収しました。
消費者の嗜好が製品から体験へと変化し続ける中、ゲームやスポーツ関連のエンターテインメントに対する需要は拡大すると予想されるため、2025年もこのセクターへの投資が継続的に行われると予想されます。2024年には、ApolloによるInternational Game Technologyのゲーム・デジタル事業とEveriの買収提案(63億米ドル)、F1のオーナーであるLiberty MediaによるMotoGPの権利保有者であるDorna Sportsの86%持分の買収提案(45億米ドル)など、活発なディールメーキングが行われました。
2024年には、International PaperによるDS Smithの買収提案や、2024年12月のSonoco ProductsによるEviosysの買収など、いくつかの大型ディールが発表されましたが、Lone StarによるオーストラリアのガラスメーカーOroraの買収提案の謝絶など、このセクターにおけるディールプロセスの失敗も見られました。投入コストの上昇と、特に環境規制に関する規制の不確実性の増大という課題によって一部のプロセスは停滞しており、他の包装アセットが市場に登場するのに時間がかかっています。2025年には状況が安定し、企業が発展途上の環境目標をどのように満たすかをより明確に示せるようになるため、こうしたディールプロセスのいくつかが再開すると予想されます。
2025年は、世界最大の海運会社がM&Aを通じて事業のリストラクチャリングと拡大を図るというように、近年のトレンドが続くと予想されます。2024年9月にDSVはグローバル・ロジスティクス機能を強化し市場リーチを拡大するため、ロジスティクス事業のSchenkerを159億米ドルで買収する提案買収を発表しました。全体として、世界的な不確実性が引き続き国際物流のM&Aの重荷となる一方、陸上物流のM&Aは再編によって推進されると予想されます。
消費者市場のM&A件数は2023年から2024年にかけて16%減少し、同期間にディール件数が18%減少した世界全体のM&A市場よりも若干良好な結果となりました。消費者市場のディール金額は、主に300億米ドル超のディールが2件、その他メガディール(50億米ドル超のディール)が6件あったため、13%増加しました。
M&A動向は国や地域によって異なっていました。
消費者市場では2025年に向けて成長が再び課題となっており、このセクターの大半の事業者にとっては販売量を伴った利益ある成長が主な目標となっています。企業ではポートフォリオの再編が活発になり、PEでは流動性主導のエグジットが増えると予想されます。そのため、消費者市場のディールパイプラインはここ数年来で最も強力なものとなるでしょう。
M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年12月31日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2025年1月6日から9日の間にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。ディール倍率のデータはPitchBookが発表したデータに基づいています。本データは、S&P Capital IQおよび当社独自の調査による追加情報で補完されています。PwCの業界マッピングに合わせるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。メガディールは50億米ドル以上のディールと定義しています。
世界GDP成長率データは、2024年12月16日にアクセスした国際通貨基金(IMF)のブログ(英語)(2024年10月22日付)から引用しています。
欧州の家計貯蓄データは、経済協力開発機構(OECD)の家計貯蓄予測(英語)(2024年12月16日アクセス)に基づいています。
欧州におけるプライベート・エクイティ資産の平均保有期間データは、Gain.proのThe State of European Private Equity Report H1 2024(英語)(2024年12月16日アクセス)より入手しました。
観光セクターの回復に関するデータは、2025年1月20日付けの国連世界観光機関の世界観光バロメーター(World Tourism Barometer)(英語)から取得しました。(2025年1月22日アクセス)
Hervé Roesch
PwC英国、パートナー、グローバル消費者市場ディールズリーダー
Elena Girlich
PwCドイツ シニアマネージャー
※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in consumer markets: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
消費者市場の2024年上半期のディール件数は、すでに低水準にあった前年同期からさらに減少しました。ディール金額も前年同期を下回りましたが、超大型ディールが全体の金額を下支えしている状況です。下半期のディールは改善が見込まれています。
2024年の消費者市場のM&A活動は急速なコストと製品価格のインフレに影響を受けるでしょう。ただし、中長期的には、完全に回復すると楽観視しています。
ポートフォリオの見直しとキャパシティ・ビルディング(基礎能力の構築・向上)への注力により、消費者セクターにおいてM&A市場が活性化するでしょう。
ポートフォリオの見直しと変革型のディールへの注力により、2023年の消費者市場においてM&Aの機会が創出されます。
M&Aアドバイザーとして、ソーシングから取引実行まで高い専門性を持ち一貫して支援します。また、クロスボーダーや不動産などの領域においても幅広い経験を有しています。
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