現在、ローコードおよびノーコードツールを活用することで、従来のシステム開発と比較して高生産性かつ高品質なシステム開発を行うことが可能となってきました。このような利点が広がり、さまざまな業界で積極的に導入されています。この記事ではそのツールの一つであるMicrosoft Power Platform(以下、Power Platform)が持つ承認機能ならびにAI Builderの人工知能機能を活用して業務アプリを開発する方法に焦点を当てます。Power Platformはローコードおよびノーコードのプラットフォームで、業務プロセスの効率化、自動化に最適なツールです。本記事では具体的なステップとベストプラクティスを紹介し、業務向けアプリケーションの開発について詳述します。また、承認プロセスに関わる業務課題を抱えている方々に向けて、AI Builderの活用方法をご紹介します。AI Builderはプログラミングの知識がなくても利用するツールで、承認プロセスの効率化やエラーの削減、作業時間の短縮などのメリットが期待できます。
Power Automateの承認機能は業務プロセスにおいて重要な役割を果たし、多くの利点を提供します。以下に、承認プロセスの重要性と当該承認機能の利点、適用分野について説明します。
Power Automateの承認機能を活用し承認プロセスの自動化することで、時間の節約、リスク軽減、透明性の向上が実現でき、組織の効率性を高めることにつながります。
AI Builderはデータ駆動の意思決定プロセスにおいて重要な役割を果たし、多くの利点を提供します。以下にAI Builderの機能の重要性とその利点、適用分野について説明します。
AI Builderの機能を活用することで、ビジネスの効率性を向上させ、データに基づく洞察力のある意思決定を実現できます。これにより、企業の競争力強化と戦略的な成長が促進されます。
以下では、業務報告をPower Platformを用いてシステム化するという事例に即して、承認機能を実現する方法を解説します。
承認機能を実現するための前提条件として、ビジネスの要件を定義します。今回例示する業務報告をPower Platformを用いてシステム化するケースでは、要件は下記となります。
承認プロセス設計はPower Automateの利用を前提として、以下の内容を考慮した設計を行います。
このようにPower AppsのFormをCanvasに追加した上で、必要な項目を追加します。
プロジェクト登録画面
プロジェクトリスト画面
報告登録画面
報告リスト画面
報告申請画面
AI Builderの強力な機械学習機能を用いて業務報告から得られるデータを整理し、重要なビジネス洞察を抽出するプロセスを詳細に説明します。データの準備からモデルの選択、トレーニング、そして分析に至るまでの各ステップを通じて、ビジネスプロセスの効率化と意思決定の質の向上を目指します。このアプローチにより、企業は業務報告データを最大限に活用し、リアルタイムの洞察を得ることが可能となります
AI Builder機能を実現するため、前提条件としてビジネスの要件を定義します。
今回のビジネス要件を実現するための構成図
各要素と役割について
a. 言語選択
b. モデル確認と調整
c. エンティティの調整
d. モデルのトレーニング
a. 報告状況が追加されたときをトリガーとして設定
b. Dataverseの業務報告テーブルにデータが保存されることをトリガーにして、テキストを抽出
c. 抽出データをDataverseに保存
PwCはMicrosoft Power PlatformとAI Builderを活用した業務アプリの開発を支援し、企業が業務プロセスを効率化し自動化することを可能にしています。これには、Power Automateを使用したワークフローの自動化、AI Builderを活用したAIを用いた業務プロセスの構築、Power Apps、Power Automate、Dataverse、Teamsを組み合わせたソリューションの開発、そしてAI Builderを活用したデータ分析の支援が含まれます。これらの支援により、企業はデータを深く理解し、ビジネスの意思決定を助け、業務プロセスを一元化し、効率化できるようになります。
本稿では、これらのツールの詳細な説明とそれらを使用するためのステップバイステップのガイドを提供し、ビジネスアプリケーション開発におけるこれらのツールの活用の重要性を強調しました。Power PlatformとAI Builderを活用することで、業務効率化はもちろん、未来への確かな一歩を踏み出す準備が整います。これらのツールによってビジネスの可能性を広げ、持続可能な成長を実現しましょう。
※Power Platform の高度な機能やAI Builderを利用するためには一定のライセンスやService Creditsが必要です。
L. Jo
シニアアソシエイト、PwCコンサルティング合同会社
専門分野・担当業界
ローコードPF、クラウドシステム、生成AI、ウェブ基盤システム
SIer、国内大手IT事業会社を経て現職。
PwCコンサルティング入社後、大手製造企業でプロジェクトのスクラムマスター兼アーキテクトとして活躍し、Power Platformを活用した開発環境の確立とサポートを牽引。複数のデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトに深く関与し、システムの設計と開発を通じて業務の効率化に大きく貢献。ローコード開発における豊富な知識と実践経験を活かし、企業のデジタル化を推進する上で中核的な役割を担っている。
(1):テック人材の採用と維持における企業の課題
(2):フィーチャーエンジニアリングとは?
(3):SNSを活用したコロナ禍における人々の心理的変化の洞察
(4):自然言語処理(NLP)の基礎
(5):今、データサイエンティストに求められるスキルは何か?データサイエンティスト求人動向分析
(6):コロナ禍における人流および不動産地価変化による実体経済への影響
(7):「匠」の減少―技能継承におけるAI活用の道しるべ
(8):開示された企業情報におけるESGリスクと財務インパクトの関係性の特定
(9):ビッグデータ分析で特に重要な「非構造化データ」における「コンピュータービジョン(画像解析)」とは
(10):自然言語処理・数理最適化による効率的なリスキリングの支援
(11):スポーツアナリティクスの黎明 サッカーにおけるデータ分析
(12):AIを活用した価格設定支援モデルの検討―外部環境変化に即座に対応可能な次世代型プライシング
(13):MLOps実現に向けて抑えるべきポイントー最前線
(14):合成データにより加速するデータ利活用
(1):ブロックチェーン技術の成熟度モデルとステーブルコインの最新動向について
(2):3次元空間情報の研究施設「Technology Laboratory」のデジタルツイン構築とデータの管理方法
(3):3次元空間情報の研究施設「Technology Laboratory」における共通ID「空間ID」と自律移動体の測位技術
(4):G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合における空間IDによるドローン運航管理
(1):COVID‐19パンデミック下のオンプレミス環境におけるMLOpsプラクティス
(2):機械学習を用いたデータ分析
(3):AWSで構築したIoTプラットフォームのPoC環境をGCPに移行する方法
(4):テクノロジーの社会実装を高速に検証するPwCの独自手法「Social Implementation Sprint Service」-テクノロジー最前線
(5):自動車業界におけるデジタルコックピットの擬人化とインパクト
(6):成熟度の高いバーチャルリアリティ(VR)システム構築理論の紹介
(7):イノベーションの実現を加速する「BXT Works」とは
(8):Power Platformの承認機能、AI Builderを活用して業務アプリを開発する方
(9):社会課題の解決をもたらす先端テクノロジーとディサビリティ インクルージョンの可能性