13.組織再編行為等およびスピンオフIPO

1.組織再編行為等を実施した場合

上場申請会社において、上場直前に合併、株式交換、株式移転、株式交付、子会社化や非子会社化、会社分割、事業の譲受けや譲渡などのコーポレートアクション(以下、組織再編行為等)が行われることがあります。

基準事業年度の末日から起算して2年前の日以降に組織再編行為等を行った会社が、スタンダード市場、プライム市場に上場申請をする場合、提出書類や形式要件の審査に関して、通常とは異なる取扱いを行う項目を定めています。

1.提出書類

基準事業年度の末日から起算して2年前の日より後において組織再編行為等を行っている場合、上場申請会社の実態により近い財政状態および経営成績に基づいた審査を実施できるようにするために、組織再編対象会社等の規模・属性に応じた財務情報および監査意見等を上場申請時に提出する必要があります。

図表1:提出書類

<組織再編主体会社等となる場合>

組織再編主体会社等とは、申請会社よりも規模の大きいもの(複数ある場合には、そのうち最も規模が大きいもの、ただし、上場申請会社が組織再編行為等に伴い新設される場合においては、組織再編対象会社等のうち、最も規模が大きいもの)をいいます。

<組織再編に重要な影響を与える会社となる場合>

組織再編に重要な影響を与える会社とは、組織再編対象会社等のうち、その規模が申請会社の規模の過半となるもの(申請会社が組織再編行為等に伴い新設される場合においては、組織再編対象会社等のうち、その規模が組織再編主体会社等の規模の過半となるもの)をいいます。

2.規模の大小の判断

組織再編主体会社等または組織再編に重要な影響を与える会社等いずれにおいても、規模の大小は、組織再編行為等が行われた日の属する連結会計年度の直前連結会計年度に係る連結財務諸表の総資産額、純資産の額、売上高および利益の額等を比較して決定します。

なお、組織再編に重要な影響を与える会社等の判断にあたっては、原則として、直前における総資産額、純資産の額、売上高および利益の額等のうち、一項目でも規模の過半となる会社が該当します。

3.形式要件の審査上の取扱い

上場申請会社が直前々期の期首以降に実施した組織再編行為等(非子会社化、会社分割による他の会社への事業の承継又は事業の譲渡を除く)において、組織再編主体会社等が存在する場合には、申請会社の実態により近い財政状態および経営成績に基づいた審査を実施できるようにするため、形式要件の審査の取扱いを定めています。

例えば、事業継続年数は、通常、上場申請会社の株式会社としての事業継続期間を確認していますが、組織再編行為等が行われた場合は、組織再編主体会社等における主要な事業の活動期間を加算して事業継続年数を算出します。

また、売上・利益の額は、組織再編主体会社等の財務項目を審査対象とします。

2.スピンオフIPO

スピンオフとは、企業が、子会社または自社内の特定の事業部門を切り出し、独立した会社の株式を元の企業の株主に交付する手法であり、子会社を切り出す株式分配、自社内の特定の事業部門を切り出す分割型分割の手法により実施されます。

スピンオフの直後に当該スピンオフにより独立した会社が上場すること(以下、スピンオフIPO)も可能であるため、取引所では、スピンオフIPOを行おうとする場合における新規上場申請に係る提出書類、上場審査等に関して、具体的な取扱いを定めています。

なお、スピンオフIPOにあたっては、あらかじめ余裕を持って証券会社、監査法人、取引所等とご相談ください。

  1. 新規上場申請・上場のタイミング
    スピンオフIPOにおいて、スピンオフが未だ実施されていない場合や、スピンオフ実施の株主総会の決議前であっても、スピンオフにより独立する予定の会社の新規上場申請を行い、上場審査を進めることは可能です。

    スピンオフにより独立する予定の会社が株主総会決議前に上場審査を行う場合には、決議前にその時点で確認できる事項についてひととおり審査を行い、決議後から上場承認日までの間で、その後の変化(業績の進捗や体制の変更等)を中心に追加的な審査を行うことが想定されます。

    分割型分割実施前の時点では、スピンオフにより独立する会社(新規上場を行う会社)は未だ設立されていないため、スピンオフ元の企業が上場会社であれば、当該上場会社がスピンオフにより独立する会社に代わって新規上場申請を行うことが可能です。その場合、当該上場会社が上場審査対応を行うこととなります。
    なお、分割型分割の株主総会決議前に新規上場申請を行う場合には、新規上場申請ができないため、予備申請により上場審査を進めることとなります。

    また、取引所の上場承認が行われていれば、スピンオフ実施日に、スピンオフにより独立する会社が新規上場することが可能です。
  2. スピンオフIPO時の提出書類
    株式分配を実施する場合、上場申請時においては、通常の新規上場時と同様に、スピンオフにより独立する会社の直近2事業年度分の財務諸表等および監査報告書を取引所に提出する必要があります。

    分割型分割を実施する場合には、スピンオフの対象となる事業が組織再編主体会社等になるものと考えられ、基準事業年度の末日から起算して2年前の日より後からスピンオフを行うまでの期間における財務計算に関する書類を「部門財務情報の作成基準」に従って作成し、監査意見等を添付する必要があります。加えて、新規上場までに分割型分割が実施される場合においては、実施後の期間における財務諸表等を作成し、監査を受ける必要があります。

    「部門財務情報の作成基準」に従って作成した財務計算に関する書類に対する監査報告書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠した監査に基づくものの他、取引所が適当と認める場合には、日本公認会計士協会が定める「東京証券取引所の有価証券上場規程に定める部門財務情報に対するレビュー業務に関する実務指針」その他の合理的と認められる基準に準拠した手続きに基づくものとなります。
  3. コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性
    分割型分割によるスピンオフの実施前に上場審査を行う場合、上場審査の時点では上場申請会社としての取締役会や監査役会等の開催実績、内部管理部門の運用実績が十分でないことが考えられますが、それだけをもってコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性を否定されることはありません。

    そのような場合には、実質的に新設となる独立する会社を想定した準備の状況が十分か、スピンオフ元の企業等の体制が独立する会社に十分に引き継がれているのかを確認することで、実質的に運用が行われているとみなして有効性を確認することが考えられます。

    なお、スピンオフ元の企業の体制から大きな改変があった場合であっても、その軽重によっては問題ない場合もあると考えられますので、会社法上の機関設計の変更がある場合を含めて、最終的には個別の状況に照らし、判断がなされることが想定されます。

出典

東京証券取引所『新規上場ガイドブック』 Ⅶ 企業組織再編に係る取扱い
https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/guide-new/index.html

経済産業省『「スピンオフ」の活用に関する手引』
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/saihenzeisei.html

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