価値創造経営イニシアチブ

価値創造経営が求められる背景

日本企業では、CEOの72%が自社の持続性を「10年以下」と回答し、TOPIX500企業の40%以上のPBRが1.0を下回る中、経営の「成績表」に相当する開示制度が変わり始め、企業内外から「経済的価値と社会的価値の両面での経営」が求められています。

特に日本企業の企業価値が低迷・毀損してしまっている要因の一つに「経営管理の対象の狭さ」があります。ほとんどの企業では、短期的な業績管理にほとんどの時間を費やし、価値創造のための長期的なシナリオやその「足腰」に当たる無形資産に十分な関心が払われていない状態にあります。

経営の本質は、「現在の業績を管理すること」でもなければ、「経済価値だけを高めること」でもありません。経営の本質が、「企業価値を高め、企業の未来を創ること」であるならば、不確実性が高まる中で、経営は、果たして「過去の延長に未来がある」という前提に立ち続けて良いのでしょうか。

経営者自身が持続性に危機感

PwC 第26回 世界CEO意識調査では「貴社は現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、経済的にどの程度の期間存続できるとお考えですか」の問いに「10年以下」と回答した割合は、

日本企業:72%
日本企業を含む世界全体:39%

➡経営者自身が自社の持続性に危機感


日本企業の企業価値は低評価

PBR(株価純資産倍率)は、

1999年12月末 東証上場企業平均  :1.5倍
2023年4月末 プライム市場平均  :1.2倍
同スタンダード市場平均  :0.8倍

➡TOPIX500の40%以上が1.0倍未満
➡東京証券取引所は、2023年3月31日に資本コストや株価を意識した経営の実現に関して、全上場企業に要請


開示制度が変わればマネジメントは変わる

日本企業を取り巻く開示制度の変化は、

  • 自主開示である統合報告書が普及
  • 2022年にTCFD提言に基づくリスク開示要請
  • 2023年3月31日以後に終了する事業年度からは人的資本開示が義務化
  • 2023年6月にISSB S1/S2基準が公表
  • 2028年からCSRDが欧州域外企業にも適用

➡会計ビッグバンと同様に経営も変革の時

PwCが考える価値創造経営の概要

企業が真に価値を創造・継続・発展させていくためには、現在多くの企業が行っている財務的・短期的業績管理から脱却し、

①時間軸の拡張:中長期的な将来に照準を定め、そこからのバックキャストで今を考える

②価値構造の拡張:財務だけではなく人的資本、知的資本などの無形資産、さらには社内だけでなく価値提供先である顧客、社会、環境などに価値構造を捉える範囲を拡げ、マネジメントの範囲を拡張する

という、将来を見据えた時間軸と価値構造の見直による統合思考で経営を実践してくことが重要です。

多様な価値観の広がりが拡大し、将来が見通せない非連続な事業環境下では、「過去から現在(実績)」だけでなく「将来・未来」からバックキャストして価値創造ストーリーを立案・可視化する「志向の変革」とともに、財務資本に関わるPLやBS、CFなどの財務指標だけでなく非財務資本として分類される要素についても価値として捉え、それを経営資源とする「思考の変革」が必要になります(図表1)。

①時間軸の拡張とは?(志向の変革)

経営の本質は、「企業価値を高め、企業の将来を作ること」です。

ゆえに、「過去・現在」だけでなく「将来・未来」を加えて中長期的な「将来」に照準を定め、単価や数量、顧客属性といったビジネスドライバーの標準化と蓄積から、将来からのバックキャストを加えて経営することが“時間軸の拡張”という考え方です。

②価値構造の拡張とは?(思考の変革)

「業績管理」は、「結果管理・経済価値管理」であり、結果を管理しても「成果」は生まれません。

ゆえに、財務諸表に表れない資産・価値・活動を加えて「財務」だけでなく「人的資本」「知的資本」など無形資産、社内だけでなく価値提供先である「顧客」「社会」「環境」を「価値構造」として捉えて経営することが“価値構造の拡張”という考え方です。

価値創造経営を支えるPwCのサービスストラクチャ―

価値創造経営を実現するためには、2つの「シコウ(志向・思考)の変革」が必要になります。

「思考の変革」では、財務指標だけでなく、人的資本、知的資本などの無形資産、さらには社内だけでなく価値提供先である顧客、社会、環境などまで「価値構造として捉える範囲」を拡張します。

一方で、「志向の変革」で時間軸を拡張し、AIなどの最新ツールを活用して「将来・未来」を見通し、企業価値を高めるための戦略目標への到達度合いを測定、評価、予測してOODA(Observe、Orient、Decide、Act)ループによるアクションを継続していく必要があります。

企業の価値を構成する要素は多岐にわたるため、価値創造経営を実現するには、複数領域の専門知識を統合し、企業活動全体を価値の創造に向けてリードする経営管理が不可欠になります。

さまざまな領域の専門家を擁するPwCコンサルティングでは、複数領域にわたる知見をワンストップで提供し、価値創造経営の実現をサポートします(図表2)。

価値創造経営を支えるPwCの サービスストラクチャ―

非財務資本の活用に焦点を当てたサービス一覧

PwCコンサルティングでは、非財務資本の活用に焦点を当てた、価値創造経営を支える多様なサービスを提供しています。

価値創造ビジョニング

本質的な価値創造を実現するために、従来の財務情報・短期視点に偏重した「業績管理」から脱却し、「価値構造」と「時間軸」の範囲を拡張することで、将来を見据えたビジョンを描き、非財務資本も含めた統合的な思考で経営を実践する支援をします。

価値創造経営管理制度構築

持続的成長に資する事業活動を通じて重要な無形資産を形成し、戦略目標の達成を通じて企業価値を向上するという価値創造ストーリーを可視化します。また、短期、長期の企業価値向上に資する無形資産の蓄積・向上を連鎖的な因果関係として関係づけることにより、無形資産への投資が価値向上をもたらす構造を明らかにします。

戦略的リスクマネジメント(ERM)

中長期的・経営視点の戦略リスク管理の枠組みの構築とそのためのインテリジェンス活用によって、持続的な価値創造に貢献するERMの実現を目指します。企業の価値創造に欠かせない競争優位の源泉である経営資源や外部ステークホルダーとの関係性に着目し、経営陣が自ら経営環境動向の認識に基づいてリスク(脅威と機会)を洗い出し、トップリスクを抽出することから支援します。

先読み型プランニング

過去と現在に固執せず、将来を見通して判断する意思決定構造へのシフトを実現するため、根拠とビジネスロジックを標準化し、AIを活用したシミュレーション基盤による予測を行います。

企業価値の戦略的開示

企業が業績や将来の見通し、財務状況、リスク、成長戦略、社会的責任、環境への取り組みなどについての情報提供を通じて信頼性や透明性を高め、投資家や消費者などのステークホルダーに対して企業価値を明示し、その向上へとつなげる戦略の立案を支援します。

オンラインセミナー:レジリエントなサプライチェーンで実現する価値創造経営―中長期的な事業競争力を高める次世代サプライチェーンの要諦―

企業が中長期的な競争力を身に付けるためには、製造資本であるサプライチェーンをいかに構築するかが重要となります。そのためには、現在多くの企業が行っている財務的・短期的業績管理から脱却し、将来を見据えた時間軸と価値構造の見直しによる統合思考で経営を実践していくことが必要です。
本セミナーでは、企業成長・企業価値の源泉となる、レジリエントなサプライチェーンの構築について解説します。

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オンラインセミナー:「価値創造経営」の実践ー顧客基盤、人的資本を活用した企業価値の高め方ー

5年、10年先にわたって企業価値を高めていくためには、無形資産をいかに成長の原動力にしていくのかが問われています。そのためには、将来志向(将来・未来からのバックキャスト)と統合思考(非財務資本の活用)という2 つの「シコウ」での価値創造経営の実現が鍵となります。本セミナーでは、企業成長・企業価値の源泉となる無形資産のうち、顧客基盤・人的資本において2つの「シコウ」を用いた企業価値の高め方について、その勘所をご紹介します。

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小林 たくみ

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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森本 朋敦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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葛西 徹弥

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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山崎 幸一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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土橋 隼人

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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友谷 康一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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