2024年上半期最新情報

産業・サービス分野における世界のM&A動向

Global M&A Trends in Industrial Manufacturing and Automotive Sectors hero image
  • 2024-08-08

2024年下半期のディール活動は、売却や変革に向けた取引に支えられ、安定的に推移すると予想されます。

産業・サービス(I&S)セクターでは、2024年の後半にわたり、安定したペースでディールが行われる見込みです。金利の高止まりや規制への懸念など、市場には引き続き難題があるものの、買い手と売り手の双方が、さらなる成長と価値創造を推進するためにM&A市場に注目する傾向が強まっています。

現在の市場環境では、企業はポートフォリオの業績を評価し、戦略的投資や企業投資のためにノンコア事業を売却するかどうかを判断しています。戦略的な売却は、資本配分を改善し、新しいセグメントに再投資するための方法と考えられています。

売り手が成長性と収益性のためにポートフォリオを最適化しようとしている一方で、こうした内部評価によってテクノロジーや機能のギャップが明らかになりつつあります。I&S企業は、ディスラプションに対応し、競争力を維持し、トランスフォーメーションによって市場でのプレゼンスを拡大するために、新しいテクノロジーやデジタル機能を求めています。その結果、AI、オートメーション、デジタルトランスフォーメーションなどのテクノロジーの進歩は、M&Aの機会として注目される戦略的分野となっています。

業界再編もまた、戦略的成長と多角化に重点を置くことと相まって、M&Aを活発化させるでしょう。マクロ・ミクロ経済情勢からマイナスの影響を受けている中堅・中小企業の統合が進むと予想されます。

「産業・サービスセクター全体におけるM&A活動が回復する際、敵となるのはスピードです。しかし、戦略的アクションや事業売却に焦点を絞ったリストを準備したディールメーカーは、成功に向けて最善のポジションを取るでしょう」

Michelle Ritchie,PwC米国、パートナー、グローバル産業・サービス分野ディールズ共同リーダー

2024年のM&A件数と金額

産業・サービス分野のディール件数と金額(2019~2024年上半期)

Bar chart showing M&A volumes and values for the industrials and services sectors. Deal volumes and values declined in H1'24 across all sectors and regions as uncertainty continued to weigh on dealmakers.

出典:LSEGとPwCの分析(データはターゲット企業の所在地に基づく)

2023年上半期から2024年上半期にかけて、産業・サービスのディール件数と金額はそれぞれ21%と19%減少しました。このような世界的な傾向は、マクロ経済や地政学的環境の厳しさを反映した側面もありますが、地域的なパフォーマンスにはばらつきがあります。同期間のディール件数は、欧州・中東・アフリカ(EMEA)が25%減、米州が24%減、アジア太平洋が13%減となりました。アジア太平洋地域は、インド、韓国、オーストラリア、日本のM&A活動が活発であったため、好調でした。ディール金額は、EMEAとアジア太平洋がそれぞれ27%減、45%減であったのに対し、米州は複数の米国のメガディールにより32%増となり、異なる結果となりました。

業績もセクターによって異なります。航空宇宙・防衛(aerospace and defence:以下、「A&D」)のM&A活動は2023年上半期から2024年上半期にかけて32%減少し、自動車が同期間に25%減少と、これに続きました。より回復力のあるビジネスサービスセクターでさえ、上半期のディール件数は24%減少しました。ディール金額はエンジニアリング・建設を除く全てのセクターで減少しました。

「各サブセクターが異なる道を歩む中で、ディール件数と金額の回復が期待されます。航空宇宙・防衛ディールは新たな中型案件によって牽引され、産業機械ディールはマクロ経済への楽観的な見方が強まることで回復し、自動車ディールは新たな電気自動車の未来への適応に焦点が当てられるでしょう」

以下のセクター別スポットライトでは、2024年後半にM&Aが活発化すると予想されるA&D、自動車、ビジネスサービス、エンジニアリング・建設、産業機械の動向を紹介します。

産業・サービスにおける2024年下半期のM&Aの主なテーマ

不確実性と課題が続くことを受け入れた買い手と売り手は、成長の促進と価値創出のためにM&Aを活用するようになるでしょう。

AI、オートメーション、デジタル化などのテクノロジーの進歩は、企業が競争や市場のディスラプションに直面する中で、M&Aの戦略的重点分野となっています。

戦略的ポートフォリオの見直しは、機能の不足に対処するための買収や、資本配分を改善するためのノンコア事業の売却を促します。

M&Aの見通しはセクターによって異なります。産業機械・自動車、航空宇宙・防衛、エンジニアリング・建設は楽観的な見方が強まり、回復に向かうでしょう。自動車は新しい電気自動車への対応を続け、ビジネスサービスはさらなる統合が進むでしょう。

産業・サービスにおける2024年下半期のM&Aの見通し

市場競争力を維持しようとする企業にとって、ビジネストランスフォーメーションと利益ある成長は最重要課題です。これは、デジタルイノベーション(AIを含む)や統合に焦点を当てた戦略的M&Aや、非中核資産の売却を通じて達成されると予想されます。サステナビリティや二酸化炭素排出削減への取り組みも、規制への対応や消費者の需要に応えるための買収を促進する可能性があります。スピードと十分な準備が成功の鍵となります。マクロ経済環境がより明確になり、2024年後半に選挙の結果が判明すれば、ディールが急増すると予想されます。

M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年6月30日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2024年7月3日にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。PwCの業界マッピングに合わせるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。

Michelle Ritchie
PwC米国、パートナー、グローバル産業・サービス分野ディールズ共同リーダー

Nathan Whitley
PwC米国、ディレクター

※本コンテンツは、PwC米国が2024年6月に公開した「Global M&A trends in industrials and services: 2024 mid-year outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

各国・地域別の産業・サービス分野のM&A動向については、下のボックスから選択してご覧ください。

2024年初頭時点の「世界のM&A業界別動向:2024年の見通し」は以下よりご覧いただけます。

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