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2024年も半ばを過ぎようとしていますが、テクノロジー・メディア・情報通信(TMT)セクターのディールメーキングについては、楽観視し続ける理由があります。PwCが「世界のM&A 業界別動向 2024年の見通し」で記載した、生成AIやその他の新技術の進歩、金利に関する確実性の向上、記録的な投資資本、ディールメーキングに対する需要の高まりといったポジティブな指標は依然として実際に起きていることです。2024年の最初の6カ月間で、早くもIPOとテクノロジーのメガディールが復活する兆しが見られます。金利上昇、インフレ圧力、地政学的要因、2024年後半の米国選挙結果をめぐる不確実性が、ディールメーキングの動きを抑制する可能性はありますが、状況が好転し始めれば、M&Aは再び活発化するものと思われます。
ソフトウェアは引き続きTMTにおけるM&Aの最大の牽引役となっています。ディール件数は依然として過去の水準を下回っているものの、2024年上半期にソフトウェア分野で発表されたディール金額は昨年を上回る勢いです。2024年上半期に発表されたディールでは、Synopsysが提案した325億米ドル規模のAnsysの買収が、全産業セクターを通じて世界第2位の規模を記録しました。2024年上半期に発表されたソフトウェア・メガディール(50億米ドル以上のディール金額)は、2023年上半期の4件に対し、6件となっています。
順位 | サブセクター | ターゲット | ディール金額 (億米ドル) |
1 | ソフトウェア | Ansys, Inc. | 32.5 |
2 | ハードウェア | Juniper Networks, Inc. | 13.6 |
3 | ソフトウェア | Tronic LLC | 12.2 |
4 | ソフトウェア | HashiCorp, Inc. | 7.7 |
5 | ソフトウェア | Squarespace, Inc. | 6.6 |
6 | ITサービス | Vantage Data Centers | 6.4 |
7 | ITサービス | X.AI Corp. | 6.0 |
8 | ソフトウェア | Altium Limited | 5.8 |
9 | ソフトウェア | Darktrace PLC | 5.5 |
10 | ITサービス | Nuvei Corporation | 5.0 |
上位10件の合計金額 | 101.3 | ||
上位10件中のソフトウェア分野の合計金額 | 70.3 | ||
上位10件に占めるソフトウェア分野の金額の割合 | 69.4% |
出典:2024年5月31日までに発表されたディールの上位10件:
LSEGとPwCの分析
ソフトウェアの予測可能な売上とキャッシュフローは、現在の低成長環境においても、戦略的バイヤーとプライベート・エクイティ(PE)の両方にとって引き続き魅力的です。ソフトウェア・ディール全体の件数に占めるPEのシェアは、2023年下半期の63%から2024年上半期の59%へと4ポイント低下したものの、2019年から2023年の平均と同水準を維持しています。しかし、ソフトウェア・ディール全体の金額に占めるPEのシェアは、2023年下半期の83%から2024年上半期の59%へと34ポイント減少しており、過去5年間の平均を大きく下回っています。
サイバー製品は、オンプレミスやITサービスではなく、SaaS(Software-as-a-Service)として提供されることが多くなっているため、サイバーセキュリティもソフトウェア・ディールの優位性を後押しするかもしれません。規制当局がサイバーセキュリティの報告強化を義務付け、サイバー脅威に対する意識が高まる中、この分野はソフトウェア・ディールの中でも注目すべき興味深い領域となるでしょう。Ciscoによる280億米ドルでのSplunk買収(2023年最大のソフトウェア・ディール)、Thoma BravoによるサイバーセキュリティAI企業Darktraceの53億米ドルでの買収提案、CyberArkによるマシンIDのスペシャリストVenafiの15米億ドルでの買収提案、航空機メーカーAirbusによるサイバーセキュリティおよびITソリューションプロバイダーINFODASの買収はいずれも、このサブセクターへの投資への関心が継続していることを示しています。さらに、Palo Alto Networksは最近、IBMのSaaSサービスであるQRadarの買収を発表しました。これは、プロバイダーがエンドツーエンドのセキュリティ・オペレーション・プラットフォームを提供しようとする中で、この分野での再編が進む前兆かもしれません。
「人工知能は、まだM&Aの原動力にはなっていないものの、ベンチャー企業や企業の投資を非常に集めています。Google、Meta、Microsoft、Amazonが2024年に予定している資本的支出は、合計すると2,000億米ドル以上になります。これは、今年のハイテクセクターのM&Aのほぼ全額に相当します」
Barry Jaber,PwC英国 グローバルテクノロジー&テレコミュニケーションディールズリーダー、Strategy&パートナー2024年後半にM&Aが活発化する分野は以下の通りです。
「消費者の時間とお金に対する継続的なプレッシャーは、より広範なエンタテイメントとメディアのエコシステムを価値重視へと駆り立てています。ジョイントベンチャー、パートナーシップ、バンドリングが引き続き顧客満足度を高め、価格設定をサポートし、解約を最小限に抑え、新規顧客をプラットフォームに誘導する価値提案を推進すると考えられます」
Bart Spiegel,PwC米国パートナー、グローバルエンタテイメント&メディアディールズリーダータブをクリックすると、各地域のチャートが表示されます。
2024年上半期のディール件数は2023年上半期に比べ36%減少し、ディール金額は54%増加しました。ディール金額のセクタートレンドはさまざまで、メディア・エンタテイメントと情報通信はディール件数の減少にもかかわらず、ディール金額の伸びを示しました。ディール金額に関するセクターの傾向は様々で、メディアとエンタテイメント、テクノロジーはディール金額の増加を示しましたが、全体的なディール件数は減少しました。
テクノロジーセクターは、2024年上半期のディール件数の83%、ディール金額の74%を占め、引き続き最大のセクターとなりました。
テクノロジーセクターでは、ディール件数の69%、ディール金額の64%をソフトウェアが占めています。2024年上半期、ソフトウェアのディール件数は2023年上半期から42%減少しましたが、ディール金額は6件のメガディールにより41%増加しました。次に大きなサブセクターであるITサービスは、ディール件数およびディール金額で18%を占め、今年上半期には3件の大型ディールにより、ディール件数は23%減少したものの、ディール金額は68%増加しました。半導体セクターもディール件数は29と減少したものの、ディール金額は93%増加しました。これは主に1件の大型ディールによるものです。
経済情勢が不透明な中で企業が存在価値を維持するためには、レジリエンスとスピードを優先し、トランスフォーメーションをもたらすようなディールから価値を引き出す必要があります。ディールメーカーが検討すべき重点分野は以下の4つです。
※本コンテンツは、PwC米国が2024年6月に公開した「Global M&A trends in technology, media and telecommunications: 2024 mid-year outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。