4.コーポレートガバナンス体制および経営管理組織

1.コーポレートガバナンス・コードの概要

コーポレートガバナンスは、株主、顧客、従業員、地域社会などの利害関係者の立場を踏まえ、会社が公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組みを意味しています。コーポレートガバナンス・コードは、日本再興戦略の中で成長戦略として掲げられた3つのアクションプランの1つである日本産業再興プランの具体的施策として、コーポレートガバナンスに関する規範として設定され、次の5つの基本原則で構成されています。

(1)株主の権利・平等性の確保

(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働

(3)適切な情報開示と透明性の確保

(4)取締役会等の責務

(5)株主との対話

出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」

適用対象は全ての上場企業であり、コーポレートガバナンス報告書の提出が義務付けられます。コーポレートガバナンス・コードの適用にあたっては、‘Comply or Explain.’の考え方の下で、原則を遵守するか、遵守しない場合にはその理由を説明することが求められます。

上場審査にあたっては、コーポレートガバナンス・コードの適用状況について確認されるほか、コーポレートガバナンス報告書のドラフトも提出が求められ、その内容についても確認されます。

2.コーポレートガバナンスに関する報告書の記載事項

コーポレートガバナンスに関する報告書とは、東京証券取引所の有価証券上場規程に基づいて提出が求められる書類です。上場申請に際しては、新規上場申請に係る提出書類の一部として提出し、上場後は定時株主総会後に遅滞なく更新する必要があります。コーポレートガバナンスに関する報告書の記載項目は下記のとおりです。

(1)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方および資本構成、企業属性その他の基本情報

(2)経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況

(3)株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況

(4)内部統制システム等に関する事項

(5)その他

出典:東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」

上場会社にはコーポレートガバナンス・コードが適用されるため、コードの各原則に基づいて開示するか、コードの各原則を実施しない理由を開示することが求められます。なお、コーポレートガバナンス・コードは5つの「基本原則」、31の「原則」、47の「補充原則」によって構成されていますが、上場市場ごとにコーポレートガバナンス・コードの適用が異なり、プライム市場、スタンダード市場においては、「基本原則」「原則」「補充原則」の全83原則が適用対象であるのに対し、グロース市場においては、「基本原則」の5原則のみが適用の対象となります。

3.監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社

東京証券取引所の有価証券上場規程では、上場会社は下記の機関を置くこととされています。

  • 取締役会
  • 監査役会、監査等委員会または指名委員会等
  • 会計監査人

上場審査上、直前期1年間は原則として上場時と同じ機関設計の下での運用実績が求められるため、直前期までに機関変更をしておく必要があります。

1.監査役会設置会社

監査役会設置会社とは、3名以上の監査役から構成される監査役会を設置する会社を指します。常勤監査役を1名以上選任し、また監査役の半数以上が社外監査役であることが求められます。

2.監査等委員会設置会社

監査等委員会とは、取締役会の中に監査等委員会を設置する会社を指します。3名以上の取締役(監査等委員)が組織的に監査を実施し、監査等委員の過半数は社外取締役であることが求められていますが、常勤の選任は強制されていません。監査等委員会設置会社を選択する場合、会計監査人を設置する必要があります。

3.指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社とは、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置する会社を指します。指名委員会等設置会社を選択した場合、指名委員会などの3つの委員会を設置することが義務付けられます。各委員会は3名以上の取締役で構成され、その過半数は社外取締役であることが求められますが、各委員の取締役について常勤の選任は強制されていません。また、指名委員会等設置会社には執行役を置くことが求められています。執行役は、指名委員会等設置会社ではない株式会社における業務執行取締役、代表執行役は代表取締役に相当します。執行役と取締役は兼任することができ、多くの場合、実際に兼任されています。指名委員会等設置会社を選択する場合、監査等委員会設置会社同様、会計監査人を設置する必要があります。

4.株主総会

上場後は株主数が著しく増加し、株主の属性も多種多様になるため、会社の最高意思決定機関である株主総会の重要性は上場前に比して著しく高まります。株主総会の運営は、会社法に定められた手続きに準拠して実施することになりますが、総会の準備にあたっては、開催会場の手配といった事務的な対応も含め、入念なリハーサル、想定問答の作成など、相当の準備期間が必要であり、証券会社、証券代行業者(信託銀行および専門会社)のアドバイスを受けながら進めることとなります。上場直前期以前の段階で、上場を想定した株主総会のリハーサルなどを行う必要はありませんが、財務諸表などの作成・開示を含めた上場後のタイムスケジュールを想定しておくことは重要です。

5.取締役および取締役会

上場にあたっては、3名以上の取締役を選任して取締役会を設置する必要があります。また、社外取締役を1名以上確保する必要があります。上場審査の過程では、取締役の監督機能の実効性について厳格な審査が行われます。取締役会は原則として毎月開催し、議事録を作成することが求められます。また、個々の取締役の経歴、報酬の妥当性、役員数の妥当性、退職役員が競業に関与していないか、さらには次世代の役員候補が育成されているかなどについても審査されることになります。

1.取締役会の設置

グロース市場へ上場する場合には、上場申請日から起算して1年前以前から取締役会を設置していることが求められます。また、プライム市場あるいはスタンダード市場へ上場する場合には、上場申請日から起算して3年前以前から取締役会を設置していることが必要となります。

2.規程の整備

取締役会規程を整備し、取締役会専決事項、決裁権限を規程上、明確にするとともに、社内ルールに則った取締役会運営を行うことが必要です。

3.取締役の兼務

取締役が他の会社の取締役などを兼務している場合には、必要に応じて取締役会を迅速に開催することできないといったような懸念があるため、審査上兼務自体が問題になる可能性があります。また、取締役会を兼務している他の会社との間に取引関係がある場合には、利益相反取引を承認するための取締役会特別決議が必要となる場合があるため、留意が必要です。

6.監査役会および監査役監査、監査委員会

1.監査役会設置会社の場合

監査役会設置会社を選択した場合、上場審査の過程において、監査役の取締役に対する監督機能の実効性について厳格に審査されます。監査役会による年度計画に基づく組織的な監査業務に加え、常勤監査役の日常的な監査業務への取り組み状況や、社外監査役(独立役員)の役割などについても審査されることとなります。

(1)監査役の選任および監査役会の編成

上場にあたっては、監査役を3名以上(常勤監査役1名以上、監査役の半数以上が社外監査役)選任し、監査役会を組織する必要があります。また、上場申請日から起算して1年以上監査役会を運営し、議事録を作成することが求められます。

(2)監査役監査の実施状況の文書化

上場審査に際しては、常勤監査役の勤務実態および監査役会の組織的な監査の実施状況について問われることになります。常勤監査役は、他に常勤の仕事がなく、監査役の職務に専任できる状況であることが求められます。監査役監査の実務については、日本監査役協会の監査役監査基準などを参考にすることが有用ですが、監査の実施過程を文書化することが重要であり、監査計画、監査調書などを整備することが必要です。

2.監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の場合

監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は監査役会設置会社と制度上の違いはありますが、上場審査に際しての確認事項に大きな差はなく、取締役の職務執行を適切に監査できているかなどを確認されることになります。なお、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行した場合には、移行理由が確認されるため、コーポレートガバナンスの強化につながるなどの積極的な理由を説明できるように準備しておく必要があります。

3.監査役の適格性

監査役の監査対象は取締役の職務執行であるため、経営者の親族が監査役となるのは回避すべきです。また、顧問弁護士を監査役に選任する場合、顧問契約を解除するのが一般的です。

7.独立役員

有価証券上場規程によると、「上場会社は取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」とされています。上場申請時点において独立社外取締役がいない場合、上場審査上、独立社外取締役を招聘する意思があるかどうかが審査されるため、どのような人物が会社にとって適切であると考えているか、いつ頃をめどに招聘できるかなどをまとめておく必要があります。

なお、会社法上の社外取締役、社外監査役の要件を満たせば、多くの場合、取引所の独立役員の要件も同時に満たすことになります。しかし、下記に該当する者は、独立役員を満たさないとされており、社外役員の要件よりも厳格になっています。

A.上場会社を主要な取引先とする者またはその業務執行者

B.上場会社の主要な取引先またはその業務執行者

C.上場会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家または法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合などの団体である場合は、当該団体に所属する者をいう)

D.最近においてA、B又はCに掲げる者に該当していた者

E.就任の前10年以内のいずれかの時において次の(A)から(C)までのいずれかに該当していた者

(A) 上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役

(B) 上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る)

(C) 上場会社の兄弟会社の業務執行者

F.次の(A)から(H)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く)の近親者

(A)Aから前Eまでに掲げる者
(B) 上場会社の会計参与(当該会計参与が法人である場合は、その職務を行うべき社員を含む。以下同じ。)(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(C) 上場会社の子会社の業務執行者
(D) 上場会社の子会社の業務執行者でない取締役又は会計参与(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(E) 上場会社の親会社の業務執行者又は業務執行者でない取締役
(F) 上場会社の親会社の監査役(社外監査役を独立役員として指定する場合に限る。)
(G) 上場会社の兄弟会社の業務執行者
(H) 最近において前(B)~(D)又は上場会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場合にあっては、業務執行者でない取締役を含む。) に該当していた者

出典:東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」

8.執行役員制度

執行役員制度は日本の多くの上場企業で採用されていますが、執行役員は会社法に規定されておらず、各企業で任意に設けられているため、定義が明確に定まっている訳ではありません。一般的には、代表取締役の業務執行を補佐するために、代表取締役の指揮監督の下で、取締役会が決定した経営方針を執行する権限を委譲された者と理解されており、執行役員の肩書で、一定の代理権を前提に会社の業務執行を行う権限と責任を有し、配下の人事決定に直接かかわる権限を有しています。

1.執行役員制度導入の目的

会社法に規定のない執行役員制度を採用する目的は、企業によって異なりますが、多くの場合、企業経営上の意思決定および代表取締役に対する監督と業務執行そのものとを分離して、企業経営の効率性と監督機能を同時に高めることが目的とされています。

2.執行役員と会社との法的関係

執行役員は会社法に規定されておらず、各企業によって位置付けが異なるため、執行役員と会社との法的関係を一義的に考えることはできません。しかし、執行役員をあくまで従業員と位置付け、会社法に規定される「重要な使用人」の中でも特別な存在とする考え方(雇用型)と、執行役員は一定の代理権を前提に会社の業務執行を行うとともに、配下の人事決定に直接かかわることを委任された存在とする考え方(委任型)があります。どちらを前提とするかによって、コーポレートガバナンスおよび経営管理体制の在り方は異なり、さらに執行役員の待遇(給与、退職金、任期など)にも影響しますが、雇用型か委任型かの二者択一ではなく、現実的には両者の混合型のような形態が多く見受けられます。なお、いずれの考え方を採用するにせよ、企業経営において重要な存在であることに変わりはないため、執行役員の選任・解任は取締役会で決定する必要があると考えられます。

3.執行役員の職務権限

執行役員制度は企業にとって任意の制度であるため、執行役員の権限および責任の範囲については、執行役員規程などによって明確に定める必要があります。どこまでの業務執行権限を委譲できるのかについては、議論のあるところですが、当然のことながら、会社法に規定されている取締役会の専決事項に関する意思決定を委譲することはできず、また代表権も持ち得ません。なお、会社法に抵触しない範囲で、実務的にかなり大幅な権限移譲を行ったとしても、取締役の責任が免除される訳ではなく、代表取締役および取締役会による監督システムの整備・運用は必要不可欠です。

4.執行役員会

執行役員を構成メンバーとする執行役員会を設けるべきかどうかは、各企業の執行役員制度がどのようなものなのか、あるいはビジネスモデルによりますが、一般論として、既に広範な権限を執行役員に委譲しており、各執行役員相互のコントロールを取締役会で実施しているような場合には、執行役員会といった会議体を別個に設定する必要性は乏しいと考えられます。これに対して、各執行役員への権限委譲が限定的で、代表取締役が日常的に全体的な方向づけを調整することが必要な場合には、経営情報を共有し、効率的な企業経営を実現する観点から執行役員会といった会議体を新たに設ける意義は大きいと考えられます。あるいは、事業の性質上、各執行役員の相互連携が必要な場合にも執行役員会を設ける必要があるかもしれません。

9.内部監査

内部監査とは、(1)経営目標の効率的な達成に役立つことを目的として、(2)合法性と合理性の観点から、(3)公正かつ独立の立場で、(4)業務の遂行状況を検討・評価し、(5)助言・勧告を行う監査業務です。経営目標を効率的に達成するためには、従業員の業務遂行状況を調査し、適宜必要な改善策を策定、実行していくことが必要となります。内部監査は、会社の状況に応じて調査対象や範囲が決定され、組織の発展にとって有効な改善・改革案を助言・勧告する重要な機能です。

1.内部監査に対する上場審査

内部監査部門は、経営者をトップとする企業組織が効果的かつ効率的に機能しているかを、ライン部門から独立した立場から監査します。つまり、内部監査部門は経営者に代わって従業員の業務遂行状況を監査し、意見を述べ、助言・勧告を行うことによって、経営諸活動の支援を行う機能を担います。会社法には内部監査部門の設置義務はなく、独立した部署とすることは必ずしも求められませんが、内部監査は会社の内部統制を有効に機能させるために必須の機能であることから、上場審査では内部監査体制の整備および運用が適切に行われているかが重視されます。

2.内部監査上の留意点

内部監査は、経営者直属で特定部門の影響を受けない独立した担当者が実施することが重要であり、一般的には独立した内部監査部門を設置した上で実施します。ただし、従業員数が少なく、企業規模が小さい場合には、人員の制約の問題から他部門と兼務し、自己監査を回避するための措置を講じることによって対応することも考えられます。

内部監査では、年度監査計画を策定し、監査実施手続き、監査結果などの内容を文書として記録し、保存する必要があります。また、監査の効率性および有効性の観点から、監査役監査と内部監査は連携してそれぞれの監査業務を実施することが重要です。内部監査の実施にあたっては、以下の事項に対する理解が必要です。

  • 内部監査は、経営諸活動が効果的・効率的に運用されているかを会社自らが監査する仕組みであること
  • 内部監査は、社内の諸規程が整備されていることが前提となること(諸規程に基づく業務の実施が行われているかが内部監査を行う際の判断基準となること)
  • 内部監査部門は、ライン部門から独立した社長直属のスタッフ部門であること
  • 内部監査の実施にあたっては、内部監査計画を策定し、いつ、どの部門に、何を監査するか決定する必要があること
  • 内部監査の結果は、文書にまとめて経営者に報告するとともに、被監査部門に対し指摘事項に対する改善措置を求める必要があること
  • 内部監査担当者は、社内規程、業務内容に精通していることが望ましく、事前の養成が必要であること

3.内部監査室の組織上の位置付け

内部監査は経営目標の効果的達成に役立つことを目的として行われるものであることから、原則として、内部監査部門は経営者直属の組織として位置付けられます。その運用においては人的資源の制約や会社の規模に照らして、経営企画室や社長室などの人員が兼務している場合も見受けられますが、業務遂行上はあくまで独立性を確保している必要があります。

4.内部統制報告制度(J-SOX)との関係

内部統制報告制度(J-SOX)において、「内部監査人は内部統制の目的をより効果的に達成するために、内部統制の基本的要素の1つであるモニタリングの一環として内部統制の整備および運用状況を検討、評価し、必要に応じてその改善を促す職務を担っている」、とされています。そのため、内部監査部門は内部統制報告制度(J-SOX)の構成要素として組み込まれ、重要な位置付けであるため、この観点からも必須の組織・機能といえます。

5.内部監査担当者の適格性

監査役や内部監査担当者は、その目的に照らして監査対象から独立していることが要求されます。内部監査の対象は組織体の経営目標の効果的な達成を目的とした経営活動の遂行状況であり、経営者の直轄の組織であることから経営者の親族であることに問題はないと考えられます。

2.諸規程の整備

社内規程とは、会社の業務が組織的に運営されるために必要不可欠なルールを明文化したものをいいます。経営活動の意思決定権限を誰がどの範囲で持っているか明確にし、相互に牽制機能を有効に働かせ、効率的な分業体制を構築するためには、諸規程を整備し、かつ有効に運用することが必要です。上場審査に際しては、諸規程の整備状況とともに一定期間における運用実績が確認されます。

一般的に必要とされる諸規程

基本・経営規程

定款

内部監査・コンプライアンス規程

リスク・コンプライアンス規程

取締役会規程

クレーム管理規程

監査役(会)規程

反社会的勢力対応規程

経営会議規程

インサイダー取引防止規程

執行役員規程

個人情報保護規程

規程等管理規程

内部通報規程

知的財産管理規程

組織関連規程

組織規程

人事関連規程 就業規則

職務分掌規程

賃金規程

職務権限規程

退職金規程

稟議規程

旅費規程

関係会社管理規程

慶弔見舞金規程

関連当事者取引管理規程

育児介護休業規程

内部監査規程

ハラスメント防止規程

人事規程

衛生管理規程

業務関連規程

経理規程

総務関連規程

文書管理規程

原価計算規程

情報セキュリティ管理規程

予算管理規程

印章管理規程

販売管理規程

株式取扱規程

購買管理規程

適時開示規程

外注管理規程

固定資産管理規程

棚卸資産管理規程

債権管理規程

11.上場会社における不祥事予防のプリンシプル

日本取引所自主規制法人により、2016年2月に「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」が策定され、不祥事に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に向けた指針が示されました。本プリンシプルは、次の4つの原則で構成されています。

① 不祥事の根本的な原因の解明

② 第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

③ 実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

④ 迅速かつ的確な情報開示

一方で、不祥事の発生が珍しくなった現状においては、上場会社において、不祥事の発生そのものを予防する取り組みが実効性を持って進められる必要性が高まっています。そこで、不祥事発生後の事後対応に重点を置いた上記プリンシプルに加えて、2018年3月に「上場会社における不祥事予防のプリンシプル」が策定されました。本プリンシプルは、次の6つの原則で構成されています。

① 実を伴った実態把握

② 使命感に裏付けられた職責の全う

③ 双方向のコミュニケーション

④ 不正の芽の察知と機敏な対処

⑤ グループ全体を貫く経営管理

⑥ サプライチェーンを展望した責任感

上場会社においては、この2つのプリンシプルを車の両輪として位置付け、実効性の高い取り組みを推進することが期待されています。なお、これらのプリンシプルに定められている各原則は、上場会社が不祥事の発生前および発生後の対応に際して個別の判断の拠り所とできるよう、その根底にあるべき共通の行動原則を示したものです。これらのプリンシプルは上場審査基準を構成するものではありませんが、新規上場の申請会社においてもこれらのプリンシプルを参照することが有益な場面もあると考えられます。

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