規模が大きく歴史も古いファミリービジネス企業では、一族のメンバー以外を取締役に就けているケースが多く見られます。売上高1億米ドル以上の企業では79%、4世代以上の歴史がある企業では75%が社外取締役を有していました。これは驚きではありません。
多くのファミリービジネス企業は、一族以外の取締役をまったく持たないところからスタートします。ただし、聞き役になってくれる親しい間柄のアドバイザーをフォーマルまたはインフォーマルに持っているケースがほとんどです。そして、正式な取締役会が発足する際に、これらの人たちがしばしば初の取締役に起用されます。しかし、もともと一族の友人や以前からのアドバイザーであるため、多くの場合、アウトサイダーというよりはインサイダーで、その多くがこのポストに長年とどまり、「内部化」していくリスクをはらんでいます(これゆえに、取締役会を定期的に刷新することが重要です)。こうした取締役は、なおも有益な役割を果たすことができますが、私たちの経験から言えるのは、ファミリービジネス企業が競争力を維持する上で本当に必要としている独立したものの見方や「鋭さ」はもたらさない可能性が高いということです。強力な創業者やCEOに対して重大な異議を唱える可能性は、明らかに低くなります。
PwCアジア太平洋のファミリービジネス企業担当リーダー、Siw Quan Ngは、次のように語っています。
「取締役会の役割は全てのファミリービジネス企業がどこかの時点で直面する課題です。ファミリービジネス企業が完全に成熟したレベルに至るには、関連性の高い経験と幅広い視野、それに独立した見地と客観的なものの見方を持った優れた取締役会が必要になります。」
有効に機能している取締役会は、ファミリービジネス企業に大きな価値をもたらすことができます。例えば、会社の資産と利益がどのように使われているかを精査したり、配当金のレベルに関する議論で進行役になったりすることができます。この結果、会社の存続と成長に必要な資本が十分に確保されるようになるでしょう。
「一族のメンバーや株主でないということは、戦略的な意思決定に介入するチャンスがないことを意味します。このため、自分の個人的な考えを提案するのが難しいこともあります。結果として、自分が必ずしも事業に価値をもたらしていると感じられないことがあります。」
「私たちの各会社には、当社とは血縁関係のないプロの役員がいます。取締役会には外部の視点が重要だからです。さらに当社では毎年取締役会のメンバーを交代しています。貢献のなかった取締役を外し、貢献してくれそうな別の人材を探します。そのため、取締役会の一員でいるのは、簡単なことではありません。しかし、これが私たちが望んでいることです。そしてこれが、私たちの成長を支えてくれるでしょう。」
「私は一族のメンバーの間を取り持つコミュニケーション役です。彼らは直接話すことができないため、私を仲介役に使っています。」
このように考えると、アグレッシブな成長目標を持ったファミリービジネス企業の73%が一族のメンバー以外の取締役を有していることは興味深いと言えます。ファミリービジネス企業には、意見をぶつけ、意思決定に疑問を投げかける能力を持ちながらも、会社のビジョンと価値観を共有する取締役会が必要です。米国のオーガニック食品メーカー、Amy’s KitchenのAndy Berliner氏は、次のように話しています。
「現在、諮問委員会を結成しようとしていますが、私たちと同じ価値観を持ち、かつ適切な経験を持った人を見つけるのは容易ではありません。スキルがあるだけでなく、私たちの会社が行うことに価値を見いだし、それを大切にしてくれる人を探したいのです。」
ファミリービジネス企業はどこでも「適材」と言える取締役を見つけたいと考えていますが、取締役会が満たすべきニーズは会社によってそれぞれに異なります。私たちは、一族のメンバー以外がすでに取締役になっているにもかかわらず、コントロールを手放したり機密情報を「部外者」に開示したりすることに神経質になるファミリービジネス企業のオーナーを多数目にしてきました。また、取締役にかかる経費を気にしたり、取締役会の価値が分からないとして会議に必要な時間を十分に取らないオーナーもいます。社外から取締役を選定するプロセスも、懸念の原因となる場合があります。特にオーナーがそのプロセスを確立させておらず、物事がうまく行かなかった場合に自分たちを守る方法があることを認識していない場合に、懸念が生じやすいのです。
同様に、優秀な人材を見つけて会社に合った人物かどうかを見極めることも容易ではないことがあります。一族メンバー以外の取締役は、ファミリービジネス企業の力関係や家族内の関係の複雑さも理解する必要があるためです。
戦略的な計画策定には、取締役会が重要性な役割を果たします。例えば、取締役会は、新しい技術の及ぼす影響について質問を提起し、市場のトレンドについて情報を求めるべきです。また、有能な外部から雇い入れた取締役であれば、計画策定のプロセスを詳細に示すという点で豊富な経験を持っているでしょう。これには、会社が直面している課題を客観的に考え、シナリオを評価し、現実的かつ有効な計画を策定して、その計画の遂行状況を定期的にモニターすることが含まれます。戦略計画を持つことは、新たに社外から取締役を雇い入れるに当たっても重要性が高いのです。将来の事業拡張や多角化でどの領域を目指すかを特定し、大局的なレベルでどんなスキルや見地が必要になるかを示すためです。
・オーナーが会社のニーズと家族のニーズを区別できるよう支援する |
・新しい視点、重要性の高い経験、影響力のあるネットワークへのアクセスをもたらす |
・CEOが日々の業務や戦術以上の部分へと踏み込むのを支援する |
・会社全体にわたって説明責任を明確にする |
・リスク管理を支援する |
・「外部の視点を中に取り入れる」ことにより独立した客観的な視野をもたらす |
・CEOの後継者計画をサポートしアドバイスする |
・難しいトピックの議論ができる場を提供する |
・次世代への引き継ぎを円滑に運ぶ |
・出口戦略の策定をサポートしアドバイスする |
Same Passion, different paths: How the next generation of family business leaders are making their mark.
The next generation of family business leaders are well prepared, confident, and above all they have great ambition – both for themselves and for their firms. 88% want to do something special with the business.