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PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)はこのほど、組織横断型イニシアチブ「スマートモビリティ・イニシアチブ」を立ち上げました。スマートモビリティの実現を下支えするテクノロジーは特に重要な軸であり、高い専門性、業界特性やグローバル潮流に対する深い見識などが求められます。
同イニシアチブでは、今後のスマートモビリティの方向性を決めていくうえで特に重要なテクノロジー領域として、自動運転、MaaS/スマートシティ、EV(バッテリー)、カーボンニュートラル/LCA、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)、次世代車両開発/生産、サイバーセキュリティの7つを選定し、各領域の専門チームが連携することで包括的にクライアントを支援できる体制を整えています。
本稿では7つのテクノロジー領域それぞれの重要性や課題、PwCコンサルティングの強みについて、ET-ISに所属する各領域のプロフェッショナルたちによる対談形式で紹介します。
参加者:
ET-IS スマートモビリティ・イニシアチブリーダー, 藤田 裕二 ディレクター
ET-IS New Biz CoEリーダー, 細井 裕介 ディレクター
ET-IS R&D / PLM Auto CoEリーダー, 渡邉 伸一郎 ディレクター
ET-IS MFG CoEリーダー, 内田 裕之 ディレクター
ET-IS Secure Mobility CoEリーダー, 納富 央 シニアマネージャー
左から納富シニアマネージャー、藤田ディレクター、内田ディレクター、細井ディレクター、渡邉ディレクター
ET-IS スマートモビリティ・イニシアチブリーダー 藤田 裕二 ディレクター
藤田:
スマートモビリティ・イニシアチブでは、クライアントを支援するにあたり、ビジネスモデルや競争環境だけでなく、各テクノロジー領域における現在の開発状況や課題、今後5~10年先の到達点の想定を踏まえて議論することで、精度の高い戦略策定や実行支援を実現していきます。
各種テクノロジー領域のプロフェッショナルたちが連携することにより、例えば「自動運転とEV」「R&DおよびSDVとセキュアモビリティ」など、テクノロジーの掛け合わせによる相乗効果が期待される、クライアントにとって最適な課題解決策を提示することもできます。
単体のテクノロジーで追及する領域から、テクノロジーの掛け合わせで追及する領域、業界を横断することで課題解決する領域まで広くカバーすることで、あらゆるクライアントを支援することができる国内唯一のイニシアチブであると自負しています。
私の専門の1つであるMaaS/スマートシティは、社会課題解決に直結する大切なテーマであり、産官学のいずれもが注力している領域です。MaaS/スマートシティの中で機能していく主な要素はEVと自動運転であり、私たちは数年前からビジネスモデルの策定や実証実験などに取り組んできました。
スマートシティにおける課題の特徴は、そのゴール設定やKPIがあいまいになってしまうことですが、私たちは「スマートシティエリアにおけるGDPの向上」をゴールとして設定することで、定量的かつ具体的な活動に落とし込んでいます。また、スマートシティエリア内での生産性の向上は生活者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながり、自動運転の導入やマイクロモビリティの導入による移動の利便性の向上は、生産性向上における最も重要なファクターとなります。
新興メーカーにおいてはEVをベースとした自動運転車が基本ですが、実際の導入においてはチャージングステーションなどのインフラの整備や安定的な電力の供給が必要となるため、場所の確保や設備の導入に追加コストがかかります。一方既存のガソリン車は既にインフラが整っているため、インフラや安定的な電力供給網が整うまでは優位性が残ると言えます。
EVは確かにさまざまな社会課題を解決できる重要なテクノロジーだと考えていますが、ICEV(内燃機関自動車)を今すぐ凌駕するとは思わず、少なくとも国内では一定期間共存関係が続くとみています。
EVについては、サプライチェーン全体を考えることが今後のさらなる普及で重要になるため、私たちは①バッテリーを中心とした要素技術や製品開発②エネルギーマネジメント、③充電などのサービス領域の3つの視点でクライアントを支援していく方針です。
藤田:
続いて、細井さんにサーキュラーエコノミーの観点から見たEVについて伺いたいと思います。
細井:
基礎となる考え方が「経済合理性」です。EVには製造コストがICEVよりも高いという根本的な課題があります。消費者にとって経済合理性は最も重要な意思決定のファクターであり、車を買うタイミングだけでなく、いわゆるTCO(トータル・コスト・オーナーシップ)で考えるという視点の変化をどう促すか、もしくはいかにトータルコストを下げていくかがEVのさらなる普及において重要となります。
経済合理性を担保するには、先に述べたMaaSだけでなく、アセット価値の最大化やアセットの効率的利用を狙う、自動車の「ライフタイムビジネスモデル化」を進める必要もあります。
例えば、EVの蓄電池を系統電源の調整代として連携させることで収入を得る「V2G」や、バッテリーを交換式やリース化する「BaaS化」、車体価値の経年劣化を防ぐためのOTA(無線通信でのソフトウェア更新)による「販売後の継続的な車両進化」などです。
これらの実現には、他産業との連携や社会システムの構築が不可欠になるため、PwCコンサルティングは国のルール作りにも参画しています。事業戦略の策定だけでなく、エコシステムの全体像を描き、ルールメイキング、パートナー選定、PoCを含めた社会システム構築を入口から出口まで伴走できるのが私たちの強みです。
藤田:
カーボンニュートラル/LCAの領域についても教えてください。
細井:
EV普及の本来の目的は、カーボンニュートラルの実現です。これまでの自動車業界のカーボンニュートラルへの取り組みは、テールパイプ排出量(車の排気管より出されるガスの量)をいかに減らしていくかに重きが置かれていました。
ただ、製品がEVにシフトすると利用時のテールパイプ排出量はゼロとなります。そのため燃料製造時(電力発電時)と製造時のCO2排出量削減に着眼点が変わり、製造時を含めたLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の考え方が重要になっています。
LCAは、非財務情報開示、カーボンプライシング・炭素税、製品単位でのCO2排出量の把握、中小企業の脱炭素支援、企業間での環境情報交換を実現するデータ流通基盤との接続など、テーマが多岐にわたります。
これらのテーマを包括的に支援するため、PwC Japanグループでは「コンサルティング」「ディールアドバイザリー」「アシュアランス」「税務」などのプロフェッショナルが一体となった横断組織「Life Cycle Assessment Consulting Initiative」(ライフ・サイクル・アセスメント・コンサルティング・イニシアチブ)を2022年8月に立ち上げています。
ET-IS New Biz CoEリーダー 細井 裕介 ディレクター
藤田:
続いて、SDVと次世代車両開発、サイバーセキュリティの領域における現状や課題について、渡邉さん、納富さんに伺いたいと思います。
渡邉:
現在の自動車業界ではCASEへの対応が急務であり、車載システムの高度化に伴い、開発プロセスや組織体制などについても大きな変革の時期を迎えています。SDVは業界変革によりソフトウェアの価値が高まったことで新しくできたキーワードです。
電動化や自動運転は複雑な車両制御の上に成り立っており、外部システムとの連携が必要になるなど、ソフトウェアへの依存度が高まっています。また、プラットフォームや部品の共通化、電動化による部品数削減などにより、ハードウェアのコモディティ化が進んでいることから、商品力においてもソフトウェアの重要性が増しています。
OTA対応車の普及に伴い、車両販売後にソフトウェア更新による機能の追加などで車両の価値(商品性/魅力)をより効率的かつ継続的に高めることができるようになります。
SDVの考え方は車両開発においても大きな影響を与えています。従来の開発においては、SOP(生産開始)前に開発が完了し、次の車両開発へ移っていくのが通常の流れでした。しかし今後は、SOP以降もソフトウェアリリースに向けた開発を継続しなければなりません。
完成検査で最終品質を保証する、工場でのソフトウェアの書き込みとは違い、車両販売後のソフトウェア更新では、開発部門が市場投入の責任を負う点もこれまでと大きく異なります。
組織の観点では、「ハードウェアの開発人材をいかにソフトウェア開発にシフトさせるか」といった点や、「開発チームとアフターサービスのチームが密接に連携できる体制をどのように作るか」といった点も重要となります。また、開発が長期間に及ぶことで、人の移り変わりに左右されず、適切に開発情報を管理するための情報管理基盤の見直しも必須になります。
私たちは現在、SDVの実現に向けた「法規制への対応」を皮切りに、「継続開発のプロセス設計」や「開発組織のマネジメントシステム構築」といったテーマまで、幅広くクライアントを支援しています。
SDVは、自動運転やEV、後述するサイバーセキュリティについても併せて検討しないと成立しません。これらの包括的な支援は、スマートモビリティ・イニシアチブを有するPwCコンサルティングだからこそできると考えています。
ET-IS R&D/PLM Auto CoEリーダー 渡邉 伸一郎 ディレクター
ET-IS Secure Mobility CoEリーダー 納富 央 シニアマネージャー
納富:
私からは、サイバーセキュリティ領域について説明します。
サービスがどれだけ優れていても、モビリティの安心・安全を担保できなければユーザーにとっては不安要素が残り、使っていただけない状態になると思っています。その安心・安全を担保するための重要なカギとなるのがサイバーセキュリティです。
物がつながる(移動体とインターネット、インフラの接続)、企業がつながる(アライアンス)、データがつながる(相互共有・利用拡大)など、つながる範囲・対象が拡大すれば自ずと脆弱な部分が発生します。
サイバーセキュリティは、脆弱な部分が少しでも残っているとそこを起点に攻撃をされ、その攻撃がインフラを含めた広い範囲に被害をもたらす可能性があります。そのためスマートモビリティの場合は全ての領域で「守り」が必要となるうえに、攻撃を受けた場合を想定した対応体制の構築も重要となっています。
また、スマートモビリティの枠組みの中では、次々と新たな技術が採用されたり、新興企業が参入したりすることが想定されます。それらの企業や技術が、必ずしもサイバーセキュリティの観点で要件を満たしていない場合もあり、「スマートモビリティの仕組み全体としていかに守りを固めていくか」といった検討が併せて必要となります。
加えて、サイバーセキュリティの規制は国や業界ごとに異なり、それら全てに対応していかなければなりません。それぞれのルールにどう対応していくかを一企業だけで判断することは非常に難しく、異なるルールを取りまとめて管理し、シームレスに接続する存在がますます求められていくはずです。
ET-IS MFG CoEリーダー 内田 裕之 ディレクター
スマートモビリティ・イニシアチブが注力する各種テクノロジー領域について議論する5人
藤田:
続いて次世代生産の領域についての説明を、内田さんお願いします。
内田:
次世代のモビリティ生産には、トレーサビリティ体制の構築が必須となります。自動運転車はシステムの大規模化・高度化が進み、事故の原因がドライバーと自動運転車(設計や生産に起因)のどちらあるのかを判断することが難しくなってきました。
製造ラインにおいて車台番号と生産・検査実績とのトレーサビリティをこれまで以上に正確かつ詳細に管理することで、事故原因の解析時に生産の妥当性を早く、確実に追跡し、証明できることが求められます。
EVも同様です。バッテリーはまだまだ発展途上にあるため、不具合が発生する可能性が高く、新しい技術を使ったバッテリーについても仕様に問題がないことを明確にする必要があります。主要部品の外作化が進み、管理すべき対象が他社データにも波及するなど、管理範囲が拡大しています。それに伴い管理方法の高度化が求められ、必然的に工場もデジタル化を迫られています。
「脱炭素工場」の実現という観点では、既存データを最大限活用し、現状の結果を素早く正確に把握することが必要です。
従来の製造基幹システムと電力データを活用して、製造品1つあたりの消費電力量を把握することが大切であり、従来の品質管理(不良改善など)で実施していた異なるシステム間でのデータ活用を、環境系指標についても広げることで、多くの工場において一定程度実現できると考えています。これらに関連するソリューションは体験型展示場「Industry Solution Garage」でも紹介しています。
藤田:
PwCコンサルティングはスマートモビリティがエネルギー問題や高齢化などの社会課題解決に直結する、非常に重要なテーマだと捉えています。
日本全体としてこの分野に注力することが、日本の国際競争力を高めていくことにつながると考えており、クライアントを全面的に支援していくことが私たちのミッションになります。
スマートモビリティ・イニシアチブを立ち上げた背景や狙い、クライアントへの提供価値についてこちらの記事で詳しく紹介しています。
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/industry-transformation/vol05.html
PwCコンサルティングのオートモーティブ(自動車部門)のこれまでの取り組みについて、こちらの記事で詳しく紹介しています。
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/industry-transformation/vol07.html