
2024年上半期最新情報 産業・サービス分野における世界のM&A動向
産業・サービス分野のディールは、2024年の後半にわたり、安定したペースで行われる見込みです。金利の高止まりや規制への懸念など、市場には引き続き難題があるものの、買い手と売り手の双方が、さらなる成長と価値創造を推進するためにM&A市場に注目する傾向が強まっています。
産業・サービス(I&S)における2025年のM&Aは成長に向かい、成長を促進したい成功企業と、解決策を模索している苦境にある企業の両方からディール活動が生じると見込まれます。
包括的なテーマの1つは、企業がエネルギートランジションおよび関連サービスの買収と投資に注力していることです。また、競争力を維持し、市場でのプレゼンスを拡大するために、新しいテクノロジーとデジタル機能を獲得しており、特にAI、自動化、デジタルトランスフォーメーションに重点を置いています。M&A活動は、以下のようにサブセクターによって異なる展開を見せるでしょう。
CEOは、M&Aの見通しについて過去数年よりも自信を持っています。M&Aは、ポートフォリオを積極的に見直し、コアとなる戦略的成長分野、収益性、資本配分に集中できるようなカーブアウトや売却を検討する上で、魅力的な選択肢となっています。企業は、ノンコアまたは不採算のアセットを売却し、より収益性の高い分野や成長志向の分野に資本を再配分するための行動を起こしています。2024年にGEが3つの上場会社に分割されたのに続き、分社化へと向かう幅広いトレンドの中で、I&Sでは2025年に他の重要なコングロマリット分割が発表される可能性が高いと予想されます。
出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)
最新の世界CEO意識調査によると、買収を計画しているI&SのCEOの割合は、昨年の79%からわずかに増加しました。世界的な選挙の年だった2024年が過ぎ、インフレ圧力が緩和されつつあるため、ディール活動は近い将来回復すると予想されます。
世界各地で、ディ―ルメーキングや戦略的アライアンスにおける保護主義が台頭しています。企業は新たな関税の導入やサプライチェーンにおけるリスク管理の問題に直面しており、すでに一部の企業はサプライチェーンの地理的範囲を限定したり、一部の事業をニアショア化したりしています。
出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)
このような地政学的環境は、ディールメーカーを国内のM&A機会に集中させ、世界的な拡大や国際的なディール活動を制限する可能性があります。一方、地域によって状況は異なります。米国では、2024年末の金利低下(ただし、2025年にはこの傾向は鈍化する見込み)とインフレ圧力の緩和によってM&Aにとってより好ましい経済条件が整いつつあることもあり、楽観的な見方が強まっています。米国の規制・反トラスト政策の変化は、特にA&Dや産業機械において、より大規模でトランスフォーメーション効果の高いディールの増加に影響を与えると予想されます。欧州やアジアの一部の市場では、成長、インフレ、金利の先行きに対する不透明感が続いています。これは買い手の自信に影響し、買い手と売り手の間のバリュエーションギャップを持続させています。リスク、資金調達、バリュエーションに関する懸念に対処するため、プライベート・キャピタルなどのオルタナティブファイナンスや、アーンアウト、パートナーシップ、ジョイントベンチャーなどのストラクチャーアプローチが頻繁に利用されるようになっています。
プライベート・エクイティ(PE)は、資金調達難が緩和されれば多額の「ドライパウダー」を投入できるため、M&A活動の増加に一役買うと予想されます。PEの活動が活発化している例としては、マクロおよびミクロ経済状況の影響を受けている中小企業の再編が進んでいる建設セクターや、現在の厳しい市場環境の中で「ロールアップ」による再編の機会が存在する自動車サプライヤーなどが挙げられます。このような再編によって、PEプラットフォームはM&Aの機会を戦略的目標に合致させ、規模を活用できるようになり、価値創造と持続的な成果につなげることが可能になるでしょう。
「I&Sのディール活動は2025年に轟音とともに復活しています。その原動力となるのは、マクロ経済状況の改善、エネルギートランジション、ロールアップとエグジット戦略、大規模なトランスフォーメーションアプローチ、リストラクチャリングと事業再編の必要性であり、いずれもグローバルおよび各国内のリスクの観点から見込まれるものです」
Michelle Ritchie、PwC米国、パートナー、グローバル産業・サービス分野ディールズ共同リーダー産業・サービス分野のディール件数と金額は、2023年から2024年にかけてそれぞれ15%、3%減少しましたが、ほぼパンデミック前の水準を維持しています。M&A活動の継続的な減少はマクロ経済および地政学的環境に起因するもので、こうした環境はディールメーカーにとって引き続き課題となっています。
欧州・中東・アフリカ(EMEA)のディール件数は19%減、米州は17%減、アジア太平洋は9%減と、地域によってばらつきがありました。アジア太平洋では、インドは9%増となり、中国はディール件数は10%減となったものの、3年にわたる減少の後でディール活動が安定してきていることがうかがえます。ディール金額は、米州が27%増、EMEAが20%減、アジア太平洋が17%減と、異なる結果となりました。この地域差は主にメガディール(50億米ドル以上のディール)活動のためで、米州ではメガディールが2023年は4件だったのに対し、2024年は6件となりました。
状況はセクターによっても異なります。2023年から2024年にかけて、すべてのセクターでディール件数が減少しましたが、その程度はセクターによって差がありました。A&Dは-35%、自動車は-18%、通常より回復力のあるビジネスサービスは-18%、産業機械は-14%、E&C-8%となりました。同時期にディール金額が減少したセクターは3つ(自動車、ビジネスサービス、産業機械)、増加したセクターは2つ(A&D、E&C)でした。
以下のセクター別スポットライトでは、2025年にM&A活動を促進すると予想されるA&D、自動車、ビジネスサービス、E&C、産業機械の動向について概説します。
※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in industrials and services: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
産業・サービス分野のディールは、2024年の後半にわたり、安定したペースで行われる見込みです。金利の高止まりや規制への懸念など、市場には引き続き難題があるものの、買い手と売り手の双方が、さらなる成長と価値創造を推進するためにM&A市場に注目する傾向が強まっています。
2024年の産業機械・自動車(IM&A)セクターのディール活動は、インフレや金利上昇といった市場の課題が緩和され、ディールメーキングの柔軟性が高まることから、年間を通じて増加すると予想されます。
ディールは戦略的投資、事業売却、トランスフォーメーションへの活用により、2023年も安定したペースで継続すると予想されます。
主にテクノロジーとESG関連の分野において、ポートフォリオの最適化と事業売却は戦略的なM&A投資とともに2023年のCEOの重要課題となります。