2024年上半期最新情報

消費者市場における世界のM&A動向

Global M&A Trends in Consumer Markets hero image
  • 2024-08-05

消費者市場ではM&Aが活発化すると予想されますが、そのタイミングは依然不透明で、投資家はどのディールを選ぶか慎重になっています。

消費者市場のM&Aは、ディール件数と金額が過去の水準を大きく下回る厳しい2年超の期間を経て、下半期には改善が見込まれます。2024年上半期のディール件数は、現在のマクロ経済環境の影響により、すでに低水準にあった前年同期からさらに22%減少しました。ディール金額も2023年の前年同期を4%下回りましたが、少数の超大型ディールが全体の金額を下支えしています。

Pitchbookのデータによると、欧州および米州のB2CセクターのEV/EBITDA倍率は、2023年の非常に低かった8.4倍から2024年第1四半期には8.8倍に上昇しました。大型ディールの増加、最近のIPOの動き、欧州中央銀行や一部の国々による初の利下げなど、市場環境はこのセクターに対する投資家の自信の回復を示しています。

ここ数年の主要なテーマは継続しており、消費財企業は引き続きポートフォリオの見直しを行うでしょう。また、中核となる成長市場に焦点を当てるという圧力から、カーブアウトやポートフォリオの再編が進むと予想されます。最近の顕著な例としては、Unileverによるアイスクリーム事業の分割計画、Sanofiによる消費者向けヘルスケア事業の分割計画、TescoとBarclaysによる消費者向け金融サービスの提供を目的とした10年間の提携などが挙げられます。

M&Aが活発化する分野

PwCが5月に発表した「Voice of the Consumer Survey 2024」によると、回答者の64%が懸念事項のトップ3にインフレを挙げています。購買力の低下は消費者の消費性向に影響を及ぼし、それによって成長や投資の観点から最も魅力的な分野も変化しています。そのため、今後数カ月は以下のサブセクターがM&A の活発な分野になると予想されます。

「ここ数年の購買力の変動や低下からまだ立ち直っていない消費者は、お金の使い方に慎重で選択的です。投資家も同様と言えますが、チャンスの多い市場は広がりつつあります」

Hervé Roesch,PwC英国、パートナー、グローバル消費者市場ディールズリーダー

2024年下半期の消費者市場におけるM&Aの主なテーマ

ポートフォリオの最適化に加え、以下のテーマが2024年後半のM&A活動に影響を与えると予想されます。

  • IPOと非上場化
    PEのエグジット件数は鈍いものの、消費者市場、特に美容セクターでは注目すべきIPOの動きが見られます。スペインのPuig、ドイツのDouglas、スイスのGaldermaはいずれも2024年上半期に上場し、機関投資家の美容資産に対する意欲を示しました。アジアの美容関連企業の非上場計画など、一部の株式市場には非上場化の機会が残っています。
  • 統合と近接分野の買収
    大手消費財企業、特に小売セクターの事業者は、M&Aを活用して事業の効率性とレジリエンスを高め、消費者の支出に対するシェアを拡大すると予想されます。ブラジルでファッション小売チェーンを展開するArezzo&CoとGrupo Somaの合併のように、統合によって課題に対処する企業もあります。この合併により、2,000以上の直営店とフランチャイズ店、34のブランドが統合され、より大きな規模が実現します。新たな市場や近接カテゴリーへの多角化を目指す企業もあります。例えば、Walmartは2024年2月、オーディオ・ビデオ機器メーカーのVIZIO Holding Corp.を25億米ドルで買収することで合意し、Walmartの消費者へのアクセスを新たな収益源として活用しました。また、2024年6月には、The Home Depotが住宅専門商社である SRS Distributionを183億米ドルで買収し、プロフェッショナル顧客との取引拡大を目指しています。
  • ディストレストM&A
    小売セクターが直面している困難は、2023年から2024年前半にかけての小売企業の倒産件数の増加からも明らかです。最近のThe Body Shopのリストラクチャリングは、eコマースの成長や消費者の嗜好の変化などの課題が、超大手有名ブランドから中小企業まで、あらゆる小売企業に影響を及ぼしていることを証明しています。ディストレストM&Aのこの傾向は今後も続き、より財務的に安定した企業がブランドや知的財産および選別された資産の買収に乗り出すことで、このセクターのある程度の統合が進むと予想されます。

消費者市場における2024年下半期のM&Aの見通し

急速に進化する消費者ニーズに対応するために、M&Aを通じてトランスフォーメーショ ンを実現しなければならないという圧力は、これまで以上に高まっていると考えています。その結果、ディールメーカーは短期的にはトランスフォーメーションとディールの準備に注力し、市場環境全体が緩和して取引実績が改善すれば、ディールメーキングの動きが今後6カ月から12カ月で加速すると予想されます。

※本コンテンツは、PwC米国が2024年6月に公開した「Global M&A Trends in Consumer Markets: 2024 mid-year outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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2024年初頭時点の「世界のM&A業界別動向:2024年の見通し」は以下よりご覧いただけます。

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