2024年上半期最新情報

エネルギー・ユーティリティ・資源分野における世界のM&A動向

Global M&A Trends in Energy, Utilities & Resources hero image
  • 2024-08-08

地政学的な変化とエネルギートランジションに伴う産業再編により、2024年後半にはエネルギー・ユーティリティ・資源セクターにおけるM&A活動が活発化すると考えられます。

2024年の半ばを迎え、エネルギー・ユーティリティ・資源(EU&R)セクターは、引き続きグローバルなM&Aの舞台として注目を集めています。地政学的に見た新たな現実、政府のイニシアティブ、エネルギートランジションとエネルギー安全保障に対し、市場は継続的に注目しており、産業構造が積極的に再編される中、財務基盤の健全な企業はM&Aの機会を最大限に活用できる立場にあることが明らかになっています。

全体としては以下のような状況が見られます。

  • 鉱業・金属セクターでは、重要鉱物の供給を確保するための統合や買収が続くと予想されます。
  • 石油・ガスでは、企業が資産ポートフォリオを多様化し、シナジー効果を追求する中、メガディールが企業統合の継続を下支えしています。
  • 再生可能エネルギーの開発企業は、融資金利と建設コストの上昇を背景に資産を現金化し、上場ユーティリティ企業は、ノンコア資産をリサイクルして、特にガス・サブセクターの開発パイプラインに投資を行っています。
  • 化学セクターでは、エネルギー価格の変動とサステナビリティ目標がディール活動を抑制しています。

より広範に見れば、EU&R分野の企業や、サプライチェーンにEU&Rのエクスポージャーを持つ他分野の企業が、重要な原料を確保するために「フレンドショアリング」を行うケースが増えています。特に米国は、経済的インセンティブと先進インフラを背景に、魅力的なM&A先となりつつあります。こうした動向は、資源セクター全体でサステナビリティ、規制コンプライアンス、ポートフォリオの最適化、戦略的再編が幅広く推進されていることを反映しています。

サステナビリティは依然としてM&Aの意思決定における重要なドライバーであり、規制の枠組みは投資に影響を与えます。2024年後半には、特に米国でサステナビリティに起因したM&A活動が活発化すると予想されます。

58%

のEU&R分野のCEOは、政府による規制が、今後 3 年間で自社の価値の創造、実現、獲得の方法に変化をもたらすと考えています。

出典: PwC第27回世界CEO意識調査

セクターを問わず、再編・再構成はますます急務となっています。戦略的統合、政府による優遇措置、サステナビリティへの注目が、M&Aを引き続き後押ししています。このようなダイナミックな状況を乗り切るため、企業はそれぞれのサブセクターでより強固な地位を確保し、サプライチェーンとエネルギー安全保障を強化するための革新的なパートナーシップを築こうとしています。

「私たちは、エネルギー・ユーティリティ・資源・化学の各セクターにおいて、産業の再構成が進んでいることを目の当たりにしています。その原動力となっているのは、安定供給、ポートフォリオの最適化、そして拡大し続ける政府のインセンティブや規制への対応です」

Greg Oberti、PwCカナダ、パートナー、エネルギートランジション&ユーティリティ・ディールズリーダー

産業の再構成の必然性に注目

私たちは、「再構成の必然性」につながるいくつものテーマを目にしています。この再構成という概念はまずグローバルの産業システムの文脈で論点となりましたが、世界的なM&Aの原動力としてますます重要性を増しています。この概念は、地政学的な現実、政府のイニシアティブ、サステナビリティとエネルギー安全保障の重視によって引き起こされる世界産業の変化に、企業が戦略的に適応する必要性を浮き彫りにしています。

年初に発表した「2024年のM&A動向」における主要なテーマに基づき、EU&Rセクター全体でこの再構成がどのように進展するかを以下に概説します。

  • 統合:統合は、経済性を改善し、規模を拡大し続けるための重要な手段です。2023年後半に発表されたいくつかの大型ディールと、2024年前半に発表されたDiamondback EnergyとEndeavor Energy Resourcesの合併案、ConocoPhillipsによるMarathon Oil Corporationの買収案、Chesapeake EnergyとSouthwestern Energy Companyの合併案の3つのディールは、そのような統合劇の一例です。2024年後半には、統合の動きがさらに活発化すると予想されます。
  • 安定供給:安定供給は、ディールメーカーの最重要課題か、それに近い位置にあると予想されます。このテーマと再構築の必然性が結びつけば、企業はサプライチェーンを強化し、さらにはエネルギー需要を確保するために、従来のセクター以外の相手と協力するようになると予想されます。その例としては、リチウム供給を確保するために自動車OEMが斬新な買収契約を締結することや、大手データセンター事業者が新規のエネルギー源を取得すること、あるいは直接投資を行うことが挙げられます。
  • 政府の規制:税制上の優遇措置、政府による運用資金、投資を促進するための政策変更、特定のプロジェクトに対する政府の介入など、政府の規制が直接的な要因となって、再構成の必然性が大幅に加速しています。そうした規制の例としては、米国のインフレ抑制法(IRA)、欧州連合のグリーンディール産業計画、日本のGX推進法などがあります。いずれも、さまざまな低炭素インフラプロジェクトへの投資拡大を目的としており、EU&Rセクター全体でM&Aの推進力を高めています。
  • ポートフォリオの最適化:世界中で産業の再構成が加速するなか、企業は自社の得意とする事業とビジネスモデルの整合性を図る資本配分の決定を迫られています。企業が戦略的目標を達成するために新たな事業分野に参入する際には、M&Aや戦略的提携、パートナーシップが増えると予想されます。例えば、重要なサプライチェーンへのアクセスの確保や、データセンターとその関連領域でのパートナーシップの形成などが挙げられます。

2024年下半期のEU&RにおけるM&Aの見通し

EU&Rにおける世界のM&A動向の2024年上半期最新情報では、地政学的変化、政府のイニシアティブ、エネルギートランジションに影響されたダイナミックな状況が浮き彫りになっています。主な推進要因としては、重要鉱物供給の確保と資産ポートフォリオの多様化を目指す企業による統合、政府の規制とインセンティブの影響、サステナビリティとエネルギー安全保障の重視などが挙げられます。注目すべき動向としては、重要鉱物の確保を目的とした鉱業・金属のM&Aの活発化、石油ガスセクターの継続的な統合、資金調達金利と開発コストの上昇による再生可能エネルギー分野のディールメーキングの活発化などが挙げられます。米国は、経済的インセンティブと先進インフラにより、M&Aの有力な目的地として浮上しています。

M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年5月31日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2024年6月3日にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。PwCの業界マッピングに合わせるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。

Greg Oberti
PwCカナダ、パートナー、エネルギートランジション&ユーティリティ・ディールズリーダー

※本コンテンツは、PwC米国が2024年6月に公開した「Global M&A trends in energy, utilities and resources: 2024 mid-year outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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